カテゴリー「書評」の記事

書評『東京ヴァナキュラー』@歴史学研究2022年11月号

ジョルダン・サンド(著), 池田 真歩(訳)

『東京ヴァナキュラー』 の書評が「歴史学研究」2022年11月号に掲載されました。評者は五十嵐太郎氏。ご書評くださいました先生、掲載ご担当者馬に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 


・・・・・・なるほど、日本は、こうした記憶を残すことが苦手なのかもしれない。さらに言うと、西洋の都市空間と違い、特にモニュメントをうまく使いこなせないようだ。本書のサブタイトルは、「モニュメントなき都市の歴史と記憶」である。それゆえ、戦後の東京における「ありふれた物」や日常の生活に対するまなざしの系譜を掘り起こす。著者のジョルダン・サンドは、東京大学に留学した建築史の研究者であり、『帝国日本の生活空間』(岩波書店、2015年)でも、大きな歴史としての政治ではなく、椅子、衣服、草履、味の素など、日常のささやかなモノに注目しながら、近代日本において複雑に展開された国際的な文化の伝搬、すなわち海外のネットワークを描いている。本書も、モニュメントではなく、日常に密着したモノから東京の文化遺産や地域性の発見を考察したものだ。そうした意味において切り口は似ていよう。ただし、本書は20世紀後半の東京を対象としていることから、アヴァンギャルドなデザインが次々に登場した輝かしい日本の現代建築史に対し、別の視点を与えるものとして読むこともできる。・・・・・・

 

9784788517387
東京ヴァナキュラー
モニュメントなき都市の歴史と記憶
J.サンド 著 池田 真歩 訳
2021/09/24
ISBN 9784788517387
四六判304頁・定価3,960円
在庫あり

書評 私市保彦著『賢治童話の魔術的地図』@週刊読書人 2022年11月18日付

 

私市保彦著『賢治童話の魔術的地図』の書評が、週刊読書人 2022年11月18日付に掲載されました。評者は千葉一幹氏。ご書評くださいました先生、ご掲載紙ご担当者さまに深くお礼申し上げます。ありがとうございました。


優れた研究書は、推理小説に似ている。名探偵が迂闊な刑事が見落とす些細な異常に目をつけそこから事件の真相に迫り真犯人を導出するように、研究者は、通常なら読み飛ばされてしまうような、テキストにある微細な特徴に気づき、作品に秘められた特質を剔抉し、ついにはその作品の新たな姿を提示するに至る。賢治作品に関する九つの研究を集めた『賢治童話の魔術的地図』において、私市保彦は、名探偵さながらに、賢治作品の新たな相貌を読者に開示している。


・・・・・・かつて菅谷規矩男は、社会思想的にも文学的にも「孤立」した存在であった宮沢賢治を論じるにあたり、その総体を視野に入れる必要性を説き、そうした視点を欠いた研究は、「雑多なディレタンティズムの集積にとどまる」と指摘した(『宮沢賢治序説』)。この言明は四〇年以上前に出されたものであるが、賢治が生きた時代の出版物や歴史的事実を渉猟し、それらと賢治作品との関連性を指摘するのみの研究が溢れる昨今の状況下において、菅谷の指摘の重要性は失われていない。こうした賢治研究の状況を考慮すると、賢治文学を普遍的視点から論じようとする私市の試みの意味は、とりわえ大きいと言えよう。

 

9784788517622 賢治童話の魔術的地図
土俗と想像力

私市 保彦 著
2022/07/15
ISBN 9784788517622
4-6判256頁・定価3190円

在庫 在庫あり

書評 ロイック・ヴァカン 著 田中研之輔・倉島哲・石岡丈昇 訳『ボディ&ソウル』日本経済新聞・2022年10月15日付

ロイック・ヴァカン 著 田中研之輔・倉島哲・石岡丈昇 訳『ボディ&ソウル』(品切れ・絶版)の書評が2022年10月15日付日本経済新聞「半歩遅れの読書術」にて掲載されました。評者は小熊英二氏。

ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまに深くお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

社会学者は「社会」を研究する。そして最小の社会は、個人の身体である。

個人とは、実は社会関係の総体である。例えば鉛筆や箸の持ち方には「育ち」、つまり幼少時からの社会関係の総体が現れる。「プロは話し方が違う」という形容が示すのは、個人の身体は長い訓練と社会関係が「身体化」した結果だということだ。

こういう「身体化」はどうしたら研究できるか。プロに「どんな修行をしましたか」と聞いても、あまり精緻な回答は得られないことが多い。それなら学者が自分で修行を経験し、分析した方がよい研究ができるかもしれない。ロイック・ヴァカン『ボディ&ソウル』(田中研之輔ほか訳、新曜社)は、そうした試みの一つだ。・・・・・・

>>>>>>日本経済新聞サイト 全文を読む(会員のみ)

 

 

