カテゴリー「書評」の記事

「2024年回顧 動向収穫 社会学」@週刊読書人 2024年12月20日付

「2024年回顧 動向収穫 社会学」@週刊読書人 2024年12月20日付にて弊社書籍、

申 惠媛 著『エスニック空間の社会学』

三浦耕吉郎 著『自然死(老衰)で逝くということ』

好井裕明著『原爆映画の社会学』

をお取りあげいただきました。評者は石岡丈昇先生。
石岡先生、掲載紙ご担当者様、ありがとうございました。

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以下とりあげられた書籍、今年もこの分野、豊作です

高畑 幸 著 『在日フィリピン人社会』(名古屋大学出版会)
本由香著『パインと移民』(新泉社)
田原史起著『中国農村の現在』(中公新書)
近藤菜月著『「革命」を語る』(ナカニシヤ出版)
松井理恵著『大邱の敵産家屋』(共和国)
阪井裕一郎著『結婚の社会学』(ちくま新書)
富永京子著『「ビックリハウス」と政治関心の戦後史』(晶文社)
上川多実著『〈寝た子〉なんているの?』(里山社)
斎藤公子著『がん患者の集団になにができるのか』(現代書館)




書評 ダーク・フォン・レーン 著『ハロルド・ガーフィンケル』 @図書新聞 2024年12月14日付

ダーク・フォン・レーン 著
荒野侑甫・秋谷直矩・河村裕樹・松永伸太朗 訳
『ハロルド・ガーフィンケル エスノメソドロジーの誕生と社会学のあゆみ

の書評が「図書新聞」2024年12月14日付に掲載されました。評者は上谷香陽先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様にこころよりお礼申し上げます。

1967年に『エスノメソドロジー研究』が出版された際、ガーフィンケルのエスノメソドロジー(以下EM)は、当時の社会学に当惑をもって受け止められた。それから半世紀余り、今日EMは、アメリカ社会学会に独自の部会を持ち、社会学の教科書にも取り上げられ、社会学としての地位をすっかり確立したかに見える。しかしそれでも著者フォン・レーンは、今日に至るまでEMは、社会学理論を無視しているとみなされ、社会学において周辺的なものとして扱われてきたと主張する。この「不適切な」扱いに異を唱えるため、著者が本書で改めて強調するのは、ガーフィンケルのEMが、社会学の根本問題「社会秩序はいかにして可能か」を基盤としており、社会的事実に関するデュルケームの「格言」をある意味、忠実に受け継いでいるという側面である。

 本書でとりわけ丁寧に論じられているのは、いかにして社会秩序を記述するのかという社会学的問題をめぐって、ガーフィンケルが、パーソンズやシュッツの議論に深く依拠しながら、かれらの着想をどのように転換していったのかということである。日常生活の社会秩序は、研究者の視点からは偶発的で、乱雑で、絶えず変化し、客観的に記述することが困難だとみなされてきた。それゆえ従来の社会学は、人々が日常生活で生み出す社会秩序の記述を、科学的な記述に置き換えようと模索してきた。これに対して彼は、従来の社会学のやり方では、生活世界における人々の経験とは異なる理論や概念を代わりに作り出しているに過ぎないと異を唱え、オルタナティブを模索し始めるのである……。
……
本書は、難解な文体で書かれたガーフィンケルの原著を理解する助けとなる。日本語訳も読みやすく、丁寧な訳注によって、読者は論の筋道を迷わず追うことができる。EMと会話分析の関係など、本書の議論であまりふれられていない論点を解説した「訳者あとがき」も読み応えがある。ガーフィンケルの社会学の理解を深めてくれる良書である。

9784788518445  ダーク・フォン・レーン 著
 荒野侑甫・秋谷直矩・河村裕樹・松永伸太朗 訳
 『ハロルド・ガーフィンケル』
 
出版年月日 2024/05/10
 ISBN 9784788518445
 4-6判292頁・定価4290円
 在庫 在庫あり

 

