カテゴリー「書評」の記事

書評  菅沼 明正 著『流転する伝統』@千葉日報 2026年5月26日付ほか

菅沼 明正 著『流転する伝統』の書評が、2026年5月26日付千葉日報ほか、「沖縄タイムス」(5/23)に掲載されました。評者は成田龍一氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 1984年生まれの歴史社会学者の350㌻を超える大著で、副題は「修学旅行と文化財鑑賞の歴史社会学」とある。考察されるのは、京都や奈良の名所旧跡、史跡、あるいは古い社寺やそこに伝わってきた宝物が文化財とされ、それを鑑賞するという態度が成立・普及する過程である。

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 背景には伝統文化とは何かという問いがあり、国民国家の下でいかに人々を結び付けるのに機能してきたのかという視点がある。明治期の文化財政策による方向付け、大正期における鉄道網の発達とそれに伴う旅行機会の増大、そして戦時期ー戦後期ー高度成長期における人々の文化財鑑賞の様相をたどり、ナショナルアイデンティティーのありかを明らかにする。

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9784788519213_20260507093401 『流転する伝統
修学旅行と文化財鑑賞の歴史社会学』


菅沼 明正 著
社会学
出版年月日 2026/04/01
ISBN 9784788519213
A5判・360頁
定価4950円

紹介 「毎日新聞」2026年5月4日付「今を生きる、今を書く:今読むべき一冊(その5)」=町田樹/67

J.ノエル・ミサ、P. ヌーヴェル 編、橋本一径 訳『ドーピングの哲学』を毎日新聞2026年5月4日付「今を生きる、今を書く:今読むべき一冊(その5)」にてご紹介いただきました。
「今を生きる、今を書く」は、町田樹氏による「アーティスティックスポーツ」論です。

 

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 かくして私たちがこれまで当たり前のように信じてきた「反ドーピング」や「フェアプレー」といった概念はいま、エンハンスト・ゲームズの登場によって大きく揺さぶられているのである。
 ゆえに私たちは、これらの概念を今一度見つめ直し、エンハンスト・ゲームズを評価する必要に迫られているのだが、そのような時だからこそ、「ドーピングの哲学――タブー視からの脱却」(新曜社、2017年)を今読むべき一冊としておすすめしたい。
 この本は、11年にフランスで出版された反ドーピングの取り組みを考察する論文集の翻訳本(翻訳者・橋本一径氏)である。書き手には、哲学者のジャン=ノエル・ミサ氏をはじめ、生物学者や社会学者、倫理学者、スポーツ医学者など、多岐にわたる専門家が名を連ねているのだが、彼らは本の副題にもあるように、従来タブー視されてきたドーピング撲滅運動の問題性をそれぞれの学術的見地から指摘し、スポーツのあり方を問い直す必要があると主張する。

・・・・・・

 私は正直に言って、著者らが構想する新しいスポーツのあり方には、議論が不十分な点が多々あると思っており、賛同できない。しかし、本書を読めば、ドーピングはもはや善悪の二元論で考えられるものではなくなっているということは、よくわかる。スポーツ界には、ドーピングは論外だとの見解を示す論者が多いが、これからはスポーツに携わるすべての関係者が、どこにドーピング行為とそうでない行為を分かつ線を引くのか、そもそも反ドーピングとはいかなる行為で、その背後にあるスポーツ精神(フェアプレーと言い換えてもよい)とはいったい何なのかを、絶えず真剣に議論し続けなければ、それこそスポーツが時代錯誤の文化に陥ってしまいかねない。皆さんはこの問題をどう考えるだろうか。
・・・・・・
>>>>>>毎日新聞紹介ページへ

 

9784788515468 『ドーピングの哲学
 タブー視からの脱却』

J=N. ミサ、P. ヌーヴェル 編 
橋本 一径 訳
社会学
出版年月日 2017/10/31
ISBN 9784788515468
四六判・326頁
定価4730円

 

 

