カテゴリー「書評」の記事

書評 好井裕明著『原爆映画の社会学』  「週刊読書人」2024年9月13日付に掲載

好井裕明著『原爆映画の社会学』 の書評が「週刊読書人」2024年9月13日付に掲載されました。評者は福間良明先生。ご書評いただきましたこと、こころよりお礼申し上げます。

……それにしても、なぜ映画なのか。映画は本質的に「娯楽」である。「原爆」を扱った映画に限っても、『二十四時間の情事』のような恋愛映画、『はだしのゲン』のような少年もの、『ゴジラ』シリーズをはじめとする特撮怪獣映画など、「愉しめる」作品はじつに多い。『ひろしま』『黒い雨』といった当事者の苦悶に焦点を当てた作品もあるが、それらとて、ある種の「感動」と無縁ではない。愉しみのある日常に、「反戦」「反核」「継承」をめぐる思考をいかに織り込み、深めていくのか。言い換えれば、「啓発の回路」をそれのみで閉ざすのではなく、日常の世界にいかに接続するのか。こうした問題意識から、「原爆映画」を読み解いたのが、本書である。……



9784788518513
 原爆映画の社会学

 被爆表象の批判的エスノメソドロジー

 著者 好井 裕明 著
 ジャンル 社会学
 出版年月日 2024/08/08
 ISBN 9784788518513
 4-6判・416ページ
 定価 3,960円(本体3,600円+税)
 在庫 在庫あり

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この本に関するお問い合わせ・感想

紹介 柳原敏夫・小川晃弘 編『わたしたちは見ている』@東京新聞2024年7月27日付

東京新聞2024年7月27日付、書評欄「特選」にて、

 

市民が育てる「チェルノブイリ法日本版」の会
柳原敏夫・小川晃弘 編
『わたしたちは見ている 原発事故の落とし前のつけ方を』
をご紹介いただきました。


原発の推進・反対にかかわらず、日本が原発を続けるなら現実的な救済法が必要だ―として2018年に結成された市民団体がまとめたブックレット。

団体名にあるチェルノブイリ法は旧ソ連で1986年に起きた原発事故後に成立。国際人権法の観点で、放射能災害から命や健康を守ろうと「避難の権利」「移住の権利」を保証しており、今も関係国が受け継ぐ。

日本の被害者救済に人権の視点が欠けているとしてチェルノブイリ法の日本版が必要だと訴える。表紙は趣旨に賛同する漫画家ちばてつや。小出裕章も寄稿。



9784788518506

 『わたしたちは見ている 原発事故の落とし前のつけ方を』

 市民が育てる「チェルノブイリ法日本版」の会 .
 柳原敏夫・小川晃弘 編
 環境・震災・都市・地域社会
 出版年月日 2024/05/25
 ISBN 9784788518506
 A5判88頁・定価 700円(本体636円+税)
  在庫あり

書評 関 礼子 編『語り継ぐ経験の居場所』@図書新聞 2024年7月20日付

 

関 礼子 編 『語り継ぐ経験の居場所』 の書評が、「図書新聞」2024年7月20日付に掲載されました。
評者は平井勇介氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

……人はさまざまな経験をする。その経験には、否応なく加害/被害の側面もある。自分(たち)のために直接的/間接的に他者に理不尽な経験を強いたこと、他者や社会から理不尽な経験を強いられたこと、誰もが身に覚えがあるものだろう。そうした数々の経験を自分なりに生かして、人とのかかわり方や失敗を回避する方法、理不尽な状況への対処の仕方などを生み出し、よりよい生き方を目指そうとする。このような人びとの創意工夫の根底にある「経験」を人類が共有できれば、社会はきっと良い方向に進んでいくのかもしれない。しかし、さまざまな理由で「経験」は語られない/伝わらないことが多い。とくに本書がとりあげているような凄惨な「経験」や理不尽な「経験」を語ることは、それだけで辛いことであろうし、語ったとしてちゃんと理解されることなどないし、異なった解釈(ときに暴力的な解釈)をされることも往々にしてある。聞く側の態勢が整っていないようにみえることがほとんどであろうし、聞く側にとって凄惨な「経験」を聞くことはしばしば「生理的な嫌悪」(7章)を抱くことでもあろう。語る側/聞く側のさまざまな思いが交錯するなかで、「経験」を語る/聴くということは想像以上に難しい。

