カテゴリー「書評」の記事

書評 ジョルダン・サンド著『東京ヴァナキュラー』(池田真歩訳) 長崎新聞、熊本日日新聞他 2021年12月12日付

ジョルダン・サンド著『東京ヴァナキュラー』(池田真歩訳)の書評が、長﨑新聞、熊本日日新聞、静岡新聞ほか共同通信配信にて 2021年12月12日付に掲載されました。

評者は安藤礼二氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。


 

......「路地」に残された日常の生活として、またそこに残された無用の「もの」(建造物)として、東京の「ヴァナキュラー」をあらためて見出してきたのは、実はすべて外部の眼差しをもった生活者たちであり、観察者たちであった。有用性や功利性にもとづいた都市の再開発に対して、「日常性の政治」を実践することで抗い、都市の「無意識」が生み落とした生活や「もの」を守ろうとしてきた者たちであった。......

「ヴァナキュラー」を生みだすのは、固定された国家の文法ではなく、つねに変化しながら生成を続ける市民たちの文法だったのである。刺激的な都市論であると同時に優れた運動論であり芸術論でもある。

 

 

9784788517387
著者 J.サンド
池田 真歩
ジャンル 社会学
出版年月日 2021/09/24
ISBN 9784788517387
判型・ページ数 4-6・304ページ
定価 3,960円(本体3,600円+税)
在庫 在庫あり

紹介 『子ども観と教育の歴史図像学』『「アイドルの国」の性暴力 』@図書新聞 2021年12月8日付

図書新聞 2021年12月8日付「21年下半期 アンケート」、
奥 ゆたか先生に、内藤千珠子著『「アイドルの国」の性暴力』をお取りあげいただきました。
「アイドルと慰安婦。とてもセンシティブな話題に思えて身構えたが、提起するのは女性たちの分断だ・・・・・・ 」

また野上暁先生に、北本正章著『子ども観と教育の歴史図像学』をお取りあげいただきました。
「......多くのカラー図像を口絵に配し、本文でも欧米の子ども絵画を多数解読しながら、子ども観の変遷や新しい子ども学の展望を説く、アリエスの『〈子供〉の誕生』に比肩すべき画期的な大著である」

ご紹介くださいました先生方、書評紙ご担当者様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。



9784788517349_20211215165801  「アイドルの国」の性暴力
著者 内藤 千珠子 著
ジャンル 文学・エッセイ
出版年月日 2021/08/05
ISBN 9784788517349
判型・ページ数 4-6・288ページ
定価 3,190円(本体2,900円+税)
在庫 在庫あり



 

 

9784788515000 子ども観と教育の歴史図像学
新しい子ども学の基礎理論のために

著者 北本 正章 著
ジャンル 歴史・伝記
子ども・家庭・教育・学校
出版年月日 2021/12/01
ISBN 9784788515000
判型・ページ数 A5・560ページ
定価 7,920円(本体7,200円+税)
在庫 在庫あり




 

書評 森 正人 著『文化地理学講義』@朝日新聞11月27日付

森 正人 著『文化地理学講義』の書評が、朝日新聞11月27日付の書評欄に掲載されました。
評者は生井英考氏。書評くださいました先生、掲載誌ご担当者様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。




・・・・・・本書はこうして生まれた「人間主義地理学」の系譜が地理学内外と折衝し、特に90年前後からの文化論的転回とグローバル資本主義の拡大の中でいかに理論的に展開してきたかを総覧する。理論に意欲的な著者の志向を反映して繰り広げられる文化地理学の学説史は、さながら現代思想のパノラマのように壮観だ。
・・・・・・
 志賀重昂(しげたか)『日本風景論』から現代の新海誠アニメまで、本書が想起させる「日本的風景」は枚挙にいとまがないだろう。
 かつて教科書はその道の大家が描く学知の結晶のごとく見なされたものだが、変化の大きな近年ではむしろ若手が任をになうにふさわしいように思う。同様に本書のような教科書も、高度成長とバブル期以来の景観の激変を目撃し、責めを負う中高年世代にこそ読まれてしかるべきだろう。