書評 ポール・リクール 著 山野 弘樹 訳『イマジネーション講義』@2026年5月8日付「週刊読書人」

ポール・リクール 著 山野 弘樹 訳『イマジネーション講義 フィクションの現象学』の書評が、2026年5月8日付「週刊読書人」に掲載されました。評者は長門祐介氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 私たちは日常生活の中で「イメージ(想像)」や「イマジネーション(想像力)」という言葉を頻繁に用いている。「イメージで語らず本当のところを調べないと」「実家にいる犬が元気にしているところを想像する」「写真はイメージです。実際の商品と異なることがあります」「チェロの弓を持つときは卵を持つようなイメージで」「もっと他人に対する想像力をもつべきだ」というようにである。
 こうした用法を眺めていると「イメージ」には実にいろいろなものが担わされているのがわかる。

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 ポール・リクールの『イマジネーション講義 フィクションの現象学』(以下、「本書」)は、このように馴染み深くも複雑な「イメージ」と「イマジネーション」についての哲学史における位置づけを見定めたうえで、その哲学的なポテンシャルを再考するという野心的な講義の記録である。

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9784788519077
『イマジネーション講義
フィクションの現象学』


ポール・リクール 著 山野 弘樹 訳
哲学・思想
出版年月日 2026/01/11
ISBN 9784788519077
A5判・528頁
定価7150円

書評  菅沼 明正 著『流転する伝統』@朝日新聞 2026年5月2日付

菅沼 明正 著『流転する伝統』の書評が、2026年5月2日付朝日新聞に掲載されました。評者は吉田裕氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 文化財行政は、2018年の文化財保護法の改正によって、大きな転換期を迎えている。「文化財の保護」から「文化財で稼ぐ」政策への転換である。背景にあるのは、政府の「観光立国」路線だ。しかし、専門家から強い危惧の念が表明されているにもかかわらず、国民の関心はそれほど高くはない。文化財に対する理解を今後一層深めていく必要があるだろう。
 本書は、京都・奈良への修学旅行を主な事例として、「日本の文化的なナショナル・アイデンティティ」がどのようにして形成され、どのように受容され続けていったのかを解明した研究である。分析の対象は、政策や法律、旅行、出版メディア(旅行案内書・ガイドブック・旅行雑誌など)の三領域であり、領域間の相互作用に注目しながら、文化財の鑑賞という形をとった観光旅行が定着していくプロセスを緻密(ちみつ)に検証している。

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 学問上の貢献という点でいえば、本書の最大の成果は、エリック・ホブズボウムの「創られた伝統」概念を発展させたことだ。近代国民国家の文化的・思想的基盤の一つは、その国の「伝統文化」である。近年の研究は、その起源をたどることによって、「伝統文化」が近代化のある段階で形成された「創られた伝統」であることを明らかにしてきた。それに対して本書は、「伝統文化」の起源ではなく、それが社会の変化に対応しつつ受容されていくプロセスそのものに分析の焦点を合わせた。まさに「流転する伝統」である。

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>>>>>>朝日新聞書評ページへ

9784788519213_20260507093401 『流転する伝統
修学旅行と文化財鑑賞の歴史社会学』


菅沼 明正 著
社会学
出版年月日 2026/04/01
ISBN 9784788519213
A5判・360頁
定価4950円

書評  巽 美奈子 著『〈栄養〉の誕生』@京都新聞 2026年4月26日付

巽 美奈子 著『〈栄養〉の誕生』の書評が、2026年4月26日付京都新聞に掲載されました。評者は畑中 三応子氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 今や栄養学に基づく健康な食事が国民の義務のようになり、食事でカロリーやボリュームを気にせず満足感を得ようとすることが「ギルティー(罪悪感)消費」と呼ばれる時代になった。だが、明治期には正しい食事で健康になるという発想はまだなかった。栄養学がどのように生まれて受容されたのか、本書は最初期の経緯を明らかにする。

 貧弱だった日本人の体格を改善すべく、西洋料理が滋養に富む食事として称賛されていた大正期、日本の栄養学の創始者、佐伯矩が登場した。

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 かくして栄養学は食べ方をコントロールするようになっていったが、これだけの業績を上げたのに変人扱いされ、一般には忘れられた佐伯を知るだけでもこの本を読む価値がある。ただし、健康志向への強制と栄養至上主義がますます強まる現在、佐伯を恨めしく思わないでもない。

9784788519114

 

