書評 烏谷昌幸 著『シンボル化の政治学』@毎日新聞 2023年2月18日付
烏谷昌幸 著『シンボル化の政治学 政治コミュニケーション研究の構成主義的展開』
の書評が、毎日新聞 2023年2月18日付に掲載されました。評者は内田麻理香氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様、ありがとうございました。こころよりお礼申し上げます。
・・・・・・私たちはシンボルを活用し、ときに振り回されながら生きているのだが、このシンボル概念を政治学に用い、新たな理論的枠組みを提示するのが本書となる。
著者がこの理論を探究するきっかけは、2011年の福島第一原子力発電所事故だったという。広島、長崎の原子爆弾の被害を経験したはずの日本が、第二次世界大戦の敗戦から10年程度という短い時を経て、原子力政策に熱心な国となった。著者は、敗戦後の日本人にとって、原子力が広島、長崎の「恐怖のシンボル」から、豊かな未来をもたらす「希望のシンボル」へと転換したからではないかと指摘する。このようなシンボル化のプロセスを明らかにするのが「シンボル化の政治学」である。
・・・・・・政治という営みはシンボルを必要とする。小さな組織の内部では、特権を餌に忠誠心を植え付けることもできるが、集団を方向付ける場合は、集団の中に共通の認識や感情を生み出す必要が生じるため、シンボルが不可欠となるのだ。統治のためのシンボルとしては、記念日、音楽、旗、彫像、物語、儀式などがある。しかし、政治のシンボルは、決して政治権力者が一歩的に大衆を操作する道具ではなく、人々がメディア空間で可視化される表象や言説を利用しながら構築されたものなのだ。・・・・・・
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烏谷昌幸 著『シンボル化の政治学』
出版年月日 2022/10/04
ISBN 9784788517844
A5判・336頁
定価 3,520円(税込)
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