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9784788517394 『文化地理学講義』
〈地理〉の誕生からポスト人間中心主義へ
著者 森 正人 著
出版年月日 2021/09/24
ISBN 9784788517394
判型・ページ数 4-6・296ページ
定価 2,970円(本体2,700円+税)

書評 渡辺恒夫著『明日からネットで始める現象学』@「こころと文化」2021年9月

渡辺恒夫著『明日からネットで始める現象学』の書評が、「こころと文化」2021年9月に掲載されました。評者は大塚公一郎氏。ご書評くださいました先生、掲載誌ご担当者様に心よりお礼申し上げます。

 

・・・・・・本書の意義のひとつは、現象学、とくに、フッサールの現象学が、いまなお、いや、いまだからこそ、現代のわれわれが直面するこころの病いを含む諸問題、たとえば、心理学、精神医学、医療福祉領域、人文科学、社会科学領域における諸問題に取り組む際にどれだけ貴重で有用な手がかりを提供するかを、「高校生でもわかるどころか、高校生でも研究できるやりかた」で鮮やかに示したところにある。


本書では、現象学超入門とされた二つの章があり、ほとんど予備知識を持たない読者も現象学のエッセンスを理解できるよう配慮されている。そもそもフッサールの現象学は、心理学として出発しながら、その後の彼の学説の展開のなかで、超越論的現象学と心理学的現象学というべき、区別されるべき二本柱に分岐したことが強調される。本書でいう現象学とはもっぱら現象学的心理学とされ、現象学的精神医学の難解さとその普及の限界は、主に、哲学としての超越論的現象学の重視と、心理学としての現象学の軽視にあったのではないか著者は指摘する。とはいえ、フッサールが超越論的現象学の二つの重要な方法とした、現象学的還元(著者によって、反省によって、「思い込み」を「現象」という確実な知識へと還元することときわめて明快に定義される)と本質観取(前者によって得られた認識が、いつどこでも通用するという意味で普通妥当性があるか否かの確認とされる)は、現象学的心理学にとっても主要な方法となる。
 本書に限らず、氏の著作の説得力と魅力は、自身が創案した現象学的心理学の方法を、実際のデータに適用してみて、その結果から妥当性の検証をしてみせることにある。上記の二つの方法は、著者自身が夢日記をつけることによって得た一連の夢記録に適用される。詳細は本書で確認してもらいたいが、その成果は「夢は現象学への王道である」という氏のかねてからの主張を裏づける見事なもので、もって、氏を斯界の第一人者とするゆえんである。

 本奮の21世紀に生きる私たちのこころの問題に関連したアクチュアリティをさらに高めているのは、第Ⅱ部応用編の第5章現代へ向かう現象学の展開(一)哲学篇のハイデガーからリクールまでの5-3解釈学的転回の時代(1960年~2006年)のあたりから、第6挙「コミュ障」の当事者研究―インターネット相談事例をもとに―かけての展開である、「解釈学的循環」、「地平融合」といった概念で名高いドイツの哲学者であるガダマーの解釈学的現象学やフランス現象学の最後の巨匠といわれたリクールのナラティブ現象学のエッセンスが、著者独自の翻案によって、インターネット上に流布している「コミュ障」の当事者の相談のトピックスとそれに対するレスのテクスト分析のための方法へと応用される。・・・・・・

本誌の読者は、本書の問題意識と主張が、こころの問題とその対処(治療、癒し)をめぐって、近年、注目されるようになった、そして、現在もますます活発な議論がなされている主要ないくつかのトピックスに触れていることに気づかれるだろう。たとえば、一連の当事者研究の成果を取り入れたかたちでの精神医療や心理療法に生じつつある変化(たとえば、オープンダイアローグもそれに含まれる)。「こころの病い」の医療化、医学化、福祉化に対する批判などがあげられる。また、COVID-19のパンデミック下で、急速に需要と関心が高まった遠隔心理療法の望ましいあり方についても、本書は示唆を与えてくれるものである。幅広い読者にお薦めしたい好著である

