書評 林英一著『残留兵士の群像』@下野新聞 23年3月4日付 (共同通信配信)
『残留兵士の群像』の書評が「下野新聞」2023年3月4日付に掲載されました(共同通信配信)。評者は野上 元先生。
ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。
戦後社会の価値観相対化
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1972年の横井庄一、74年の小野田寛郎の帰国が有名である。かれらは、戦後が達成したものを見せつける相手として、あるいは戦後が失ったものをよみがえらせてくる相手だったのである。
しかし本書は、この2人に限らず、そして実像と表象の両方にまたがる丹念な調査により、すでに50年代、あるいは遅くとも60年代には彼ら「残留兵士」の表象化・偶像化は始まっていたとする。
・・・・・・本書が、戦後の支配的な価値観を相対化するアジア社会や家族からの視点を詳細に追おうとしているのも特徴的だ。
帰国・一時帰国した彼らを追うドキュメンタリー映像に記録された、親類の対立など、なんとも気まずい瞬間も本書は見逃さない。「戦後」は、それら全てを貪欲にかき集めようとしてきたのだった。
林 英一 著
残留兵士の群像
彼らの生きた戦後と祖国のまなざし
残留兵士の群像
出版年月日 2023/01/05
ISBN 9784788517936
4-6判352頁・定価3740円
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