書評 内藤千珠子『「アイドルの国」の性暴力 増補版』@図書新聞 2024年11月23日号

図書新聞2024年11月23日号、岡和田晃氏連載「〈世界内戦〉下の文芸時評」 第117回にて

内藤千珠子著『「アイドルの国」の性暴力 増補版』をお取りあげいただきました。岡和田先生、書評紙ご担当者様、ありがとうございました。

……ジェンダーやエスニシティをめぐる多様性を「額面化」した価値観として掲げながら、他方で歴史認識に関する議論に関心を示さない「企業文化」が浸透しているのならば、極右による歪曲を跳ね返せるよう、歴史認識をも我がこととして掘り下げてゆく必要があるのではないか。この点で重要なのは、表象分析と実証史学の交点を掘り下げる、内藤千珠子『「アイドルの国」の性暴力 増補版』(新曜社)だろう。本連載の第79回で取り上げた親本を再刊するにあたり、補章「ジャニーズ文化と見えない性暴力――帝国のファンタジーを読み解く」が加筆された。ジャニーズのファンである「少女たち」は、「ジェンダーやセクシュアリティの規範を越境する、クィアな少年たちの身体を性的に消費する」とき、「差別的な社会の息苦しい秩序を踏み破る開放感を得ることができ」た。そこから内藤は、こうした開放感を可能にするファンタジーが、比喩の域を超えた「帝国的性暴力」の構造を有していたからこそ、ジャニー喜多川による性暴力が見て見ぬふりをされてきたと述べるのである。論述の過程で目を惹かれるのは、ジャニーズ事務所の性暴力を告発してきた鹿砦社刊行本等のスキャンダラス・ジャーナリズムが、不正を糺すという建前を取りながらも、「ホモフォビアとミソジニーの結託した情動的な傾き」を隠そうともせずに「性暴力を告発するという姿勢を取りながら、言説上には被害者に対するセカンドレイプの暴力」と化していることを、的確に指摘している点だ。......

 

9784788518551

『「アイドルの国」の性暴力 増補版』

 内藤 千珠子 著
 2024/08/28
 ISBN 9784788518551
 4-6判・320ページ
 定価 3,410円(本体3,100円+税)
 在庫 在庫あり

 

 

 

 

書評 ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著『「それ」のあったところ』@毎日新聞 2024年11月9日付

ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著
西野 路代 訳
『「それ」のあったところ』

の書評が毎日新聞 2024年11月9日付にて掲載されました。評者は渡邊十絲子先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様にこころよりお礼申しあげます。

…………副題は「《ビルケナウ》をめぐるゲルハルト・リヒターへの4通の手紙」。著者である哲学者が画家のアトリエで、のちにこの大作となる空白のカンヴァスを見たところから書簡は始まる。強制収容所での恥ずべき行為を、人類は語りつくしてはいない。それどころか、問題の核心に迫るための言葉もまだ発見できていないのかもしれない。「いまだ語りえぬもの」を現前させるために、画家は空白のカンヴァスを前に考え始める。哲学者の注意深い目が制作過程に併走してそれを追いながら、画家に新たな問いを投げかける。……

毎日新聞 今週の本棚


……

 

Photo_20241105104401  「それ」のあったところ
 《ビルケナウ》をめぐるリヒターへの4通の手紙

 著者 ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著
 西野 路代 訳

 出版年月日 2024/09/05
 ISBN 9784788518568
 4-6判・定価 5,390円(本体4,900円+税)
 在庫あり

書評 ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著『「それ」のあったところ』@朝日新聞 2024年11月2日付

ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著
西野 路代 訳
『「それ」のあったところ』

の書評が朝日新聞 2024年11月2日付にて掲載されました。評者は椹木野衣先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様にこころよりお礼申しあげます。

「書くことは野蛮」を越えた4枚

……事実、世界最高峰と称されるドイツの画家、ゲルハルト・リヒターでさえ、アウシュヴィッツを「描く」のに、題材となる写真と出会ってから60年もの時を要した。リヒターが重い腰をあげるきっかけとなったのは、本書の著者であるフランスの哲学者ディディ=ユベルマンによるアウシュヴィッツ論だった。……


朝日新聞「好書好日」ページへ

 

 