 

9784788517295 明日からネットで始める現象学
夢分析からコミュ障当事者研究まで
渡辺恒夫著
出版年月日 2021/06/20
ISBN 9784788517295
四六判224頁
定価 2,310円
在庫 在庫あり

 

 

 

対談 小平麻衣子 内藤千珠子 「文学的想像力の可能性」@図書新聞 2021年11月13日付

対談 小平麻衣子 内藤千珠子 「文学的想像力の可能性」が、「図書新聞」2021年11月13日付に掲載されました。内藤千珠子著『「アイドルの国」の性暴力』をめぐっての対談です。小平先生、内藤先生、「図書新聞」ご担当者様、ありがとうございました。こころからお礼申し上げます。

・・・・・・

小平 たとえば、女性として承認される規範的なあり方を演じていくのがいいか、それともそれを拒否するのがいいかというのは、一つの主張として述べることはできません。何がいいか悪いかと言うことも、個別の現実と離れた二元的な抽象思考に与してしまうことになるわけで、それを突破する前向きな力はある瞬間の、突発的なものとしてしか現れません。しかし、それが一つの大きな塊になったときには、ある制度として他のものに抑圧的に働くこともありますので、そうした事情を的確に汲み取るために、曖昧にも見えるけれど繊細な語りを提示してくれるのが小説の力だと思います。本書で特に面白いのは、やはり小説の読み込み箇所であって、桐野夏生や松田青子をはじめとする現代作家の小説から、戦時中に移動し続けた作家林芙美子や、女性革命家の金子文子まで、具体的なテクストに深く入り込みながら意味を解きほぐしています。いろいろ考えさせられ、読むのに時間がかかった一冊でしたね。

内藤 曖昧なものを小説の言葉を通して、文学研究でなければできないという説得力を持って実践できるように努力を重ねたいです。「アイドル」という記号も、「慰安婦」という記号も、曖昧な部分を考えることで開かれる地平があるように感じてきました。明快な立場をもたないとなかなか語りにくい主題ですが、いずれも、文学的想像力のなかで考えたかった。最初は、「慰安婦」という記号を自分自身の日常につなげて考えたいという主題がありましたが、その過程で現代のアイドルが地下アイドルを経由して転換し、若い女性たちにとって、日常のなかに現われる物語の次元が更新されていることに気づきました。問題を回避せず、自分にとっての日常の現場のレベルで考察することを可能にするフレームをつくるためにおどうすればいいか、自分なりに覚悟を持って思考を積み重ねてきたように思います。

 人が一生懸命に生きようとしたときに、今あるシステムは自分の目の前にある物語に反映されて、どう生きるのか、あるいは生きさせられるのかを左右しますよね。女性の場合は自発性も含めて、娼婦的なイメージを分有させられ、性暴力を内包した物語が自分を取り巻いている。社会にも暗黙の前提として共有され、さまざまな属性や立場を持った人たちが、互いに目を逸らしあっている。それをいかに挑発的なかたちで問題化するか考え、「アイドル」と「慰安婦」という記号をつなぐことで可視化し、共有していく地点をつくりだしたいという思いがありました。今回、フェミニズムと文学が交差する地点でお仕事を重ねてこられた小平さんと一緒に語り合えたことで、視界が開け、さらに考えたいことが広がりました。

・・・・・・

 

9784788517349_20211110161701

著者 内藤 千珠子
ジャンル 文学・エッセイ
出版年月日 2021/08/05
ISBN 9784788517349
判型・ページ数 4-6・288ページ
定価 3,190円(本体2,900円+税)
在庫 在庫あり

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書評 中山 元 著『わたしたちはなぜ笑うのか』@北國新聞 2021年10月30日付 ほか

中山 元 著『わたしたちはなぜ笑うのか』の書評が、北國新聞 2021年10月30日付 に掲載されました。同記事は琉球新報、沖縄タイムズ紙 下野新聞ほかに掲載されました。評者は清水義範氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さま、ありがとうございます。こころよりお礼申し上げます。

