カテゴリー「書評」の記事

2020年1月20日 (月)

書評 実重重実著『生物に世界はどう見えるか』 日本経済新聞 2020年1月18日掲載

実重 重実 著『生物に世界はどう見えるか』
の書評が、日本経済新聞、2020年1月18日付、に掲載されました。掲載紙ご担当者さまに、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

「環世界」軸に認識方法を分析

ドイツの動物学者ユクスキュルは『生物からみた世界』で「環世界」という考え方を提唱した。動物はそれぞれの知覚と行動で世界をつくりだしているというこの概念を、進化の系統をたどりながら生物一般に敷衍したのが本書だ。

・・・・・・元農水省の行政官である著者は長年多くの動物を観察する傍ら在野の生物学者、団まりな氏に師事し階層的に分析する方法論を学んできたという。そのため原核生物の大腸菌、単細胞生物、植物、キノコやカビといった菌類、ミミズ、昆虫、魚類、鳥類、哺乳類・・・・・・と豊富な実例があげられ、認識のあり方を順に追っていける構成だ。

2012年にはヒト以外の哺乳類や鳥類、タコに意識を認めた「ケンブリッジ宣言」が採択された。意識を形成する基盤となる神経回路をトップダウン式に遡れば「何らかの主体的な認識」ひいては「細胞の主体性」に行き着くという。細胞レベルにまで近くの世界へ導いてくれる。




9784788516595_20200120121401 実重 重実 著
生物に世界はどう見えるか
感覚と意識の階層進化

2019/12/01
ISBN 9784788516595
4-6判・224頁
定価 本体2400円+税

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2020年1月14日 (火)

書評 川瀬 慈 編著『あふりこ』 日本経済新聞 2020/1/11

川瀬 慈 編著『あふりこ』の書評が日本経済新聞、2020年1月11日付、に掲載されました。掲載ご担当者様にこころよりお礼申し上げます。

 



アフリカを研究対象にする人類学者5人の共著。だが本書は評論や研究書ではなく、おのおのがフィールドワークに根ざして記したフィクションだ。・・・・・・虚実のはざまに浮かぶ光景は「新たなアフリカの姿」だと編著者。アカデミズムの枠を超えた、形の力を堪能できる一冊だ。


9784788516540 川瀬 慈 編著『あふりこ』

2019/11/15
ISBN 9784788516540
4-6判・344頁 定価 本体2,400円+税

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2019年12月25日 (水)

書評 鈴木七美著『エイジングフレンドリー・コミュニティ 』@図書新聞 2020年1月1日号

鈴木七美 著エイジングフレンドリー・コミュニティ の書評が、
図書新聞 2020年1月1日号に掲載されました。評者は小辻寿規氏。掲載ご担当者様、書評くださいました先生に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

「高齢者にとって望ましい居場所づくりのヒントとなる書
―多くの人が知らなかった居場所の在り方を提起する」 小辻寿規氏・評

「高齢者の居場所」、日本において社会的孤立や孤独死等が問題視される今、「コミュニティ・カフェ」や「まちの縁がわ」などと呼ばれるものや「認知症カフェ」が増加している。独居高齢者が増加し、厚生労働省が地域の支え合いの重要性を唱える中で各自治体においてもその助成制度が充実してきている。

 ただ、そこまで充実してきた日本の高齢者の居場所が利用者である高齢者にとって望ましい環境であるかといえば、本当にそうであるか怪しい。高齢者の社会的孤立や孤独死を減らそうと考えて運営者たちは日々努力されているのだが、その思いは成就せず結局のところ活動を休止もしくは中止してしまう事例が後を絶たない。どうずれば、利用者にとって望ましい居場所になるのであろうか。そのヒントとなるのが本書である。これから高齢者の居場所づくりをはじめたいと考えた方や居場所づくりに疲れたと感じた方にぜひ手にとっていただきたい。

