書評 山本めゆ著『「名誉白人」の百年』@図書新聞 2022年10月22日付
書評 山本めゆ著『「名誉白人」の百年』の書評が、「図書新聞」 2022年10月22日付に掲載されました。評者は佐藤千鶴子氏。ご書評くださいました先生、掲載誌ご担当者様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
・・・・・・日本人は、インド系や中華系のように労働者として導入されることはなく、南アフリカに定住者のコミュニティを形成することはなかった。一定規模の日本人コミュニティが南アフリカに出現するのは一九六〇年代に入ってからであり、その主たる構成員は日系企業の駐在員とその家族であった。しかも彼らは数年しか滞在しない一時滞在者であり、アジア系移民といっても、南アフリカ政府や社会との関わりにおいて、インド系や中華系とは異なる存在であった。
そんな日本人の企業駐在員や帯同家族が、アパルトヘイト期の南アフリカでの生活をどのように感じていたのかについて、当事者へのインタビューや日本人会のニューズレターなどをもとに再構成した第四章は本書のなかでもっとも読み応えのある内容となっている。
一九八〇年代に「名誉白人」の当事者として批判を受けた人びとへのインタビューには困難や制約が伴ったようであるが、著者はエクスパトリエイト・コミュニティ研究で使われる「泡(バブル)」の比喩を用いて、日本人コミュニティの現地社会との関わりの薄さや現地社会への関心のなさを冷静に分析している・・・・・・
「名誉白人」の百年
南アフリカのアジア系住民をめぐるエスノ-人種ポリティクス
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