9784788513198 ボディ&ソウル

四六判上製416頁・定価4730円
発売日 13.2.1
ISBN 978-4-7885-1319-8

品切・重版予定なし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

書評 大野光明・小杉亮子・松井隆志 編『越境と連帯』@「図書新聞」2022年10月22日付

大野光明・小杉亮子・松井隆志 編『越境と連帯』(社会運動史研究 4)の書評が、「図書新聞」2022年10月22日付に掲載されました。評者は久保 隆氏。ご書評くださいました先生、書評紙ご担当者様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。



三年前の一九年二月に創刊以来、毎年刊行され、四号に達した。社会運動を研究対象として継続していくことは、現在の様々な様態を考えてみれば、順調に進行していくことは至難なことだといっていい。だが、編者三人は、変わらず、意識的な考究の持続を示している。
・・・・・・
「支配のシステムは境界線をつくり出しながら、暴力と抑圧を維持している。これらと闘い、システム自体を変えていくために、人びとは境界線を揺さぶり、越えていくことが必要になる」として「境界と連帯」に込めた強い思いを伝えていく。・・・・・・


9784788517776 大野光明・小杉亮子・松井隆志 編
『越境と連帯』(社会運動史研究 4)

出版年月日 2022/07/10
ISBN 9784788517776
A5判・200頁 
定価 2,530円(本体2,300円+税)








 

書評 山本めゆ著『「名誉白人」の百年』@図書新聞 2022年10月22日付

書評 山本めゆ著『「名誉白人」の百年』の書評が、「図書新聞」 2022年10月22日付に掲載されました。評者は佐藤千鶴子氏。ご書評くださいました先生、掲載誌ご担当者様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。



・・・・・・日本人は、インド系や中華系のように労働者として導入されることはなく、南アフリカに定住者のコミュニティを形成することはなかった。一定規模の日本人コミュニティが南アフリカに出現するのは一九六〇年代に入ってからであり、その主たる構成員は日系企業の駐在員とその家族であった。しかも彼らは数年しか滞在しない一時滞在者であり、アジア系移民といっても、南アフリカ政府や社会との関わりにおいて、インド系や中華系とは異なる存在であった。

 そんな日本人の企業駐在員や帯同家族が、アパルトヘイト期の南アフリカでの生活をどのように感じていたのかについて、当事者へのインタビューや日本人会のニューズレターなどをもとに再構成した第四章は本書のなかでもっとも読み応えのある内容となっている。
 
  一九八〇年代に「名誉白人」の当事者として批判を受けた人びとへのインタビューには困難や制約が伴ったようであるが、著者はエクスパトリエイト・コミュニティ研究で使われる「泡(バブル)」の比喩を用いて、日本人コミュニティの現地社会との関わりの薄さや現地社会への関心のなさを冷静に分析している・・・・・・





9784788517653
「名誉白人」の百年
南アフリカのアジア系住民をめぐるエスノ-人種ポリティクス

山本 めゆ 著
2022/03/30
ISBN 9784788517653
4-6判・256頁
定価2,970円 在庫あり

書評 I.ジャニス 著 細江達郎 訳『集団浅慮』@公明新聞 2022年10月10日




I.ジャニス 著 細江達郎 訳『集団浅慮』の書評が、「公明新聞」2022年10月10日付に掲載されました。
評者は池田謙一先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

ロシアがウクライナに侵攻してから7カ月。わずか数日で目的を達する意図であったとされるが、それは幻に過ぎず、世界的に多大な負の衝撃は続いたままである。

こうしたプーチンの意思決定の「失敗」はしかし、強権国家ならではの特質ではない。民主国家でも重大な誤りは起こりうる。原著出版40年後の『集団浅慮』邦訳の意義の一つはここにある。

どんな「ベスト・エンド・ブライテスト」と呼ばれる知的で思慮に富んだエリート集団を擁した民主的政府でも、ときに決断の大失敗を免れないのはなぜか。集団の心理学の広範な知見を踏まえ、膨大な歴史資料を一次資料にまで遡って精査して解き明かしたのが本書である。

・・・・・・

著書のジャニスは危機下の意思決定を熟知した著作(邦訳『リーダーが決断する時』首藤信彦訳、日本実業出版社)でも知られており、本書も長きにわたって政治学、社会心理学、経営学、組織論などの研究分野で重く受け止められてきた。スペースシャトル・チャレンジャー号打ち上げ失敗やトヨタ車暴走のリコール問題の解明にまで応用され、今後も広い範囲で有益である。多大な歴史的事件を扱う翻訳の苦労はいかばかりかと想像されるが、この良訳を歓迎したい。・・・・・・



9784788517707 『集団浅慮』


アーヴィング・L・ジャニス 著
細江 達郎 訳
2022/05/20
ISBN 9784788517707
四六判600頁・定価 4,730円
在庫 在庫あり

 

 

 

 

 

書評 デヴィッド・パレ 著『協働するカウンセリングと心理療法』@心と社会 No.189 2022

デヴィッド・パレ 著『協働するカウンセリングと心理療法』の書評が「心と社会」 No.189 2022に掲載されました。評者は関 百合先生。ご書評くださいました先生、掲載誌ご担当者様に深くお礼申し上げます。ありがとうございました。