 それでも本書は、そうした「経験」が語り継がれることの可能性を模索する。……

 

 

9784788518308 語り継ぐ経験の居場所
排除と構築のオラリティ

関 礼子 編
松村 正治・青木 聡子・高﨑 優子・
丹野 清人・廣本 由香・飯嶋 秀治 著

2023/11/05
ISBN 9784788518308
四六判280頁・定価 3190円(本体2,900円+税)
在庫 在庫あり

書評 金菱 清 著『生ける死者の震災霊性論』@「図書新聞」2024年7月20日号

「図書新聞」2024年7月20日号に、金菱清著『生ける死者の震災霊性論』の書評が掲載されました。評者は麦倉 哲氏。ご書評くださいました先生、掲載誌ご担当者さま、ありがとうございました。こころよりお礼申し上げます。


著者は、震災で大切な人を亡くした人との交流を続けている。アライ(Ally、支援者)でもなく、寄り添うでもなく、対象となる人びと(遺族ら)とやり取りを重ね、遺族らが向き合ってきた精神世界を知ろうとし、加えて遺族らと故人の対話に臨場しようとしている。また、そうした日常世界を世に知らしめようとしている。宗教学的、哲学的、民俗学的にも考察しようとしている。調査方法としては、社会学・社会調査の方法を駆使し、新境地を切り拓こうとしている。

……

著者はこの13年間、学生たちとともに、被災地での数々のフィールドワークを積み重ねて、おそらく死者からのエールも受けて、多くの著書・報告書を刊行してきた。本書は、その積年の軌跡を知る体系的な書である。著者が、生者と死者との関係を観るまなざしや、生者の精神世界を理解するためのアプローチの巧みさと、たぐいまれなこだわりは、著者の丹精込めた取り組みから伝わってくる。それが遂行できたのも一様ではなかっただろう。そのことは、著者を鼓舞した「ピンと張りつめた想い」と、著者が「あとがき」でもらした「たたかってきた」という本音からうかがえる。主題は死者との対話か、それらを日常とみる社会文化環境の実相を描くことか。

 

 

9784788518421  生ける死者の震災霊性論

 災害の不条理のただなかで

 出版年月日 2024/03/11
 ISBN 9784788518421
 4-6判208頁・定価2530円(本体2,300円+税)

書評 角田 燎著『陸軍将校たちの戦後史』@「世界」 2024年8月号



角田 燎著『陸軍将校たちの戦後史』が「世界」 2024年8月号 p248-253にて書評されました。評者は内田雅敏氏。内田先生、ご書評いただきましたことこころよりお礼申し上げます。


……

(自衛隊幹部が)東京裁判否定を堂々と述べ、靖国神社と一体化したその歴史観に言葉を失う。同時に、靖国神社の聖戦史観=大東亜戦争史観・アジア解放史観と、この国の戦後の通奏低音となっている対米従属性とを見事なまでに両立させている「柔軟性」に驚く。
 戦争を放棄し、戦力の不保持、交戦権の否認をうたった日本国憲法下に置かれた自衛隊の幹部らが、なぜいま、靖国神社とこのように近しい関係にあるのか。

 この疑問を氷解させてくれたのが、立命館大学立命館アジア・日本研究所専門研究員の角田燎氏による『陸軍将校たちの戦後史』である。

・・・・・・・

 

9784788518391 『陸軍将校たちの戦後史』
「陸軍の反省」から「歴史修正主義」への変容
角田 燎 著
2024/03/19
9784788518391
4-6判・264頁 定価 3190円

 