Photo_20241105104401  「それ」のあったところ
 《ビルケナウ》をめぐるリヒターへの4通の手紙

 著者 ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著
 西野 路代 訳

 出版年月日 2024/09/05
 ISBN 9784788518568
 4-6判・定価 5,390円(本体4,900円+税)
 在庫あり

書評 三浦耕吉郎著『自然死(老衰)で逝くということ』@毎日新聞24年11月2日付

三浦耕吉郎著

『自然死(老衰)で逝くということ グループホーム「わたしの家」で父を看取る』

が毎日新聞2024年11月2日付、書評欄に掲載されました。

評者は星野智幸先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまに、こころよりお礼申し上げます。

 

……著者が父の死に際して探ったのが、「みずからの死の時期を自己決定する必要のない<死に方>」だ。それは過剰な延命治療に任せてしまうのでもなく、といって死についての意思決定は本人にあるとする尊厳死の考え方に立つのでもない、死のあり方だ。

 冒頭に近いこのくだりを読んだだけで、私は衝撃を受けた。過剰な医療的管理に理不尽な気分を募らせた私は、尊厳死を認めるほうへ思いつめていたから。その根っこには、病院の求める治療の許可を、母本人ではなく私たち子どもが与えた結果、母が常々強く拒絶していた「寝たきり管だらけ」を強いているという自責の念がある。病院の求めるインフォームド・コンセントは、「生じた結果について医師を免責することこそが主目的とされてきた」。著者が目指すのは、誰が責任を負うわけでもない、生の終わりである。......


 毎日新聞「今週の本棚」へ

 

9784788518520  自然死(老衰)で逝くということ
 グループホーム「わたしの家」で父を看取る

 三浦 耕吉郎 著
 
2024/08/31
 ISBN 9784788518520 
 四六判232頁 定価 2420円
 在庫 在庫あり

 

書評 好井裕明著『原爆映画の社会学』の書評@図書新聞2024年11月2日付

好井裕明著『原爆映画の社会学』の書評が、図書新聞2024年11月2日付に掲載されました。評者は片岡佑介先生です。評者の先生、掲載紙ご担当者さま、ありがとうございました。こころよりお礼申し上げます。


……本書の関心は、映画や博物館の展示、または体験語りにおける「語り口」や「方法」の批判的読解にあり、とりわけその定型化・形骸化を問題視している。被爆者の語りが私たちの胸を打つのは、大文字の思想が伝わるからではなく、原爆投下の前後も続いてきた徹底的に個でしかあり得ない生そのものの重みに圧倒されるからだろう。だからこそ、毎年八月六日・九日を頂点に反復されるマスメディアによるマンネリ化した報道を、著者は批判する。なぜなら、そこでは時に矛盾やどす黒い情動をも孕んだ個々の被爆者の語りが、往々にして原爆被害の悲惨さや反戦平和などの分かりやすく啓蒙的なメッセージに昇華されてしまうからだ。本書が、読者に効率よくシーンを説明する記述を大きく逸脱し、口調や言い淀み、仕草や表情まで「書き起こし」ているのは、既存の分析枠組みからは零れ落ちる細部にこそ、被爆体験の固有性を聴き取る手がかりが隠されていると考えるからだろう。

この点で本書の白眉と言えるのは、TVドキュメンタリーを取り上げ、出演者の語りとそれを体良くまとめようとする番組の方向性を比較検討した本書の後半部である。DVDや配信で容易に視聴可能な商業映画に比べて、TVドキュメンタリーは論じられることが少ないことに加え、特に九・十章は、本書全体の骨子を理解する上でも重要であるため、場合によってはここから読み進めるのも良いかもしれない……

9784788518513_20241025115101
 原爆映画の社会学
 被爆表象の批判的エスノメソドロジー
 好井 裕明 著
 社会学
 2024/08/08
 ISBN 9784788518513
 4-6判・416ページ
 定価3,960円
 在庫 在庫あり

書評 好井裕明著『原爆映画の社会学』  「週刊読書人」2024年9月13日付に掲載

好井裕明著『原爆映画の社会学』 の書評が「週刊読書人」2024年9月13日付に掲載されました。評者は福間良明先生。ご書評いただきましたこと、こころよりお礼申し上げます。

