書評『東京ヴァナキュラー』@歴史学研究2022年11月号
ジョルダン・サンド(著), 池田 真歩(訳)
『東京ヴァナキュラー』 の書評が「歴史学研究」2022年11月号に掲載されました。評者は五十嵐太郎氏。ご書評くださいました先生、掲載ご担当者様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
・・・・・・なるほど、日本は、こうした記憶を残すことが苦手なのかもしれない。さらに言うと、西洋の都市空間と違い、特にモニュメントをうまく使いこなせないようだ。本書のサブタイトルは、「モニュメントなき都市の歴史と記憶」である。それゆえ、戦後の東京における「ありふれた物」や日常の生活に対するまなざしの系譜を掘り起こす。著者のジョルダン・サンドは、東京大学に留学した建築史の研究者であり、『帝国日本の生活空間』(岩波書店、2015年)でも、大きな歴史としての政治ではなく、椅子、衣服、草履、味の素など、日常のささやかなモノに注目しながら、近代日本において複雑に展開された国際的な文化の伝搬、すなわち海外のネットワークを描いている。本書も、モニュメントではなく、日常に密着したモノから東京の文化遺産や地域性の発見を考察したものだ。そうした意味において切り口は似ていよう。ただし、本書は20世紀後半の東京を対象としていることから、アヴァンギャルドなデザインが次々に登場した輝かしい日本の現代建築史に対し、別の視点を与えるものとして読むこともできる。・・・・・・
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