論考 金菱清「震災霊性論」@「世界」2024年8月号



「世界」2024年8月号に、金菱清先生による「震災霊性論」の論考が掲載されました。

 この十数年続けてきた東日本大震災の調査研究の成果を『生ける死者の震災霊性論――災害の不条理のただなかで』(新曜社)として刊行しました。そこで提案した「震災霊性論」という概念は、私が震災における死者の問題に取り組む中で見出したものです。以前、お墓研究会に入っていたことなどもありましたが、死や死者について、愛する家族を亡くして懊悩する人々から考えなければいけない切実な問いがでてきたのは、東日本大震災の発生を受けてのことでした。私の身近な人が亡くなったというわけでもありません。それまで関心の薄かった私が目を向けなければならなくなった、生者と死者との深い関係性について本稿では考えてみたいと思います。

…………
…………

 震災霊性論は、私たちの死生観や近代社会のあり方を捉えなおすことにも通じます。コロナ禍においては、感染拡大対策のもとに、死者との対面がかなわず、火葬にも立ち会えない場面がありました。そのため、死者との結びつきが絶たれ、死者数という単なる数字に換算され忘却されてきたのは記憶に新しいことです。こうしたコロナ禍における死者の扱いは、死者が生者のなかに生きている、「生ける死者」という死生観からかけ離れたものであり、近代社会のあり方を極限までむき出しに示したといえます。

 

 

9784788518421  生ける死者の震災霊性論

 災害の不条理のただなかで

 出版年月日 2024/03/11
 ISBN 9784788518421
 4-6判208頁・定価2530円(本体2,300円+税)

申 惠媛著『エスニック空間の社会学』 2024年6月29日付「図書新聞」

申 惠媛著
『エスニック空間の社会学 新大久保の成立・展開に見る地域社会の再編

の書評が2024年6月29日付「図書新聞」にて掲載されました。評者は三浦綾希子先生。ご書評くださいました先生、書評紙ご担当者様、ありがとうございます。こころよりお礼申し上げます。  

……

本書で検討されるのは、エスニックな観光地「新大久保」の出現によって「地域社会」が変容・再編される過程である。この分析をつうじて、移動性や開放性を前提とする「地域社会」の捉え方を模索することが本書の目的である。本書の特徴は、これまで「地域社会」の構成員とみなされてこなかった人々、例えば複数の国を行き来しながら観光資源を提供するビジネス経営者や観光客のような一時滞在者をも対象者に含め、かれらを特定の空間的範域に「共在」する者として捉えている点である。……
……

本書はこれまでの移民・エスニシティ研究と都市社会学の知見を丁寧に整理し、精緻でオリジナルな分析枠組みを構築した上で、インタビュー、メディア分析、参与観察など複数の手法を組み合わせながら、多様なアクターが織りなす社会関係のダイナミクスを描いた良著である。本書の最も大きな功績は、「社会関係レイヤー」という視点を導入することによって、これまで統一的に捉えられてきた地域社会を重層的なものとして描き、そこに「共在」する人々が織り込まれている超越的な文脈を組み込んだ上で、レイヤー間の相互作用の在り方を示した点である。……


 

9784788518322 『エスニック空間の社会学』
新大久保の成立・展開に見る地域社会の再編

 

申 惠媛 著
出版年月日 2024/01/31
ISBN 9784788518322
判型・ページ数 A5・352ページ
定価 4,840円(本体4,400円+税)

書評 楊 駿驍・鄧 剣・松本健太郎 編『日中韓のゲーム文化論』 2024年6月29日付「図書新聞」

楊 駿驍・鄧 剣・松本健太郎 編
『日中韓のゲーム文化論  なぜ、いま〈東アジア・ゲーム批評〉なのか』

の書評が2024年6月29日付「図書新聞」にて掲載されました。評者は川﨑寧生先生。ご書評くださいました先生、書評紙ご担当者様、ありがとうございます。こころよりお礼申し上げます。  

 

日中韓三国のゲーム文化の社会文化的差異の共同理解を進める

……三国のゲーム文化は、各々の国の社会文化に影響を受ける形で、受容に大きく差異が現われている。その結果、研究においても独自のアプローチがなされてきた。しかし、前書きによると、特に人文学の分野では、各国の研究が繋がらないまま進み、研究の独自性についても顧みられてこなかった。今後、「東アジア」地域全体を考え、共同して研究を進めるためには、ゲーム研究においても、様々な社会・文化的差異が生まれる要因について、考え理解する必要がある。