 

生の本質につながる原理

・・・・・・

(しかしながら)本書を読んで笑いが完全に解明されることはない。これは非常にまじめな書物であり、安易な結論にはとびつかないのだ。笑うことの原理は広くて深くて生きることの本質につながっている。だから笑いへの思索が結論にたどり着くことはないのだ。

 本書のなかでは近代の笑いについて六つの理論が考察されているが、よくわかるひとつの理論に到達することはない。真面目な考察とはそういうものだ。
 
 本書の最終章は「自由と治療の手段としての笑い」である。著者が、笑いには力がある、と考えていることがここでもわかる。そして、マスクで笑いを隠さなければならない今だからこそ、笑いの力を信じてほほ笑みを忘れないようにしようという著者の主張は、何より力強く我々の心に訴えかけてくるのである。笑いは力だったのだ。





9784788517356

著者 中山 元
ジャンル 哲学・思想
出版年月日 2021/08/05
ISBN 9784788517356
判型・ページ数 4-6・226ページ
定価 2,530円(本体2,300円+税)
在庫 在庫あり

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書評 ジョルダン・サンド著『東京ヴァナキュラー』@朝日新聞 2021年11月6日付

ジョルダン・サンド著『東京ヴァナキュラー』(池田真歩訳)の書評が、朝日新聞 2021年11月6日付に掲載されました。
評者は戸邉秀明氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

・・・・・・1980年代、東京では歴史を再発見するいくつかの試みが、ほぼ同時に始まる。下町の「暮らしぶり」を聞き取り、「まちづくり」に活かした「地域雑誌 谷中・根津・千駄木」。街路の隅に佇む過去の痕跡が、「無用の長物」ゆえに宿す面白さを捉えた赤瀬川原平たちの路上観察学。庶民の生活史を中心に据えた江戸東京博物館の展示構想。

 本書はこれらを、人々が都市の日常に改めて価値を見いだし、抵抗の糧とする技法として読み解く。議論の起点を、反戦運動が占拠した69年の新宿西口地下広場に置くのは、そのためだ。この時、市民を排除すべく、「広場」は「通路」へ改称された。儀礼や記念碑で公衆の一体化を促す広場を奪い合う闘争の仕方は、ひとたび挫折する。・・・・・・
日常や周縁も、脚光を浴びればすぐに高値がつき、出版や観光で消費された。だが当事者たちはジレンマを承知でメディアを利用し、「おどけつつ」「生真面目に」訴えて、「成功を見た叛乱」となった。著者の80年代評価は、消費文化論とは一線を画す。・・・・・・

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9784788517387

  

著者 J.サンド
池田 真歩
ジャンル 社会学
出版年月日 2021/09/24
ISBN 9784788517387
判型・ページ数 4-6・304ページ
定価 3,960円(本体3,600円+税)
在庫 在庫あり

書評 猿谷弘江著『六〇年安保闘争と知識人・学生・労働者』@2021年11月6日付

の書評が、「図書新聞」2021年11月6日号に掲載されました。評者は小杉亮子氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

・・・・・・著者は、六〇年安保闘争に参加した人びとのなかでも、知識人、学生、労働者に着目する。知識人は、清水幾太郎や久野収をはじめ、さまざまな運動組織や団体をつくり、声明を出し、抗議行動の現場に駆けつけた。学生運動では、ブントが主導する全学連主流派の国会突入は、多くの人びとの耳目を安保改定へと引きつけたし、全学連反主流派も多くの学生をデモ等に動員した。労働運動では、先ほど触れたとおり、大規模なストライキが敢行された。

 本書が論じるのは、六〇年安保闘争で、この三者がひとつの大規模な社会運動をどのようにつくりあげたか、ということではない。そうではなく、六〇年安保闘争において、これらの異質でまじわりがたい社会運動が、いかにそれぞれ固有の行動をとっていたか、というところにこそ関心が向けられている。これが本書の最大の特徴である。六〇年安保闘争はひとつの大規模な運動ではなく、「複数の運動が「たまたま」といえるタイミングで「接合」(conjuncture)した」(本書二六七頁)結果として生じた運動だったという。六〇年安保闘争の「脱神話化」を試みていると表現したのは、この点である。

