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対談 小平麻衣子 内藤千珠子 「文学的想像力の可能性」@図書新聞 2021年11月13日付

対談 小平麻衣子 内藤千珠子 「文学的想像力の可能性」が、「図書新聞」2021年11月13日付に掲載されました。内藤千珠子著『「アイドルの国」の性暴力』をめぐっての対談です。小平先生、内藤先生、「図書新聞」ご担当者様、ありがとうございました。こころからお礼申し上げます。

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小平 たとえば、女性として承認される規範的なあり方を演じていくのがいいか、それともそれを拒否するのがいいかというのは、一つの主張として述べることはできません。何がいいか悪いかと言うことも、個別の現実と離れた二元的な抽象思考に与してしまうことになるわけで、それを突破する前向きな力はある瞬間の、突発的なものとしてしか現れません。しかし、それが一つの大きな塊になったときには、ある制度として他のものに抑圧的に働くこともありますので、そうした事情を的確に汲み取るために、曖昧にも見えるけれど繊細な語りを提示してくれるのが小説の力だと思います。本書で特に面白いのは、やはり小説の読み込み箇所であって、桐野夏生や松田青子をはじめとする現代作家の小説から、戦時中に移動し続けた作家林芙美子や、女性革命家の金子文子まで、具体的なテクストに深く入り込みながら意味を解きほぐしています。いろいろ考えさせられ、読むのに時間がかかった一冊でしたね。

内藤 曖昧なものを小説の言葉を通して、文学研究でなければできないという説得力を持って実践できるように努力を重ねたいです。「アイドル」という記号も、「慰安婦」という記号も、曖昧な部分を考えることで開かれる地平があるように感じてきました。明快な立場をもたないとなかなか語りにくい主題ですが、いずれも、文学的想像力のなかで考えたかった。最初は、「慰安婦」という記号を自分自身の日常につなげて考えたいという主題がありましたが、その過程で現代のアイドルが地下アイドルを経由して転換し、若い女性たちにとって、日常のなかに現われる物語の次元が更新されていることに気づきました。問題を回避せず、自分にとっての日常の現場のレベルで考察することを可能にするフレームをつくるためにおどうすればいいか、自分なりに覚悟を持って思考を積み重ねてきたように思います。

 人が一生懸命に生きようとしたときに、今あるシステムは自分の目の前にある物語に反映されて、どう生きるのか、あるいは生きさせられるのかを左右しますよね。女性の場合は自発性も含めて、娼婦的なイメージを分有させられ、性暴力を内包した物語が自分を取り巻いている。社会にも暗黙の前提として共有され、さまざまな属性や立場を持った人たちが、互いに目を逸らしあっている。それをいかに挑発的なかたちで問題化するか考え、「アイドル」と「慰安婦」という記号をつなぐことで可視化し、共有していく地点をつくりだしたいという思いがありました。今回、フェミニズムと文学が交差する地点でお仕事を重ねてこられた小平さんと一緒に語り合えたことで、視界が開け、さらに考えたいことが広がりました。

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9784788517349_20211110161701

著者 内藤 千珠子
ジャンル 文学・エッセイ
出版年月日 2021/08/05
ISBN 9784788517349
判型・ページ数 4-6・288ページ
定価 3,190円(本体2,900円+税)
在庫 在庫あり

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