書評 I.ジャニス 著 細江達郎 訳『集団浅慮』@図書新聞2022年8月13日付
I.ジャニス 著 細江達郎 訳『集団浅慮』の書評が、「図書新聞」2022年8月13日付に掲載されました。
評者は三浦麻子先生。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
例えば同調(圧力)といえばアッシュ、権威への服従といえばミルグラム、というのと同じく、原著者であるジャニスの名前もセットになって記憶されているから、「みんな知ってるジャニスの集団浅慮」なのだが、おそらく二つの理由で伝説と化していた。
まず一つ目の理由は、ジャニスの研究成果はそのほとんどが書籍として刊行されていたことである。松井亮太氏による解説論文『集団思考(groupthink)とは何か』(日本原子力学会誌・2020)は、集団浅慮という概念は、ジャニスによって提案された1972年以降、それが関わっていそうな大事故・大事件が少なくなかったことも相俟って、世界(特に米国)的に見ればコンスタントに研究が行わている一方で、日本においては(大事故・大事件は少なくないのに)ほとんど研究がないことを、公刊論文数という明確な指標に基づいて指摘している。そして、その理由として「ジャニスの著書が翻訳されていない」ことを挙げている。
・・・・・・本書は詳細な脚注を含め500頁を超える大著であるが、前述のとおり具体的な歴史的出来事を引いた記述が多くを占めているし、それをふまえた理論の一般化、そして集団浅慮を阻止するための処方箋も明確に記述(そして翻訳)されている。何せ伝説の書籍である。研究者、実務家に限らず、広く一読を勧めたい。
『集団浅慮』
アーヴィング・L・ジャニス 著
細江 達郎 訳
2022/05/20
ISBN 9784788517707
四六判600頁・定価 4,730円
在庫 在庫あり
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