・・・・・・ただ、本書を読み通したあとも、六〇年安保闘争を、知識人、学生、労働者という、複数の異なる社会運動がたまたまといえるタイミングで接合して生じた現象だったと言い切っていいものだろうか、という疑問は残った。・・・・・・安保条約改定阻止国民会議という、六〇年安保闘争をコーディネートする立場のネットワークがあったことは著者も指摘しており、異質な運動のあいだにも接触点はあったといえる。・・・・・・異質な運動が闘争のなかで接触することによってなにが起きていたのかまで明らかにされてこそ、わたしたちは六〇年安保闘争をよりよく知ることができるのではないだろうか。



9784788517172  『六〇年安保闘争と知識人・学生・労働者』
  社会運動の歴史社会学

 著者 猿谷 弘江 著
 ジャンル 社会学 > 歴史社会学
 出版年月日 2021/03/31
 ISBN 9784788517172
判型・ページ数 A5・392ページ
 定価 5,500円(本体5,000円+税)
 在庫 在庫あり

書評 ジョルダン・サンド著『東京ヴァナキュラー』@日本経済新聞 2021年10月23日付

ジョルダン・サンド著『東京ヴァナキュラー』の書評が、日本経済新聞 2021年10月23日付に掲載されました。
評者は五十嵐太郎氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

日常生活に見る都市の記憶

・・・・・・著者は『帝国日本の生活空間』(2015年)でささやかなモノに注目しながら、近代日本の海外ネットワークを描いたが、本書でもモニュメントではなく、日常に密着したモノから東京の文化遺産や地域性の発見を考察している。
 その際、各章の題材もユニークだ。第一章は、1969年の新宿西口広場をめぐる闘争、第二章は下町の生活史を取材しつつ、コミュニティを可視化させたタウン誌「谷根千」の活動、第三章は都市において逸脱した「物件」を探索した路上観察学、そして第四章は復元された街並みや建築模型を大胆に導入した江戸東京博物館などの展示施設である。・・・・・・

著者がとりあげる「土着の」を意味するヴァナキュラーな経験主義は、都市の経験が抽象化されることへの抵抗である。これにシンパシーを寄せつつも、ただ賛美するわけでもない。下町が商品化されて、消費の対象にすり替わったように、ジレンマを抱えている。理論化も足りない。またノスタルジーとなった都合のよい過去としての生活展示は、政治の存在をぼかしてしまう。こうした難しい課題を抱えてはいるが、都市の「モニュメントなき遺産」の可能性を問うのが本書である。

書評 内藤千珠子著『「アイドルの国の性暴力』@島根日日新聞 9月28日付

内藤千珠子著『「アイドルの国の性暴力』

の書評が、「島根日日新聞」9月28日付、「十勝毎日新聞」9月24日付に掲載されました。評者は永江朗氏。書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

なんて刺激的な評論だろう。アイドルと慰安婦。イメージの異なる二つのものを同時に考えることで、隠されているものが見えてくる。題材は徳田秋聲の「縮図」や林芙美子の「浮雲」など戦中、戦後の小説から、桐野夏生の「路上のX」や松田青子「持続可能な魂の利用」など現代の小説まで。アイドルについて考えるとき慰安婦が補助線になり、慰安婦について考えるときアイドルが補助線になる。キーワードは「帝国的性暴力」である・・・・・・アイドルと慰安婦を考えるとき、戦時下の性暴力は平和時にも継続されていることに気付く。最初から最後まで居心地の悪さを抱えながら読んだ。すべての男は当事者である。


9784788517349_20211018151001 「アイドルの国」の性暴力
著者 内藤 千珠子 著
ジャンル 文学・エッセイ
出版年月日 2021/08/05
ISBN 9784788517349
判型・ページ数 4-6・288ページ
定価 3,190円(本体2,900円+税)
在庫 在庫あり

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