 本書は、上記のような研究史上の課題を解決することに挑戦するため、刊行された。本書では各国の第一人者による、ゲーム作品と周辺の社会文化を対象とした論考が18本収録されている。各国の割合は日本が10本、中国が5本、韓国が3本とばらつきがある。あとがきによると元々中国向けに刊行された日本ゲーム研究アンソロジーを、本書の目的に合わせる形で直近の中韓の代表的な論考を翻訳、追加し、編集したためであろう。いずれにせよ、普段我々が手に取れない中韓の研究を日本語で読むことが可能なのはありがたいことであり、収録された論考も重要なものばかりである。


……本書を契機として、今後は中韓との共同のゲーム研究が様々な形で進むとともに、東アジア各国のゲーム文化と社会との関わりについての研究も進み、東アジア全体の研究を共同して進められる環境が更に整っていくことを期待したい。

 

 

9784788518360   日中韓のゲーム文化論

  なぜ、いま〈東アジア・ゲーム批評〉なのか
  楊 駿驍・鄧 剣・松本健太郎 編
  出版年月日 2024/03/05
  ISBN 9784788518360
  A5判・400頁
  定価4,950円(本体4,500円+税)

記事 古田徹也著『それは私がしたことなのか』2024年6月16日読売新聞「始まりの1冊」

2024年6月16日付 読売新聞書評欄「始まりの1冊」にて、
古田徹也先生の『それは私がしたことなのか』を、おとりあげいただきました。


……自分がすでに書いたものから引っ張ってくるのではなく、全体としてひとつの流れのある思考を一から紡ぎたいと思った。しかも、一般書なのだから、研究書や論文よりも幅広い層の人が興味をもって読んでくれるような本をつくりたかった。自分なりにベストを尽くして、髙橋さんから最初のメールが届いてからちょうど2年後の2013年8月に、私の始まりの1冊、『それは私がしたことなのか』が刊行された。

……最初の2か月間はろくに反応がなかったが、そこから大きな変化があった。英米哲学とは異なる領域の哲学者や、社会学者、言語学者、さらに、看護師や作業療法士といった多様な職業の方からも、本を読んだ感想が届くようになった。特に、ある医師の方からいただいた手紙には、刊行当初に英米哲学の専門家から向けられた批判よりも、遥かに鋭く重要な批判が書かれていて、目を開かされた。
 本を世に出し、書店に置かれるとはこういうことなのだと知った。思いもかけない人々に届き、思いもかけない角度から、自分に見えている物事の意味や可能性や限界を教えてくれる。自分はいまも、このときの感動と、2011年夏に神田神保町の喫茶店で自分の論文の束を見たときの感動のなかにいる。だから、本と論文を書く意欲はまったく落ちていない。......





9784788513440古田徹也 著
それは私がしたことなのか

四六判280頁・定価2640円
発売日 13.8.2
ISBN 978-4-7885-1344-0




 

紹介 角田 燎 著『陸軍将校たちの戦後史』毎日新聞 2024年4月6日付け

 

角田 燎 著『陸軍将校たちの戦後史』
の紹介が、毎日新聞 2024年4月6日付けに掲載されました。掲載紙ご担当者さま、ありがとうございます。

元陸軍将校たちが戦後に作った親睦団体「偕行社(かいこうしゃ)」の会誌を分析し、彼らの戦後史を浮き彫りにした。
この偕行社は、1952年、元軍上層部から敗戦時の陸軍士官学校生徒まで、親子以上の年齢差がある集団として始まる。……
 
 同じ元将校で、世代やキャリアの差、時々の風潮との関係で、何をどう考え、発言してきたかは大きく違う。その変遷は、戦後という時代を映し出す鏡だったとわかる。(生)

9784788518391 『陸軍将校たちの戦後史』
「陸軍の反省」から「歴史修正主義」への変容
角田 燎 著
2024/03/19
9784788518391
4-6判・264頁 定価 3190円

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