記事紹介 中河伸俊・渡辺克典 編『触発するゴフマン やりとりの秩序の社会学』、日本経済新聞2020年5月9日付
2020年5月9日付日本経済新聞「今を読み解く」の、コロナ禍が問う働き方を考察した記事にて、
中河伸俊・渡辺克典 編『触発するゴフマン やりとりの秩序の社会学』が紹介されました。
評者は阿部真大氏。
評者の先生、掲載紙ご担当者さまにお礼申し上げます、ありがとうございました。
・・・・・・しばしば、「新しい働き方」が、日本企業の「古い働き方」を変えられるのではないか(例えばテレワークの導入によって、日本企業特有の「ムダな会議」の多さが変えられるのではないか)という議論を目にする。しかし、こうした「古い働き方」のもつメリットが見落とされがちである。そのことが、この間、徐々に明らかになってきたように思う。
私自身、勤務先の大学の要請でテレワークをはじめて気づいたことは、リアルな対面コミュニケーションのもつ情報量の豊かさと効率性である。今までリモートでした時のコミュニケーションの困難さは、現在、多くの人が経験していることだろう。
それは社会学者が対面的相互行為のメカニズムとして、長年追求してきたテーマでもある。アーヴィング・ゴフマンは、人々の相互行為を舞台における「パフォーマンス」にみたて、空間の使い方、身振りの仕方、相手との距離の取り方なども含めた、人々の複雑な「印象操作」や「自己呈示」のあり方について明らかにした。ゴフマンの理論に興味のある方は『触発するゴフマン』をお読みいただきたい。
ゴフマンの議論で示されるような相互行為をオンライン・コミュニケーションで実現するのは、現状では極めて困難である。だからこそ、人々はテレワークにおけるコミュニケーションに、新しい種類の「疲れ」を感じはじめているのだろう。今回のコロナ危機は、リアルな対面コミュニケーションの意義を人々に再認識させる機会、つまり「古い働き方」の良い部分を人々が見直す機会ともなっているのである。
働き方が新しいか古いだけではなく、対面かリモートかというふたつの働き方のどういった組み合わせが最も合理的なのか。コロナ危機を経た日本においては、働き方をめぐる議論のより一層の深化を期待したい
四六判並製296頁
定価:本体2800円+税
発売日 15.5.22
ISBN 978-4-7885-1431-7
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