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2020年6月29日 (月)

書評 堀井一摩 著『国民国家と不気味なもの 』 @「週刊読書人」6月26日付 2020年

堀井一摩 著『国民国家と不気味なもの の書評が6月26日付 2020年「週刊読書人」に掲載されました
評者は副田賢二氏。

評者の先生、掲載紙ご担当者さまに心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。




・・・・・・本書の独自性は、「不気味なもの」という、感覚・記憶・認識が錯綜する表象領域を、国民国家論の批評的コンテクスト上でとらえなおした点にある。論考の対象も、社会主義者、無政府主義者という被抑圧者、動物の化身的存在や亡霊などの周縁的存在をめぐる表象から、著名な文学者や軍人、政治家の公共的言説まで幅広く、そこで同時代の言説と国民国家との構造的な相関性・共犯性を浮かび上がらせることに成功している。

 また、本書の論考の縦軸となるのは日露戦争と大逆事件だが、「不気味なもの」というあくまで主観的な感触を時系列的対象化し解析することで、ジャンル化された旧来の研究言説配置を相対化し、同時代言説・表象の隠されたネットワークを暴き出す可能性を示している。「国民規範」としての天皇制の創出過程で「規範から逸脱する要素は抑圧され、あるいは、棄却される。しかし、それはたえず甦り、国民主体を不意打ちする形で不気味に回帰する」(序章)との「不気味なもの」の概念定義は一定の説得力を持つものだろう。フロイト以降の「不気味なもの」論についても詳細に検証されており、従来の国民国家論の限界を、文学テクスト分析の手法において乗り越える可能性が示唆されている。

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 近代国民国家が、制度に規範化されない存在を排除し、その他者性を剥奪する一方で、文学テクストはその抑圧ゆえに、さらにしたたかにその制度性を暴いてゆく。文学的想像力は、いわば「不気味」な「動物」として放恣に制度を食い破り、自らを絶えず更新してゆくものであることを本書は示唆している。




9784788516786 国民国家と不気味なもの
 日露戦後文学の〈うち〉なる他者像
 堀井 一摩 著
 2020/03/31
 ISBN9784788516786
 4-6判・408頁
 定価 本体3,800円+税

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