書評・紹介 『笑いと嘲り』@日本経済新聞、小川さやか氏 評
日本経済新聞 2020年3月19日 夕刊「読書日記」にて、小川さやか氏に
M・ビリッグ著、鈴木聡志 訳『笑いと嘲り』をお取りあげいただきました。
掲載紙ご担当者様、小川さやか先生にはこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
ユーモアのダークサイド再考
ユーモアには、ダークサイドがある。誰かを見下したり誰かよりましな境遇に暗い喜びを感じたりする優越理論。立派な大人が子どもみたいに泣きわめくなど世界のズレに滑稽さや可笑しみを感じるズレ理論。緊張や圧迫から解放されるために愛想笑いや空笑いをしたり、解放されて思わず安堵の笑みを漏らしたりする放出理論。
本書(鈴木聡志訳、新曜社)で著者のM・ビリッグは、こうした伝統的な笑いの3つの理論をはじめ、これまでに登場した多様な笑いについて批判的に検討しながら、笑いの残酷な側面である「嘲り」の持つ力に徹底的に目を向ける。それによって彼は、笑いが社会慣習を弱めたりそれに反逆したりすることではなく、深いところで規範を強め、また規範違反を取り締まっていることを浮き彫りにする。......
......
ソーシャルメディアでの嘲りの応酬を眺めていると、笑いのもつポジティブサイドだけでなく、笑いのもつダークサイドを見つめなおすことの重要性をひしひしと感じる。さまざまな社会現象と隣りあう笑いについて考えられる一冊だ
M. ビリッグ 著/鈴木 聡志 訳
2011/07/05
ISBN 9784788512405
46判・496ページ
定価 本体4,300円+税
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