書評 ジョルダン・サンド著『東京ヴァナキュラー』@朝日新聞 2021年11月6日付
評者は戸邉秀明氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
・・・・・・1980年代、東京では歴史を再発見するいくつかの試みが、ほぼ同時に始まる。下町の「暮らしぶり」を聞き取り、「まちづくり」に活かした「地域雑誌 谷中・根津・千駄木」。街路の隅に佇む過去の痕跡が、「無用の長物」ゆえに宿す面白さを捉えた赤瀬川原平たちの路上観察学。庶民の生活史を中心に据えた江戸東京博物館の展示構想。
本書はこれらを、人々が都市の日常に改めて価値を見いだし、抵抗の糧とする技法として読み解く。議論の起点を、反戦運動が占拠した69年の新宿西口地下広場に置くのは、そのためだ。この時、市民を排除すべく、「広場」は「通路」へ改称された。儀礼や記念碑で公衆の一体化を促す広場を奪い合う闘争の仕方は、ひとたび挫折する。・・・・・・
日常や周縁も、脚光を浴びればすぐに高値がつき、出版や観光で消費された。だが当事者たちはジレンマを承知でメディアを利用し、「おどけつつ」「生真面目に」訴えて、「成功を見た叛乱」となった。著者の80年代評価は、消費文化論とは一線を画す。・・・・・・
>>>>>朝日新聞 好書好日ページへ(全文を読む)
« 書評 猿谷弘江著『六〇年安保闘争と知識人・学生・労働者』@2021年11月6日付 | トップページ | 書評 中山 元 著『わたしたちはなぜ笑うのか』@北國新聞 2021年10月30日付 ほか »
「書評」カテゴリの記事
- 書評 I.ジャニス 著 細江達郎 訳『集団浅慮』@図書新聞2022年8月13日付(2022.08.06)
- 書評 『六〇年安保闘争と知識人・学生・労働者』、大原社会問題研究所雑誌766(2022.8)(2022.07.26)
- 書評 山本めゆ著『「名誉白人」の百年』@共同通信 2022年6月26日他(2022.07.05)
- 書評 木村至聖・森久聡編『社会学で読み解く文化遺産:新しい研究の視点とフィールド』@学会誌書評(2022.06.29)
- 書評 能智正博・大橋靖史 編『ソーシャル・コンストラクショニズムと対人支援の心理学』@「こころの科学」最新号(224号2022.7)(2022.06.15)
« 書評 猿谷弘江著『六〇年安保闘争と知識人・学生・労働者』@2021年11月6日付 | トップページ | 書評 中山 元 著『わたしたちはなぜ笑うのか』@北國新聞 2021年10月30日付 ほか »
コメント