書評 麻生武著『6歳と3歳のおまけシール騒動』@毎日新聞2023年4月22日付
麻生武著『6歳と3歳のおまけシール騒動』
の書評が、毎日新聞2023年4月22日付にて掲載されました。ありがとうございました。評者は渡邊十絲子先生、ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様、こころよりお礼申し上げます。
……ブームになった「悪魔vs天使シール」の発売は1985年だが、この家族が住んでいた団地ではやや遅れて流行が始まり、この家族に到達したのは87年。ここから、流行が飽和するまでの約一年間と、その後ブームが消えていく数年間を克明に記録した、これは家庭内フィールドワークなのである。
遠い国、異文化の中でのフィールドワークも魅力的だが、「ひとの家庭」も他者にとっては一種の秘境である。物理的にそこへ行くことは容易でも、メンバーになれるわけではなく、プライバシーに立ち入るのも限界がある。著者は家族ならではの観察を詳細な記録に残した。観察者は著者とその配偶者であり、観察対象はふたりの子どもとその友人たちである。……
著者は、子どもたちの言動をさまざまな角度から分析している。「私有」の概念について、「欲望」の発生について。テレビアニメの放映や直接の交友圏ではない年上の子どもたちとの交流など、外部からの影響。そして、大流行の背景にあった、昭和末期のバブル景気という社会的・歴史的な環境。緻密で重厚なフィールドワークに裏打ちされた考察は、門外漢にとっても読みごたえのある、すばらしいものだ。……
6歳と3歳のおまけシール騒動
贈与と交換の子ども経済学
麻生 武 著
出版年月日 2023/03/13
ISBN 9784788518001
4-6判304頁・3960円
在庫 在庫あり
最近のコメント