・・・・・・
デヴィッド・パレによるこの600頁にわたる大作は、カウンセラー/セラピストがいかにしてクライエントと協働関係を築くかという臨床の知にあふれたテキストである。そこに難しい理論も用語もなく、アインシュタインやギアツなど心理学以外にも幅広い引用を用いて解説し、実践例も豊富に挙げている。この著書は、特にカウンセリングを始めたばかりの初学者にとっては大きな助けになるだろう。初めてのカウンセリングで何をどう聞いたらよいかわけもわからない時、膠着状態に陥った時、クライエントをアセスメントしては見たが役立つようには思えない時、この本は初学者の立場に立って、そして多くの例を引きながら寄り添ってくれる。本来はトレーニング中の大学院生に向けて作成されたのであろう工夫が随所に見られるが、経験を積んだカウンセラー/セラピストも日頃の自らの臨床を顧みる機会として一読をお勧めする。

この著書が画期的であると感じるのは、カウンセリングが実は「文化間の交流」の場であることを明言し、人類学者のフィールドワークを思わせる細心さと共感に満ちた好奇心によってクライエントと協働関係を築くことが重要であることを強調する点である。・・・・・・

 


協働するカウンセリングと心理療法

文化とナラティヴをめぐる臨床実践テキスト

書評 I.ジャニス 著 細江達郎 訳『集団浅慮』@読売新聞 2022年8月21日付

I.ジャニス 著 細江達郎 訳『集団浅慮』の書評が、「読売新聞」2022年8月21日付に掲載されました。
評者は牧野邦昭先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 団結するほど反論困難に

・・・・・・
 本書では、政策を決定する集団のメンバー間で愛想のよさや団結心が増せば増すほど、独立した批判的思考は困難になり、非合理的な意思決定が行われるようになり集団浅慮が発生すると指摘する。それを防ぐため、集団では反論や疑問を述べることを奨励すること、リーダーは自分の好みや期待を述べることなく公平な立場に立ちオープンな雰囲気を作ること、そして一つの集団だけでなく他の集団も政策の立案と評価に関わることが対処法として示されているが、それを実践することの難しさも本書は指摘している。
・・・・・・

書評全文を読む>>>>>>読売新聞 本よみうり堂




9784788517707 『集団浅慮』


アーヴィング・L・ジャニス 著
細江 達郎 訳
2022/05/20
ISBN 9784788517707
四六判600頁・定価 4,730円
在庫 在庫あり

佐藤典司、八重樫文 監修・著 後藤 智・安藤拓生 著『デザインマネジメント論のビジョン』@図書新聞2022年9月17日付

商品に新たな付加価値を与え、企業組織に新たな方向性を示すデザインマネジメントを理路整然とナビゲートする労作


佐藤典司、八重樫文 監修・著
後藤 智・安藤拓生 著
『デザインマネジメント論のビジョン』の書評が、
図書新聞2022年9月17日付に掲載されました。評者は岩谷昌樹先生です。評者の先生、掲載紙ご担当者さまに、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。


・・・・・・
そうした時期に、GAFAのようなプラットフォーマーを輩出することができず、平成が「失われた30年」と評される日本も、ここに来て遅ればせながら「デザイン経営」がブランド価値を高め、イノベーションを実現して、企業の産業競争力を向上させるものであると気付き、2018年には経済産業省・特許庁が『「デザイン経営」宣言』(「産業競争力とデザインを考える委員会」2018年5月23日)を提示した。そこでの政策提言は、企業がデザイン経営に取り組みやすくなるように後押しする施策であり、あくまでも実際のオペレーションは企業自らで行なう必要がある。では、どうしたら良いのか。新たに何かを取り組み始める時の常套手段は、まずビジョンを明確にすることである。

本書は、まさにこの問題に真正面から答えるものである。企業がデザインを自社組織にどのように落とし込めば、デザインの有する力を最大限に活用できるのかについて、極めてアカデミックなスタンスに立ち、セオリカルなアプローチから道理を明るくすることに努めた労作である・・・・・・

 

 

9784788517660_20220912122201

佐藤典司、八重樫文 監修・著
後藤 智・安藤拓生 著
『デザインマネジメント論のビジョン』

出版年月日 2022/03/30
ISBN 9784788517660
4-6判264頁 定価 2,640円(本体2,400円+税)
在庫あり

紹介 清水 亮 著『予科練「戦友会」の社会学』@日刊ゲンダイ 8月16日付 

「「戦争の記憶の風化」というステレオタイプな見方に一石を投じる」
清水亮著『「予科練」戦友会の社会学』が「日刊ゲンダイ」の8月16日付「週刊読書案内」にて、一ノ瀬俊也先生にお取りあげいただきました。ありがとうございます。こころよりお礼申しあげます。


>>>>>> リンク 日刊ゲンダイ「週刊読書日記」 一ノ瀬俊也(埼玉大学教養学部教授)


97847885176151 清水 亮 著
『「予科練」戦友会の社会学  戦争の記憶のかたち』

2022/03/31
ISBN 9784788517615
A5判256頁・3520円

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