 本書は人類学者による研究書であり、これまでのエイジング研究をまとめたものになっている。・・・・・・

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 現在の日本において、人は一つの場所に定住することは難しい。人生を考えた場合、進学や就職、結婚等のみではなく、高齢期においての移住も非常に多い。パートナーの死去に伴い一軒家からマンションに引っ越す人もいれば、介護が必要になった際に自らの子女宅やその近辺に引っ越す人もたくさんいる。生きるということは常に新たな関係性をつくっていくことともいえる。その際に必然的に様々なコミュニティに属していかなければならない。・・・・・・
・・・・・・現実は個性に合わせた場所が見つからず、皆が苦労している。本書が持つ意味は多くの人が知らなかった居場所の在り方を提起したことにある。これからの超高齢社会においてエイジングフレンドリー・コミュニティが着目されていくことになるだろう。その起点となったのが本書と後日いわれることになるのではないだろうか。

 

 

9784788516458_20191225123801 エイジングフレンドリー・コミュニティ

超高齢社会における人生最終章の暮らし方

鈴木 七美 著
2019/09/02
ISBN 978-4-7885-1645-8
四六判・256頁
定価 本体2,800円+税

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2019年12月24日 (火)

書評 松嶋秀明著『少年の「問題」/「問題」の少年』@図書新聞 2020年1月1日号

松嶋秀明著『少年の「問題」/「問題」の少年』の書評が、
図書新聞 2020年1月1日号に掲載されました。評者は稲垣応顕氏。
掲載誌ご担当者様、ご書評くださいました先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 

「教師や大人に何ができるかを追い求める
―ナラティブアプローチによる実践研究」稲垣応顕氏 評

著者の非行少年を見つめる視点は柔らかく温かい。「レジリエンス」を「単に非行からの立ち直りではなく、少年自身が幸せに暮らしていけること」と捉え、ナラティブアプローチによる知見により教師や大人に何ができるかを追い求める。・・・・・・
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そして終章である第7章では、総括として非行的な少年たちが幸せになることを目指したとき、我々教師また大人が非行少年との関係性の諸相を理解し直し、未来志向で関わることの大切さが考察されている。
本書は、その全体を通して「教育とは何か」を読者に問いかけてくる。一般論として、この問いに対しては「教え育てること」との解が用意されているように思われる。しかし、今、あえて「教」と「育」の漢字を離して考えてみる。すると、我々教師は「教える」ことにかなりのウェイトを置き、「育てる」という視点をどこかに置いてきてはいないだろうか。本書は、そのようなことを考えさせる本である。

 

 

 

 

9784788516427   少年の「問題」/「問題」の少年
 逸脱する少年が幸せになるということ

 松嶋 秀明 著
 2019/09/01
 ISBN 978-4-7885-1642-7
 四六判・228頁
 定価 本体2,300円+税

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2019年12月20日 (金)

書評 実重重実 著『生物に世界はどう見えるか』@土地改良新聞 2019/12/15

実重重実 著『生物に世界はどう見えるか』紹介記事が、土地改良新聞 2019/12/15 に掲載されました。実重先生によりすばらしい本書の紹介となっております。ご一読いただけたらさいわいです。

掲載誌ご担当者様に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。



近年における生物学の進展には、めざましいものがあります。自然界の様々な謎が次々と解き明かされてきました。私は、そうした最新の科学的知識を総動員して、微生物から、植物、カビ・キノコ、ミミズ、昆虫、魚、鳥そして哺乳類まで、生物界のあらゆる構成員にとって世界はどう見えているかということを描いてみました。

ミツバチは野原をあちこちに探索してから、どうやって一直線に巣に戻ってくるのでしょうか。それは、「経路積算」という能力に基づくものだということが分かってきました。しかもミツバチは、私たちに見えない偏光や地磁気を頼りにして内面に地図を描いているようなのです。

また、渡り鳥は、どうやって何千キロにも及ぶコースを間違えずに飛ぶことができるのでしょうか。これは頭の中に、生まれつき「どの方向に向かってどの時間だけ飛ぶか」ということがインプットされているのです。そして、鳥たちは、太陽コンパスに加えて、地磁気や低周波など私たちに分からない信号を利用して、間違えずに長距離の飛行をします。

魚たちの大群が群れごと一斉に旋回できるのははなぜなのか。植物はどうやって葉と根の間で連絡を取り合うのか。キノコはなぜ1日のうちに顔を出してくるのか。これらはすべて1つ1つの細胞が持つ、認識の力に基礎があります。

