書評 I.ジャニス 著 細江達郎 訳『集団浅慮』@公明新聞 2022年10月10日
I.ジャニス 著 細江達郎 訳『集団浅慮』の書評が、「公明新聞」2022年10月10日付に掲載されました。
評者は池田謙一先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
ロシアがウクライナに侵攻してから7カ月。わずか数日で目的を達する意図であったとされるが、それは幻に過ぎず、世界的に多大な負の衝撃は続いたままである。
こうしたプーチンの意思決定の「失敗」はしかし、強権国家ならではの特質ではない。民主国家でも重大な誤りは起こりうる。原著出版40年後の『集団浅慮』邦訳の意義の一つはここにある。
どんな「ベスト・エンド・ブライテスト」と呼ばれる知的で思慮に富んだエリート集団を擁した民主的政府でも、ときに決断の大失敗を免れないのはなぜか。集団の心理学の広範な知見を踏まえ、膨大な歴史資料を一次資料にまで遡って精査して解き明かしたのが本書である。
・・・・・・
著書のジャニスは危機下の意思決定を熟知した著作(邦訳『リーダーが決断する時』首藤信彦訳、日本実業出版社)でも知られており、本書も長きにわたって政治学、社会心理学、経営学、組織論などの研究分野で重く受け止められてきた。スペースシャトル・チャレンジャー号打ち上げ失敗やトヨタ車暴走のリコール問題の解明にまで応用され、今後も広い範囲で有益である。多大な歴史的事件を扱う翻訳の苦労はいかばかりかと想像されるが、この良訳を歓迎したい。・・・・・・
『集団浅慮』
アーヴィング・L・ジャニス 著
細江 達郎 訳
2022/05/20
ISBN 9784788517707
四六判600頁・定価 4,730円
在庫 在庫あり
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