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2026年5月

書評  菅沼 明正 著『流転する伝統』@東京新聞 2026年7月4日付ほか

菅沼 明正 著『流転する伝統』の書評が、2026年7月4日付 東京新聞ほか、「千葉日報」(5/26)、「沖縄タイムス」(5/23)に掲載されました。(共同通信配信) 評者は成田龍一氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 1984年生まれの歴史社会学者の350㌻を超える大著で、副題は「修学旅行と文化財鑑賞の歴史社会学」とある。考察されるのは、京都や奈良の名所旧跡、史跡、あるいは古い社寺やそこに伝わってきた宝物が文化財とされ、それを鑑賞するという態度が成立・普及する過程である。

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 背景には伝統文化とは何かという問いがあり、国民国家の下でいかに人々を結び付けるのに機能してきたのかという視点がある。明治期の文化財政策による方向付け、大正期における鉄道網の発達とそれに伴う旅行機会の増大、そして戦時期ー戦後期ー高度成長期における人々の文化財鑑賞の様相をたどり、ナショナルアイデンティティーのありかを明らかにする。

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9784788519213_20260507093401 『流転する伝統
修学旅行と文化財鑑賞の歴史社会学』


菅沼 明正 著
社会学
出版年月日 2026/04/01
ISBN 9784788519213
A5判・360頁
定価4950円

◎新曜社<新刊の御案内>■メール版 第264号■

2026年4月30日発行

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◎新曜社<新刊の御案内>■メール版 第264号■
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◇トピックス
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〇書評情報

有賀 ゆうアニース 著『「混血児問題」の歴史社会学 戦後日本の人種的境界』の書評が、2026年3月27日付「週刊読書人」に掲載されました。評者はウォント盛 香織氏。
https://shin-yo-sha.cocolog-nifty.com/blog/2026/04/post-caa790.html

巽 美奈子 著『〈栄養〉の誕生』の書評が、2026年4月18日付日本経済新聞に掲載されました。評者は阿古 真理氏。
https://shin-yo-sha.cocolog-nifty.com/blog/2026/04/post-9fd464.html


巽 美奈子 著『〈栄養〉の誕生』の書評が、2026年4月26日付京都新聞に掲載されました。評者は畑中 三応子氏。
https://shin-yo-sha.cocolog-nifty.com/blog/2026/04/post-378a79.html


評者の先生方にはこころよりお礼申しあげます。ありがとうございました。

 


◇近刊情報
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2026年5月28日発売予定
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ネット世論の構造
─文化進化論・ソーシャルデータ・学習実践共同体
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b676454.html
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木村 忠正 著
A5判並製440頁・本体5000円+税
ISBN 978-4-7885-1923-7 C3036
ジャンル=社会学


ヒトはなぜ炎上に参加し、フェイクや分断はいかに生まれるのか。それはネット固有の問題ではなく、人類のモラルと集団性に根差す現象だ。進化論や大規模ソーシャルデータ分析、そして「累積的文化学習論」から解く、ネット世論の動因と日本社会の課題。

* 好評既刊『ハイブリッド・エスノグラフィー』の著者による、ネット世論研究の集大成。

著者=立教大学社会学部教授


著者関連書
『ハイブリッド・エスノグラフィー』
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b455407.html

 

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編集後記


 仕事机のパソコンの入れ替えに伴うデータの引き継ぎ。そんな気の重い作業を「手伝って」くれたのはAIだった。手順に困ったとき、正確な検索ワードがわからなくても、曖昧な問いかけに答えを返してくれる。その便利さは確かだ。

けれど一方で、AIはあまりにも堂々と「嘘」をつくことがある。以前、自社のHPに「〇〇という本を探している」と問い合わせがあった。著者名は確かにうちから何冊も出している方だし、タイトルもいかにも「ありそう」なもの。だが、どれだけ調べてもそんな本は存在しない。学会誌の論文ですらなかった。結局、お客様にどこでその本を知ったのか尋ねてみると、「AIが教えてくれた」という答えが返ってきた。

実際には存在しない、幻の一冊。 AIは一体どうやってこの「嘘」を学習したのだろうか。驚くことに、こうした事例はすでに数件起きている。これからも「幻の本」を探す声は、増えていくのかもしれない。


『生成AIを活用したレポート・論文の書き方』(伊藤貴之/著、慶應義塾大学出版会)


 そんな中、営業先の東京大学生協本郷書籍部で「売れている」と紹介されたのが、伊藤貴之氏の著書だ。本書は、生成AIをあくまで「補助的に」使いながら、レポートや論文を編むための思考法をまとめている。問題を丸投げするわけでも、回答をそのままコピペするわけでもない。AIと何度も対話を繰り返しながら、いかに自分自身の思考を深めていくか──。 初版1万部が発売1ヶ月で重版されたというのも、世間の関心の高さの表れだろう。

 タイトルこそ「レポート・論文の~」となっているが、これは学生のためだけの本ではない。急速に広まったAIとの距離感に戸惑いを感じているすべての人に、ぜひ手に取ってほしい一冊だ。(H)


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◇奥付
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次回発行は2026年5月下旬頃を予定しております。

紹介 「毎日新聞」2026年5月4日付「今を生きる、今を書く:今読むべき一冊(その5)」=町田樹/67

J.ノエル・ミサ、P. ヌーヴェル 編、橋本一径 訳『ドーピングの哲学』を毎日新聞2026年5月4日付「今を生きる、今を書く:今読むべき一冊(その5)」にてご紹介いただきました。
「今を生きる、今を書く」は、町田樹氏による「アーティスティックスポーツ」論です。

