書評 粟谷佳司著『表現の文化研究』@「図書新聞」2024年2月24日付
粟谷佳司著『表現の文化研究』の書評が「図書新聞」2024年2月24日付にて掲載されました。評者は長﨑励朗先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様にこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
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(さらに)本書は当時のフォークソング運動を取り囲む社会状況を市民運動などとのネットワークとして把握することを試みる。たしかに、鶴見や片桐をイデオローグとするフォークソング運動が市民運動と結びついていったのは半ば必然であった。鶴見が創設にかかわった「ベトナムに平和を!市民連合(通称べ平連)」に代表されるように、彼が目指したのはマスとしての大衆を個人として能動的に意見を発する市民の集団へと組織することだったからだ。フォークソング運動をこうした文脈の中においてみると、「フォークは大衆のもの」というような表現の意味も違って見えてくる。ここで念頭に置かれている大衆は明らかにマスとは異なる。個性を捨象された均質な塊というよりは顔を持った一人一人の人間というニュアンスを帯びているのだ。これは1960年代以降の日本文化史を貫くいわば「下向きの圧力」に正統性を与える大衆観である。大衆に寄り添うことを肯定的に捉えるムードを形作った要素の一端を垣間見ることのできる視点であると言えよう。
こうしてみると、本書のタイトルが『表現の文化研究』であることも理解できる。本書は鶴見らによる、大衆のマスからの分離というプロジェクトを引き継ぎ、表現の受け手としての大衆を、表現する主体として読みかえようとする試みなのだ
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表現の文化研究
鶴見俊輔・フォークソング運動・大阪万博
著者 粟谷 佳司 著
出版年月日 2023/09/15
ISBN 9784788517608
4-6判・248ページ
定価 3,410円(本体3,100円+税)
在庫 在庫あり
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