『〈栄養〉の誕生
「健康のための食事」をめぐる抵抗と受容』


巽 美奈子 著
社会学
出版年月日 2026/03/05
ISBN 9784788519114
4-6判・232頁
定価3520円

書評  巽 美奈子 著『〈栄養〉の誕生』@日本経済新聞 2026年4月18日付

巽 美奈子 著『〈栄養〉の誕生』の書評が、2026年4月18日付日本経済新聞に掲載されました。評者は阿古 真理氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 以前、キッチンの歴史を調べた折、家政学の創始者、エレン・リチャーズが、シェアキッチンを使って栄養バランスが整った食事の仕方を貧困者に伝えようとしたが、3年近くにわたり拒絶され続け、失敗した史実を知った。

健康を守るには、栄養のバランスが整った食事の実践が必要と言われる。しかし、誰もがそうした食事を好むわけではないし、日々栄養バランスを考え食事を調える台所の担い手は、負担が大きい。この葛藤について社会学の視点から切り込み、栄養に関する日本の近代史を描いた本である。

........

 栄養教諭だった著者は、従来の栄養教育に限界を感じて学んだことを相対化すべく大学院に入り、まとめた博士論文が本書の元になっているという。今後の研究で、著者が栄養バランスと食、ジェンダーと食の担い手の関係など、本書が示したいくつもの種を、育てていくのを楽しみにしている。

>>>>>>日本経済新聞書評ページへ

9784788519114

 

『〈栄養〉の誕生
「健康のための食事」をめぐる抵抗と受容』


巽 美奈子 著
社会学
出版年月日 2026/03/05
ISBN 9784788519114
4-6判・232頁
定価3520円

書評 有賀 ゆうアニース 著『「混血児問題」の歴史社会学』@2026年3月27日付「週刊読書人」

有賀 ゆうアニース 著『「混血児問題」の歴史社会学 戦後日本の人種的境界』の書評が、2026年3月27日付「週刊読書人」に掲載されました。評者はウォント盛 香織氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 ・・・・・・
 評者が本書において特に興味深かった章は、「戦後日米混血児」誕生前を分析した1章である。著者は、「戦後日米混血児」誕生前から女性団体を含む市井の人々が、日本人女性と連合国軍の軍人・軍属との間の混血児誕生予想を記述した民衆流言資料の中で、こうした子どもが生まれることとその母親たちを「肩をすくめるに余りある」「ハズカシイ」ことと見なし、「罰を下すべきだ」とするほど否定的にとらえていたことを示している。「戦後日米混血児」を産んだ女性は、パートナー選択と性行動において人種境界やセクシュアリティ規範を逸脱しただけでなく、家を継ぐべき日本人嫡子を産まないという家規範に反するなど幾重の逸脱行為を犯した女性たちとして見なされ、それゆえに彼女たちとこれから生まれるであろう子どもたちへの一般市民の強い拒否感が醸成されていたことが分かる章となっている。・・・・・・

 

 

9784788519084_20260309141701『「混血児問題」の歴史社会学
戦後日本の人種的境界』


有賀 ゆうアニース 著
社会学
出版年月日 2026/01/30
ISBN 9784788519084
4-6判・344頁
定価4290円

 

書評 有賀ゆうアニース 著『「混血児問題」の歴史社会学』@日本経済新聞 2026年2月28日付

有賀 ゆうアニース 著『「混血児問題」の歴史社会学 戦後日本の人種的境界』の書評が、2026年2月28日付日本経済新聞に掲載されました。評者は安田菜津紀氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

…….1953年に厚生大臣宛てに出された「混血児対策に関する答申」の中に、気になる文言があった。《基地周辺の女性に対しては、軽率な交際によって混血児を生むことのないよう啓発に努めること》

「望ましくない」と見なした女性を罰するまなざしもさることながら、「混血児」が「生まれない方がいい存在」であるかのような言いぶりではないか。

当時から果たして、社会は変わっただろうか。街中で「日本人ファースト」というスローガンが踊り、「同化するか、出ていくか」という極論が突き付けられながらも、日本政府は人種差別を規制するための本格的な措置には消極的な態度を貫いている。

本書は主に50年代までの中央政府の「混血児問題」をめぐる政策などを中心にしているが、きわめて現代的な示唆を含んでいる。

9784788519084_20260309141701 「混血児問題」の歴史社会学
戦後日本の人種的境界

有賀 ゆうアニース 著
社会学
出版年月日 2026/01/30
ISBN 9784788519084
4-6判・344頁
定価4290円





◎新曜社<新刊の御案内>■メール版 第260号■

2025年11月21日発行
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◎新曜社<新刊の御案内>■メール版 第260号■
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◇トピックス
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〇受賞

