書評 菅沼 明正 著『流転する伝統』@毎日新聞 2026年8月1日付
菅沼 明正 著『流転する伝統』の書評が、2026年8月1日付 毎日新聞に掲載されました。評者は橋本麻里氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
去る7月26日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は、奈良県の「飛鳥・藤原の宮都」を世界遺産に登録することを決定した。その報道に接した日本人の相当数が、「なるほど」と脳裏に描く風景があったはずだ。私自身、修学旅行と呼ばれる経験を、多数の国民が当たり前のように共有していることを疑問に思うことはなかった。だが「京都や奈良では文化財を鑑賞するもの」を前提とした文化財鑑賞のあり方は、すなわちそのような「社会制度」に基づいている。それがいったいどのようなものなのか、歴史社会学の立場から書かれた300ページ超の大著が解き明かす理由に、多くの読者は驚かずにいられないはずだ。
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だが、何より注目すべきは、菅沼が提示し、書名に掲げた「流転する伝統」という概念だ。身の回りの「伝統」とされるものが、国の政策や企業の経済活動のため、新たに「創られた」ものであることを提示したのは、イギリスの歴史家、エリック・ホブスボウムだ。何かと便利でつい頼りがちだが、菅沼は「ある時点でナショナルな『もの』や『こと』として形成された『伝統』が、長期にわたり人びとに受け入れられ続けるしくみについては、十分に検討されてこなかった」とその限界を指摘、新しい「伝統」が定着し続けるしくみを、「流転する伝統」と名付けた。
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菅沼 明正 著
社会学
出版年月日 2026/04/01
ISBN 9784788519213
A5判・360頁
定価4950円
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