 

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 かくして私たちがこれまで当たり前のように信じてきた「反ドーピング」や「フェアプレー」といった概念はいま、エンハンスト・ゲームズの登場によって大きく揺さぶられているのである。
 ゆえに私たちは、これらの概念を今一度見つめ直し、エンハンスト・ゲームズを評価する必要に迫られているのだが、そのような時だからこそ、「ドーピングの哲学――タブー視からの脱却」(新曜社、2017年)を今読むべき一冊としておすすめしたい。
 この本は、11年にフランスで出版された反ドーピングの取り組みを考察する論文集の翻訳本(翻訳者・橋本一径氏)である。書き手には、哲学者のジャン=ノエル・ミサ氏をはじめ、生物学者や社会学者、倫理学者、スポーツ医学者など、多岐にわたる専門家が名を連ねているのだが、彼らは本の副題にもあるように、従来タブー視されてきたドーピング撲滅運動の問題性をそれぞれの学術的見地から指摘し、スポーツのあり方を問い直す必要があると主張する。

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 私は正直に言って、著者らが構想する新しいスポーツのあり方には、議論が不十分な点が多々あると思っており、賛同できない。しかし、本書を読めば、ドーピングはもはや善悪の二元論で考えられるものではなくなっているということは、よくわかる。スポーツ界には、ドーピングは論外だとの見解を示す論者が多いが、これからはスポーツに携わるすべての関係者が、どこにドーピング行為とそうでない行為を分かつ線を引くのか、そもそも反ドーピングとはいかなる行為で、その背後にあるスポーツ精神(フェアプレーと言い換えてもよい)とはいったい何なのかを、絶えず真剣に議論し続けなければ、それこそスポーツが時代錯誤の文化に陥ってしまいかねない。皆さんはこの問題をどう考えるだろうか。
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>>>>>>毎日新聞紹介ページへ

 

9784788515468 『ドーピングの哲学
 タブー視からの脱却』

J=N. ミサ、P. ヌーヴェル 編 
橋本 一径 訳
社会学
出版年月日 2017/10/31
ISBN 9784788515468
四六判・326頁
定価4730円

 

 

書評 ポール・リクール 著 山野 弘樹 訳『イマジネーション講義』@2026年5月8日付「週刊読書人」

ポール・リクール 著 山野 弘樹 訳『イマジネーション講義 フィクションの現象学』の書評が、2026年5月8日付「週刊読書人」に掲載されました。評者は長門祐介氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 私たちは日常生活の中で「イメージ(想像)」や「イマジネーション(想像力)」という言葉を頻繁に用いている。「イメージで語らず本当のところを調べないと」「実家にいる犬が元気にしているところを想像する」「写真はイメージです。実際の商品と異なることがあります」「チェロの弓を持つときは卵を持つようなイメージで」「もっと他人に対する想像力をもつべきだ」というようにである。
 こうした用法を眺めていると「イメージ」には実にいろいろなものが担わされているのがわかる。

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 ポール・リクールの『イマジネーション講義 フィクションの現象学』(以下、「本書」)は、このように馴染み深くも複雑な「イメージ」と「イマジネーション」についての哲学史における位置づけを見定めたうえで、その哲学的なポテンシャルを再考するという野心的な講義の記録である。

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9784788519077
『イマジネーション講義
フィクションの現象学』


ポール・リクール 著 山野 弘樹 訳
哲学・思想
出版年月日 2026/01/11
ISBN 9784788519077
A5判・528頁
定価7150円

書評  菅沼 明正 著『流転する伝統』@朝日新聞 2026年5月2日付

菅沼 明正 著『流転する伝統』の書評が、2026年5月2日付朝日新聞に掲載されました。評者は吉田裕氏。評者の先生に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 文化財行政は、2018年の文化財保護法の改正によって、大きな転換期を迎えている。「文化財の保護」から「文化財で稼ぐ」政策への転換である。背景にあるのは、政府の「観光立国」路線だ。しかし、専門家から強い危惧の念が表明されているにもかかわらず、国民の関心はそれほど高くはない。文化財に対する理解を今後一層深めていく必要があるだろう。
 本書は、京都・奈良への修学旅行を主な事例として、「日本の文化的なナショナル・アイデンティティ」がどのようにして形成され、どのように受容され続けていったのかを解明した研究である。分析の対象は、政策や法律、旅行、出版メディア(旅行案内書・ガイドブック・旅行雑誌など)の三領域であり、領域間の相互作用に注目しながら、文化財の鑑賞という形をとった観光旅行が定着していくプロセスを緻密(ちみつ)に検証している。

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 学問上の貢献という点でいえば、本書の最大の成果は、エリック・ホブズボウムの「創られた伝統」概念を発展させたことだ。近代国民国家の文化的・思想的基盤の一つは、その国の「伝統文化」である。近年の研究は、その起源をたどることによって、「伝統文化」が近代化のある段階で形成された「創られた伝統」であることを明らかにしてきた。それに対して本書は、「伝統文化」の起源ではなく、それが社会の変化に対応しつつ受容されていくプロセスそのものに分析の焦点を合わせた。まさに「流転する伝統」である。

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>>>>>>朝日新聞書評ページへ

9784788519213_20260507093401 『流転する伝統
修学旅行と文化財鑑賞の歴史社会学』


菅沼 明正 著
社会学
出版年月日 2026/04/01
ISBN 9784788519213
A5判・360頁
定価4950円

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