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書評 ダーク・フォン・レーン 著『ハロルド・ガーフィンケル』 @図書新聞 2024年12月14日付

ダーク・フォン・レーン 著
荒野侑甫・秋谷直矩・河村裕樹・松永伸太朗 訳
『ハロルド・ガーフィンケル エスノメソドロジーの誕生と社会学のあゆみ

の書評が「図書新聞」2024年12月14日付に掲載されました。評者は上谷香陽先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様にこころよりお礼申し上げます。

1967年に『エスノメソドロジー研究』が出版された際、ガーフィンケルのエスノメソドロジー(以下EM)は、当時の社会学に当惑をもって受け止められた。それから半世紀余り、今日EMは、アメリカ社会学会に独自の部会を持ち、社会学の教科書にも取り上げられ、社会学としての地位をすっかり確立したかに見える。しかしそれでも著者フォン・レーンは、今日に至るまでEMは、社会学理論を無視しているとみなされ、社会学において周辺的なものとして扱われてきたと主張する。この「不適切な」扱いに異を唱えるため、著者が本書で改めて強調するのは、ガーフィンケルのEMが、社会学の根本問題「社会秩序はいかにして可能か」を基盤としており、社会的事実に関するデュルケームの「格言」をある意味、忠実に受け継いでいるという側面である。

 本書でとりわけ丁寧に論じられているのは、いかにして社会秩序を記述するのかという社会学的問題をめぐって、ガーフィンケルが、パーソンズやシュッツの議論に深く依拠しながら、かれらの着想をどのように転換していったのかということである。日常生活の社会秩序は、研究者の視点からは偶発的で、乱雑で、絶えず変化し、客観的に記述することが困難だとみなされてきた。それゆえ従来の社会学は、人々が日常生活で生み出す社会秩序の記述を、科学的な記述に置き換えようと模索してきた。これに対して彼は、従来の社会学のやり方では、生活世界における人々の経験とは異なる理論や概念を代わりに作り出しているに過ぎないと異を唱え、オルタナティブを模索し始めるのである……。
……
本書は、難解な文体で書かれたガーフィンケルの原著を理解する助けとなる。日本語訳も読みやすく、丁寧な訳注によって、読者は論の筋道を迷わず追うことができる。EMと会話分析の関係など、本書の議論であまりふれられていない論点を解説した「訳者あとがき」も読み応えがある。ガーフィンケルの社会学の理解を深めてくれる良書である。

9784788518445  ダーク・フォン・レーン 著
 荒野侑甫・秋谷直矩・河村裕樹・松永伸太朗 訳
 『ハロルド・ガーフィンケル』
 
出版年月日 2024/05/10
 ISBN 9784788518445
 4-6判292頁・定価4290円
 在庫 在庫あり

 

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