書評 関 礼子 編『語り継ぐ経験の居場所』@図書新聞 2024年7月20日付
関 礼子 編 『語り継ぐ経験の居場所』 の書評が、「図書新聞」2024年7月20日付に掲載されました。
評者は平井勇介氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
……人はさまざまな経験をする。その経験には、否応なく加害/被害の側面もある。自分(たち)のために直接的/間接的に他者に理不尽な経験を強いたこと、他者や社会から理不尽な経験を強いられたこと、誰もが身に覚えがあるものだろう。そうした数々の経験を自分なりに生かして、人とのかかわり方や失敗を回避する方法、理不尽な状況への対処の仕方などを生み出し、よりよい生き方を目指そうとする。このような人びとの創意工夫の根底にある「経験」を人類が共有できれば、社会はきっと良い方向に進んでいくのかもしれない。しかし、さまざまな理由で「経験」は語られない/伝わらないことが多い。とくに本書がとりあげているような凄惨な「経験」や理不尽な「経験」を語ることは、それだけで辛いことであろうし、語ったとしてちゃんと理解されることなどないし、異なった解釈(ときに暴力的な解釈)をされることも往々にしてある。聞く側の態勢が整っていないようにみえることがほとんどであろうし、聞く側にとって凄惨な「経験」を聞くことはしばしば「生理的な嫌悪」(7章)を抱くことでもあろう。語る側/聞く側のさまざまな思いが交錯するなかで、「経験」を語る/聴くということは想像以上に難しい。
それでも本書は、そうした「経験」が語り継がれることの可能性を模索する。……
語り継ぐ経験の居場所
排除と構築のオラリティ
関 礼子 編
松村 正治・青木 聡子・高﨑 優子・
丹野 清人・廣本 由香・飯嶋 秀治 著
2023/11/05
ISBN 9784788518308
四六判280頁・定価 3190円(本体2,900円+税)
在庫 在庫あり
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