この本では、そうした生物界の様々な不思議を、感覚という視点から解き明かします。そして細胞レベルの「認識」が個体レベルで「感覚」となり、さらには私たちの持つ複雑な「意識」まで進化していく様子を、階層の発展として描きました。

私は農林水産省の行政官として仕事をする傍ら、発生生物学者・団まりな氏に師事して、団氏が提唱した階層生物学を20年近く学んできました。しかし、残念なことに、団まりな氏は、2014年に交通事故で他界されてしまいました。このため私がその志を継ぎたいと考え、5年がかりで本書を執筆したものです。

「意識」や「進化」ということに関心をお持ちの方には、面白いと保証します。そうでない方にとっても、自然界のさまざまな謎が目の前で解き明かされていき、やがてそれが1枚の大きな絵になっていく様は、面白い読み物と言えるのではないでしょうか。

専門用語は使わず、想像力を交えながら書いてみました。皆さん私と一緒に、生物たちの世界を楽しく探検しましょう。

(著者 實重重実)

 

 

9784788516595 生物に世界はどう見えるか
感覚と意識の階層進化

実重 重実 著
2019/12/01
ISBN 9784788516595
4-6・224ページ
定価 本体2,400円+税

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2019年12月18日 (水)

服部徹也著『はじまりの漱石』@「図書新聞」19年下半期 読書アンケート 

服部徹也著『はじまりの漱石―『文学論』と初期創作の生成』が、2019年12月21日号「図書新聞」、19年下半期 読書アンケートにて、石原千秋氏、佐藤泉氏にご紹介いただきました。先生方、掲載誌ご担当者のかたに、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。



「漱石の『文学論』から初期の作品群を解明する試みはこれまでも多く試みられてきた。しかし、それには一点危ういところがあって、それは『文学論』が漱石の講義そのままでなく、のちにかなりの手を入れて刊行された点である。このタイムラグを、これまでおそるおそるしか言及されてこなかった学生の講義ノートを綿密に検討して解消して、初期の漱石文学と漱石の文学理論との関係を明らかにした。初期の作品群に後の漱石文学のモチーフが出そろっていることがよくわかる。・・・・・・」(石原千秋氏 評)

 

「漱石自身が「未成市街の廃墟のようなもの」と呼んだ『文学論』を生成過程につき戻し新たな生を与えることに成功」(佐藤泉氏 評)



石原先生はほか小倉脩三著『漱石の文学理論』(翰林書房)、加藤夢三著『合理的なものの詩学』(ひつじ書房)を挙げられております。

佐藤先生はほか森口豁著『紙ハブと呼ばれた男』(彩流社)、ディシュネ・ワディウェル著『現代思想からの動物論』(人文書院)、柿木伸之著『ヴァルター・ベンヤミン』(岩波新書)を挙げられております

9784788516434_20191218112701 『はじまりの漱石 』
『文学論』と初期創作の生成

服部 徹也 著
2019/09/06
ISBN 9784788516434
A5・400ページ
本体4,600円+税

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2019年11月19日 (火)

書評 川上清文・髙井清子(編)『対人関係の発達心理学』@日本子育て学会「読書案内」

川上清文・髙井清子(編)『対人関係の発達心理学』の書評が、日本子育て学会「読書案内」に掲載されました。評者は繁多進先生。書評された先生、掲載サイトご担当者さまには深くお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

比較行動学に精通した執筆者も多く、チンパンジーとの比較なども非常に面白いのですが、なによりも本書の特徴は、発達心理学の専門書でありながら、子どもの姿がありありと浮かんでくるということです。読みながら自分が保育園で子どもと接しているような錯覚さえおぼえます。「子どもの心をもっと知りたい」と思わせられる好著ですので、子どもとかかわっているすべての方々にご一読をお勧めします。

>>>>>日本子育て学会 「読書案内へ」(書評記事全文読めます)

 

9784788516465 対人関係の発達心理学
子どもたちの世界に近づく、とらえる

川上 清文・高井 清子 編
岸本 健・宮津寿美香・川上文人・中山博子・久保田桂子 著
2019/09/17
ISBN 9784788516465
A5判・144頁
定価 本体1,800円+税

 

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2019年11月15日 (金)