……それにしても、なぜ映画なのか。映画は本質的に「娯楽」である。「原爆」を扱った映画に限っても、『二十四時間の情事』のような恋愛映画、『はだしのゲン』のような少年もの、『ゴジラ』シリーズをはじめとする特撮怪獣映画など、「愉しめる」作品はじつに多い。『ひろしま』『黒い雨』といった当事者の苦悶に焦点を当てた作品もあるが、それらとて、ある種の「感動」と無縁ではない。愉しみのある日常に、「反戦」「反核」「継承」をめぐる思考をいかに織り込み、深めていくのか。言い換えれば、「啓発の回路」をそれのみで閉ざすのではなく、日常の世界にいかに接続するのか。こうした問題意識から、「原爆映画」を読み解いたのが、本書である。……



9784788518513
 原爆映画の社会学

 被爆表象の批判的エスノメソドロジー

 著者 好井 裕明 著
 ジャンル 社会学
 出版年月日 2024/08/08
 ISBN 9784788518513
 4-6判・416ページ
 定価 3,960円(本体3,600円+税)
 在庫 在庫あり

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この本に関するお問い合わせ・感想

紹介 柳原敏夫・小川晃弘 編『わたしたちは見ている』@東京新聞2024年7月27日付

東京新聞2024年7月27日付、書評欄「特選」にて、

 

市民が育てる「チェルノブイリ法日本版」の会
柳原敏夫・小川晃弘 編
『わたしたちは見ている 原発事故の落とし前のつけ方を』
をご紹介いただきました。


原発の推進・反対にかかわらず、日本が原発を続けるなら現実的な救済法が必要だ―として2018年に結成された市民団体がまとめたブックレット。

団体名にあるチェルノブイリ法は旧ソ連で1986年に起きた原発事故後に成立。国際人権法の観点で、放射能災害から命や健康を守ろうと「避難の権利」「移住の権利」を保証しており、今も関係国が受け継ぐ。

日本の被害者救済に人権の視点が欠けているとしてチェルノブイリ法の日本版が必要だと訴える。表紙は趣旨に賛同する漫画家ちばてつや。小出裕章も寄稿。



9784788518506

 『わたしたちは見ている 原発事故の落とし前のつけ方を』

 市民が育てる「チェルノブイリ法日本版」の会 .
 柳原敏夫・小川晃弘 編
 環境・震災・都市・地域社会
 出版年月日 2024/05/25
 ISBN 9784788518506
 A5判88頁・定価 700円(本体636円+税)
  在庫あり

書評 関 礼子 編『語り継ぐ経験の居場所』@図書新聞 2024年7月20日付

 

関 礼子 編 『語り継ぐ経験の居場所』 の書評が、「図書新聞」2024年7月20日付に掲載されました。
評者は平井勇介氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

……人はさまざまな経験をする。その経験には、否応なく加害/被害の側面もある。自分(たち)のために直接的/間接的に他者に理不尽な経験を強いたこと、他者や社会から理不尽な経験を強いられたこと、誰もが身に覚えがあるものだろう。そうした数々の経験を自分なりに生かして、人とのかかわり方や失敗を回避する方法、理不尽な状況への対処の仕方などを生み出し、よりよい生き方を目指そうとする。このような人びとの創意工夫の根底にある「経験」を人類が共有できれば、社会はきっと良い方向に進んでいくのかもしれない。しかし、さまざまな理由で「経験」は語られない/伝わらないことが多い。とくに本書がとりあげているような凄惨な「経験」や理不尽な「経験」を語ることは、それだけで辛いことであろうし、語ったとしてちゃんと理解されることなどないし、異なった解釈(ときに暴力的な解釈)をされることも往々にしてある。聞く側の態勢が整っていないようにみえることがほとんどであろうし、聞く側にとって凄惨な「経験」を聞くことはしばしば「生理的な嫌悪」(7章)を抱くことでもあろう。語る側/聞く側のさまざまな思いが交錯するなかで、「経験」を語る/聴くということは想像以上に難しい。

 それでも本書は、そうした「経験」が語り継がれることの可能性を模索する。……

 

 

9784788518308 語り継ぐ経験の居場所
排除と構築のオラリティ

関 礼子 編
松村 正治・青木 聡子・高﨑 優子・
丹野 清人・廣本 由香・飯嶋 秀治 著

2023/11/05
ISBN 9784788518308
四六判280頁・定価 3190円(本体2,900円+税)
在庫 在庫あり

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