申 惠媛著『エスニック空間の社会学:新大久保の成立・展開に見る地域社会
の再編』が第24回日本社会学会奨励賞(著書の部)を受賞いたしました。第50
回藤田賞につづいての受賞です。


申惠媛先生、受賞おめでとうございます。

https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b640719.html

 

〇イベント情報

『ワードマップ ベルクソン』の出版を記念いたしまして、2026年2月24日、
代官山 蔦屋書店にてトークイベントが開催されます。編者の村山先生、平井
先生、酒井先生が出演予定。詳細が分かり次第、小社サイト、twitterなどで
お知らせいたします。




〇採用情報

 編集者、若干名を募集しております。詳細は下記をご覧ください。

 https://www.shin-yo-sha.co.jp/news/n62340.html





◇近刊情報

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2025年11月28日 取次店搬入
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『ロボットの悲しみ 新装版』
──コミュニケーションをめぐる人とロボットの生態学
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岡田美智男・松本光太郎 編著
四六判並製224頁・本体価格2300円
ISBN 978-4-7885-1903-9 C1011
分野=認知科学・心理学・ロボット工学


人助けのために生まれながら,本当に人の代わりにはなれないロボット。日常
生活の中に繰り出し始めたロボットと人はどうコミュニケーションしあえるの
か? ロボットやAIの領域で、未だ克服されない課題を十年前に指摘。品切だ
った好著を新装復刊。


編者

岡田美智男 豊橋技術科学大学名誉教授、筑紫女学園大学副学長
松本光太郎 茨城大学人文社会科学部教授


目次
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b670057.html



○新曜社ウェブマガジン「クラルス」
『ロボットの悲しみ』から10年後の再検討──
「のようなもの」をめぐって(松本光太郎)
https://clarus.shin-yo-sha.co.jp/posts/8717





2025年12月中旬発売予定

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『文化と戦争』
──なぜアメリカは「ベトナムの失敗」をくり返すのか
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平田久典著
A5判上製656頁・本体価格6300円
ISBN 978-4-7885-1904-6 C3031
分野=政治学・歴史・社会学・哲学・思想・科学


外交・戦争において、なぜアメリカは「外国の歴史・文化に対する無知・無関
心」という失敗をくり返すのか。現在にまで続くこの病理を、アメリカ国民文
化やその起源であるヨーロッパ文明という二つの視座から考究する。

*国際政治学の枠をこえ、歴史学や社会学、人類学、経済学、心理学、哲学、
異文化コミュニケーション論などにもとづいた、分野横断的な意欲作。


*アメリカの外交政策や戦略文化の根底にある国民文化を理解することは、今
後の安全保障環境を考えるうえで喫緊の課題となる。


著者
安全保障研究家、ライター。英キングズ・カレッジ・ロンドンにて修士号取得
(戦争学専攻/遠隔教育)、北京大学国際関係学院にて博士号取得(安全保障
専攻)。


目次
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b670232.html



2026年1月上旬発売予定
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『ワードマップ ベルクソン』
──諸学と協働する哲学
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村山達也・平井靖史・三宅岳史・伊東俊彦・酒井泰斗編著
四六判並製294頁・本体2900円 ISBN 978-4-7885-1906-0 C1010
分野=政治学・歴史・社会学・哲学・思想・科学


同時代の諸学をありったけ渉猟し社会と深くかかわる知識人として時間・心・
生命・道徳・宗教をめぐり考え続けたベルクソン。学問を無視して生きること
も学問だけを手掛かりに生きることもできない今を生きる私たちに向けた誠実
で明快な入門書。


*広い研究範囲と独自用語で捉えにくいベルクソンを主著の紹介とキーワード
解説を軸に解きほぐす

*広大な活動範囲を解説するコラムも充実


編著者  
村山達也 東北大学文学部教授
平井靖史 慶應義塾大学文学部教授
三宅岳史 香川大学教育学部教授 伊東俊彦 相模女子大学人間社会学部教授
酒井泰斗 会社員



