書評 佐藤邦政 著『善い学びとは何か』@図書新聞 2020年4月11日号
佐藤 邦政 著
『善い学びとは何か』(本体2400円)の書評が図書新聞 2020年4月11日号に掲載されました。評者は久保田祐歌氏。評者の先生、掲載紙ご担当者さまに深くお礼申し上げます。ありがとうございました。
本書は、学びとは何か、なぜ学びが大切なのかという学びの価値に関する問答を教育哲学研究及び哲学研究の議論に基づいて厳密に展開した「学び」についての哲学書である。............本書での「学び」は、ソクラテス以来の西洋哲学の伝統をもつ、問答を通じて考えることは知識の発見や理解を深めるための手段であること、それによって自身を認知的に変容させるということがその理由である。問答による「学び」は、「善い学び」として、「学ぶ者が固定観念を中性化できるようなもののこと」と定義され価値づけられる。「固定観念の中性化」とは、自分がそれと気づかれずにもっている見方や考え方を、それが一つの見方や考え方にすぎないと認識し、別の仕方で認識する余地が生じることを意味する。
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問答における「学び」においては、「問いほぐし」と名づけられる、批判的思考と呼びうる認識的なプロセスが含まれる。「問いほぐし」とは、「問いを設定し、明確にし、洗練させていくことを通じて、問いとその前提からなる探求の枠組みを創り出し、それを組み替えていく」ことである。「問いほぐし」によって、以前とは異なる見方や考え方がありうることを想像でき、ここから判断や行為選択の幅を広げる「認知的自由」が生じる。
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「問いほぐし」と「学び」との関係は、「問いほぐしのスキルの習得」(問いの言語形式を適切に用いるスキル)、「知識を刷新し、理解を深める手段」、「問いほぐしのプロセスでの学びの経験」(認知的変容のプロセス)の三つの観点でまとめられる。最も重要であるのは「認知的変容」であり、著者は独自の概念として「教育的善」を提示することでその価値を説明する。道徳的善(道徳的に正しい行為や判断、誠実さ等)や認識的善(真理の獲得、深い理解)と異なり、「教育的善」は「ある人が道徳的に、あるいは、認識的に善い方向に変容することに基づく価値」である。
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『善い学びとは何か』
〈問いほぐし〉と〈知の正義〉の教育哲学
佐藤 邦政 著
出版年月日 2019/11/05
ISBN 9784788516489
4-6判・268ページ
定価 本体2,400円+税
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