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紹介 「毎日新聞」2026年5月4日付「今を生きる、今を書く:今読むべき一冊(その5)」=町田樹/67

J.ノエル・ミサ、P. ヌーヴェル 編、橋本一径 訳『ドーピングの哲学』を毎日新聞2026年5月4日付「今を生きる、今を書く:今読むべき一冊(その5)」にてご紹介いただきました。
「今を生きる、今を書く」は、町田樹氏による「アーティスティックスポーツ」論です。

 

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 かくして私たちがこれまで当たり前のように信じてきた「反ドーピング」や「フェアプレー」といった概念はいま、エンハンスト・ゲームズの登場によって大きく揺さぶられているのである。
 ゆえに私たちは、これらの概念を今一度見つめ直し、エンハンスト・ゲームズを評価する必要に迫られているのだが、そのような時だからこそ、「ドーピングの哲学――タブー視からの脱却」(新曜社、2017年)を今読むべき一冊としておすすめしたい。
 この本は、11年にフランスで出版された反ドーピングの取り組みを考察する論文集の翻訳本(翻訳者・橋本一径氏)である。書き手には、哲学者のジャン=ノエル・ミサ氏をはじめ、生物学者や社会学者、倫理学者、スポーツ医学者など、多岐にわたる専門家が名を連ねているのだが、彼らは本の副題にもあるように、従来タブー視されてきたドーピング撲滅運動の問題性をそれぞれの学術的見地から指摘し、スポーツのあり方を問い直す必要があると主張する。

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 私は正直に言って、著者らが構想する新しいスポーツのあり方には、議論が不十分な点が多々あると思っており、賛同できない。しかし、本書を読めば、ドーピングはもはや善悪の二元論で考えられるものではなくなっているということは、よくわかる。スポーツ界には、ドーピングは論外だとの見解を示す論者が多いが、これからはスポーツに携わるすべての関係者が、どこにドーピング行為とそうでない行為を分かつ線を引くのか、そもそも反ドーピングとはいかなる行為で、その背後にあるスポーツ精神(フェアプレーと言い換えてもよい)とはいったい何なのかを、絶えず真剣に議論し続けなければ、それこそスポーツが時代錯誤の文化に陥ってしまいかねない。皆さんはこの問題をどう考えるだろうか。
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>>>>>>毎日新聞紹介ページへ

 

9784788515468 『ドーピングの哲学
 タブー視からの脱却』

J=N. ミサ、P. ヌーヴェル 編 
橋本 一径 訳
社会学
出版年月日 2017/10/31
ISBN 9784788515468
四六判・326頁
定価4730円

 

 

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