__________________________________


編集後記

学会は書籍販売の貴重な機会だ。先日11月15日-16日は、東京国立の一橋大学
で開催された日本社会学会に出展、書籍の宣伝・販売をはじめ、著者の先生へ
のごあいさつなど充実した二日間となった。

この学会でお会いするのを楽しみにしているのが、いなほ書房の星田さん。星
田さんはこの学会のために社会学関連の古書を展示・紹介しているのだが、じ
つは珈琲店経営情報誌、季刊「珈琲と文化」の発行者だ。この雑誌、現在138
号ということだからなんと40年以上も続けられている。いわば日本の珈琲文化
の生き字引ともいうべき人物と古い社会学の先生や珈琲についての話をお聞き
するのはじつに楽しい、得難い時間だ。


『喫茶おじさん』原田 ひ香 著、小学館


主人公・松尾は早期退職して喫茶店をはじめ、そしてそれが失敗。多目にもら
った退職金を溶かしてしまい、夫婦仲は最悪という状況にあるが、いまなお喫
茶店めぐりに勤しみ、能書きをたれるという、いろいろ「分かっていない」男
だ。


松尾が訪れる喫茶店にはすべてモデルがあり、読む人が読めばあそこの喫茶店
と分かるような書き方になっている。本書を読んだあとの名店さがしも楽しみ
のひとつだろう。しかしこの著者、後期中年男が語る夢とその現実、その痛さ
を描くのがじつにうまく、読者(中年男性)の心は抉られ、削られていくこと
は保証する。


小説最後の松尾の挑戦は、本書によって抉られ削られた読者(中年男)に夢と
希望を与える。初心に戻り、一からコーヒーを淹れることを志す松尾。最初の
店、始める前からやっておくことだよなとツッコミ読みをしたくなるところな
のだが、とにかく濃いコーヒーをいれることを志す松尾。そうだ、うっすーい、
流行りの小洒落たコーヒーなんてコーヒーじゃない。とにかく濃い、苦ーいお
前のコーヒーが飲みたいぞ、松尾。と、思わず感情移入して応援したくなる。

オッサンがオッサンにお勧めしたい一冊だ。(N)

_________________________


◇奥付

_________________________


□電子メールマガジン:「新曜社<新刊の御案内> 」(不定期発行)

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□発行:株式会社新曜社 営業部

〒101-0051 東京都千代田区神田神保町3-9 幸保ビル

電話  03(3264)4973(代)

FAX 03(3239)2958

e-mail info@shin-yo-sha.co.jp
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

次回発行は2025年12月下旬頃を予定しております。

 

書評 柿原 泰・加藤茂生・萩原優騎 編 『村上陽一郎の〈科学・技術と社会〉論』 @「週刊読書人」2025年12月12日付 

柿原 泰・加藤茂生・萩原優騎 編 『村上陽一郎の〈科学・技術と社会〉論 その批判的継承と発展』の書評が、「週刊読書人」2025年12月12日付に掲載されました。評者は愼 蒼健氏。愼先生、ご書評いただきありがとうございます。

「本書は、2016年に刊行された柿原泰・加藤茂生・川田勝編『村上陽一郎の科学論 批判と応答』(新曜社)の続編である。前著が科学史・科学哲学を中心とする前期村上科学論・論であるとすれば、本書(柿原泰・加藤茂生・萩原優騎編『村上陽一郎の〈科学・技術と社会〉論 その批判的継承と発展』(新曜社)は、1990年代半ば以降の〈科学・技術と社会〉をめぐる議論の検討、つまり後期村上科学論・論である。……
……
インタビューでは、数々の興味深いエピソードが紹介され、村上が自身について語っている。評者はその中から、「熱い」村上と「冷めた」村上の両面を挙げておこうと思う。……
……
 日本の現代科学論史というものを構想するとすれば、村上陽一郎は欠かせない研究対象であり、歴史研究者は村上の学問だけでなく、その人生に関心を抱く必要がある。本書は前著と並び、『歴史としての村上科学論』(村上陽一郎『歴史としての科学』のオマージュとして)の地平を切り開く端緒となるだろう」




9784788518766_20251216120001  村上陽一郎の〈科学・技術と社会〉論
 その批判的継承と発展

 出版年月日 2025/03/25
 ISBN 9784788518766
 四六判290頁・定価3,850円(本体3,500円+税)

 

 

 

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