« 2021年9月 | トップページ | 2021年11月 »

2021年10月

2021年10月25日 (月)

書評 ジョルダン・サンド著『東京ヴァナキュラー』@日本経済新聞 2021年10月23日付

ジョルダン・サンド著『東京ヴァナキュラー』の書評が、日本経済新聞 2021年10月23日付に掲載されました。
評者は五十嵐太郎氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

日常生活に見る都市の記憶

・・・・・・著者は『帝国日本の生活空間』(2015年)でささやかなモノに注目しながら、近代日本の海外ネットワークを描いたが、本書でもモニュメントではなく、日常に密着したモノから東京の文化遺産や地域性の発見を考察している。
 その際、各章の題材もユニークだ。第一章は、1969年の新宿西口広場をめぐる闘争、第二章は下町の生活史を取材しつつ、コミュニティを可視化させたタウン誌「谷根千」の活動、第三章は都市において逸脱した「物件」を探索した路上観察学、そして第四章は復元された街並みや建築模型を大胆に導入した江戸東京博物館などの展示施設である。・・・・・・

著者がとりあげる「土着の」を意味するヴァナキュラーな経験主義は、都市の経験が抽象化されることへの抵抗である。これにシンパシーを寄せつつも、ただ賛美するわけでもない。下町が商品化されて、消費の対象にすり替わったように、ジレンマを抱えている。理論化も足りない。またノスタルジーとなった都合のよい過去としての生活展示は、政治の存在をぼかしてしまう。こうした難しい課題を抱えてはいるが、都市の「モニュメントなき遺産」の可能性を問うのが本書である。

| | コメント (0)

2021年10月18日 (月)

書評 内藤千珠子著『「アイドルの国の性暴力』@島根日日新聞 9月28日付

内藤千珠子著『「アイドルの国の性暴力』

の書評が、「島根日日新聞」9月28日付、「十勝毎日新聞」9月24日付に掲載されました。評者は永江朗氏。書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

なんて刺激的な評論だろう。アイドルと慰安婦。イメージの異なる二つのものを同時に考えることで、隠されているものが見えてくる。題材は徳田秋聲の「縮図」や林芙美子の「浮雲」など戦中、戦後の小説から、桐野夏生の「路上のX」や松田青子「持続可能な魂の利用」など現代の小説まで。アイドルについて考えるとき慰安婦が補助線になり、慰安婦について考えるときアイドルが補助線になる。キーワードは「帝国的性暴力」である・・・・・・アイドルと慰安婦を考えるとき、戦時下の性暴力は平和時にも継続されていることに気付く。最初から最後まで居心地の悪さを抱えながら読んだ。すべての男は当事者である。


9784788517349_20211018151001 「アイドルの国」の性暴力
著者 内藤 千珠子 著
ジャンル 文学・エッセイ
出版年月日 2021/08/05
ISBN 9784788517349
判型・ページ数 4-6・288ページ
定価 3,190円(本体2,900円+税)
在庫 在庫あり

| | コメント (0)

2021年10月16日 (土)

書評 メディアがひらく運動史@図書新聞 2021年10月23日付

大野 光明・小杉 亮子・松井 隆志 編『メディアがひらく運動史

の書評が、「図書新聞」2021年10月23日付に掲載されました。評者は久保田隆氏。評者の先生、掲載紙ご担当者のかたにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。


・・・・・・編者たちは特集の意図を示しながら、「運動の中で生み出されたメディアの集積は、それ自体が別の運動的な営みにつながっていく」と記している。確かに、それが例えビラや機関誌紙であったとしても、内包されている言語の集積は、思念の有り様を潜在させているといっていい。・・・・・・


三橋敏明「日大闘争は、何を「経験/記録」したのか」では、日大全共闘書記長の田村正敏と七三年に、「無尽出版会」を設立して『無尽』に自らの経験を執筆し、日大闘争の「記録」づくりに取り組み」、四号まで刊行し、以後の「記録」づくりをめぐって述べていく。わたしが、当時、『無尽』創刊号に関心が向いたのはいうまでもない。

 「創刊号jは巻頭に私の拙文が置かれ、秋田明大とアナキスト詩人秋山清の対談「何が続くか」をトップに、田村正敏の「出発することの意味(1)、山本義隆の「加藤一郎公判調書」などを掲載して刊行された。」

 秋山は、日大予科入学という経歴はあるが、なによりも田村の熱心な誘いが大きかったと思われる。
 わたしは、日大闘争、東大闘争等を、全共闘運動といった総称で語られることに、幾らか逡巡する思いを抱き続けてきた。三橋の論稿のなかに、次のような箇所がある。

「日大闘争の行方は不透明になったが、バリケード生活に定着していた「愉快な時間」は維持されかわっていかなかった。日大闘争の方針や展望は重要だったが、私には自らの意思と力で手に入れた「愉快な時間」を、いつまでもいつまでも持続させたかった。」


 わたしは、この文章に接して、いまだからいえる感慨がある。三橋が「時間」という認識なら、わたしは、「関係性」という感覚があったと思い返している。「愉快な関係性」と、いまだからいえるのかもしれないが、一人一人の考え方が違っていても、なにか分かり合える関係性というものが、生起していたことを思い出すのだ・・・・・・

 

 

9784788517332 社会運動史研究 3
メディアがひらく運動史

著者 大野 光明 編
小杉 亮子 編
松井 隆志 編
出版年月日 2021/07/15
ISBN 9784788517332
判型・ページ数 A5・240ページ
定価 2,640円(本体2,400円+税)
在庫 在庫あり

| | コメント (0)

« 2021年9月 | トップページ | 2021年11月 »