服部徹也著『はじまりの漱石』書評掲載 2019年11月9日号「図書新聞」 

・服部徹也著『はじまりの漱石―『文学論』と初期創作の生成』の書評が、2019年11月9日号「図書新聞」に掲載されました。評者は中山弘明氏。評者の先生、掲載誌ご担当者のかたに、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。



文学とはそもそも何か? 文学研究に未来はあるのか? 人文科学が窮地に置かれている現在、この問いはますます重い。そこで漱石となる。異郷のロンドンで、孤立無援な彼が一人格闘してきた言わば原理論としての『文学論』は、一般には小説家との乖離から破綻した「失敗作」とのレッテルを長く貼られた。一方研究者のレベルは漱石の旧蔵書を遡る財源研究からストイックに「理論家漱石」が顕彰されもした。そこに近年新しい動きが見え始めた。例えばゲーム作家でもある山本貴光が『文学問題(F+f)+』(幻戯書房)で投げかけた問いは、新たにこの『文学論』を現在にアップデートする戦略として注目を集めた。そして若手漱石研究家としてすでに定評のある服部氏が、その博論をいよいよ大部な著書として刊行した。その硬質でクリティカルな文体に圧倒される。・・・・・・

9784788516434『はじまりの漱石 』
『文学論』と初期創作の生成

服部 徹也 著
2019/09/06
ISBN 9784788516434
A5・400ページ
本体4,600円+税

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2019年11月14日 (木)

書評 榊原賢二郎 編著『障害社会学という視座 』 2019年11月8日付「週刊読書人」に掲載

榊原賢二郎 編著『障害社会学という視座 ―社会モデルから社会学的反省へ』が、2019年11月8日付「週刊読書人」に掲載されました。評者は好井裕明氏。ご書評くださいました評者の先生、掲載誌ご担当者様にお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 

本書では、「女性で髪の毛がないこと」がどのような「障害」なのか、発達障害をどのように捉え直せるのか、何が知的障害者と親を離れがたくさせるのか、障害社会学の発想から考える障害者スポーツの可能性、ALSという難病で進行する障害と自己の肯定という問題、言語障害と相互行為儀礼から考える吃音という問題など、興味深い論考が収められている。編者の障害社会学をめぐる丁寧な理論的説明とあわせて充実した論集となっている。障害社会学が今後どのような展開をするか、期待したい。

週刊読書人ウェブにて全文読めます

 

 


9784788516410 榊原賢二郎 編著

障害社会学という視座

 

2019/09/10
ISBN 9784788516410
4-6判・234頁
定価 本体2,400円+税

 

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2019年10月28日 (月)

朝日新聞読書 鈴木登美ほか編『検閲・メディア・文学』記事 「ひもとく 検閲」

鈴木登美ほか編
『検閲・メディア・文学』


が、2019年10月27日、朝日新聞読書 鈴木登美ほか編『検閲・メディア・文学』記事 「ひもとく 検閲」にてとりあげられました。
評者は志田陽子氏。お取りあげいただきました先生、掲載紙ご担当者様、ありがとうございます。こころよりお礼申し上げます。

「この数ヶ月、「検閲」という言葉がメディアをにぎわした。8月初旬、「あいちトリエンナーレ2019」の一企画「表現の不自由展・その後」が中止されたことについて、検閲ではないかとの声が多方面から上がったためである。私たちの言論環境について、疑問や不安を感じさせる出来事が増えている。・・・・・・

日本で過去に行われてきた検閲とはどのようなものだったか。鈴木登美ほか編『検閲・メディア・文学 江戸から戦後まで』は、江戸時代にさかのぼってカバーしている。当時の歌舞伎や浮世絵への検閲は、性表現の抑制と共に奢侈(ぜいたく)を抑制することに高いウェートがあった。最近の春画ブームの前提としても興味深い・・・・・・」

ほか『GHQの検閲・諜報・宣伝工作』山本武利著、岩波現代全書
『検閲と発禁 近代日本の言論統制』水沢不二夫著、森話社
の2冊が取り上げられています。





9784788512849  検閲・メディア・文学
江戸から戦後まで
鈴木 登美・十重田 裕一・堀 ひかり・宗像 和重 編
2012/03/30
ISBN9784788512849
A5・384ページ
定価 本体3,900円+税

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