書評 猿谷弘江著『六〇年安保闘争と知識人・学生・労働者』@週刊読書人 2021年6月18日号
猿谷弘江著『六〇年安保闘争と知識人・学生・労働者』
の書評が、「週刊読書人」2021年6月18日号に掲載されました。評者は古賀暹氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
「まず巻末にある参考文献の一覧を見て驚かされた。日本の六〇年安保闘争を論じているはずの文献の半分が横文字に占められているからだ。こんなに欧米人の日本研究が盛んなのか、日本学の専門家でもない私には書評は書く資格がないと恐れをいだいた。しかし、その恐れは、序章の末尾までほんの三〇頁までしか続かなかった。それまでの難しい社会学の歴史についての話は、ブルデューの方法論を用いて安保闘争に立ち向かうよという方法論の説明だったからだ。いやその短い序章を、わからないなりに苦労して読んだ甲斐があった。逆に、アメリカに留学していた著者、猿谷弘江さんの、若々しい苦闘ぶりが、際立って感じられた。猿谷さんはブルデューの方法論を片手に、六〇年安保と第一次ブントに立ち向かっている。その姿は、第一次ブントが分裂-崩壊したのち、何の予備知識ももたないままブントの再建を目指して、学生運動に突入した頃の私と似ていると感じた。違いは、猿谷さんには、方法論があったが、私には先輩たち「学生革命家」たちの意志の継承という情熱があったというだけに過ぎない。それだけで、ブントとは何だったのか、なぜ、ブントは崩壊したのかということを、戦線に生き残っていた先輩たちから聞き出していったのだった。
猿谷さんに戻ろう。ブントと安保闘争という森林をかき分けて行く猿谷さんの分析はみごとだ。まず初めに登場するのは、丸山眞男、久野収、清水幾太郎などで形成された知識人のフィールドだ・・・・・・」
『六〇年安保闘争と知識人・学生・労働者』
社会運動の歴史社会学
社会運動の歴史社会学
著者 猿谷 弘江 著
ジャンル 社会学 > 歴史社会学
出版年月日 2021/03/31
ISBN 9784788517172
判型・ページ数 A5・392ページ
定価 5,500円(本体5,000円+税)
在庫 在庫あり
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