書評 実重重実著『生物に世界はどう見えるか』 日本経済新聞 2020年1月18日掲載
実重 重実 著『生物に世界はどう見えるか』
の書評が、日本経済新聞、2020年1月18日付、に掲載されました。掲載紙ご担当者さまに、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
「環世界」軸に認識方法を分析
ドイツの動物学者ユクスキュルは『生物からみた世界』で「環世界」という考え方を提唱した。動物はそれぞれの知覚と行動で世界をつくりだしているというこの概念を、進化の系統をたどりながら生物一般に敷衍したのが本書だ。
・・・・・・元農水省の行政官である著者は長年多くの動物を観察する傍ら在野の生物学者、団まりな氏に師事し階層的に分析する方法論を学んできたという。そのため原核生物の大腸菌、単細胞生物、植物、キノコやカビといった菌類、ミミズ、昆虫、魚類、鳥類、哺乳類・・・・・・と豊富な実例があげられ、認識のあり方を順に追っていける構成だ。
2012年にはヒト以外の哺乳類や鳥類、タコに意識を認めた「ケンブリッジ宣言」が採択された。意識を形成する基盤となる神経回路をトップダウン式に遡れば「何らかの主体的な認識」ひいては「細胞の主体性」に行き着くという。細胞レベルにまで近くの世界へ導いてくれる。
実重 重実 著
生物に世界はどう見えるか
感覚と意識の階層進化
2019/12/01
ISBN 9784788516595
4-6判・224頁
定価 本体2400円+税
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