書評 実重重実 著『生物に世界はどう見えるか』@土地改良新聞 2019/12/15
実重重実 著『生物に世界はどう見えるか』紹介記事が、土地改良新聞 2019/12/15 に掲載されました。実重先生によりすばらしい本書の紹介となっております。ご一読いただけたらさいわいです。
掲載誌ご担当者様に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
近年における生物学の進展には、めざましいものがあります。自然界の様々な謎が次々と解き明かされてきました。私は、そうした最新の科学的知識を総動員して、微生物から、植物、カビ・キノコ、ミミズ、昆虫、魚、鳥そして哺乳類まで、生物界のあらゆる構成員にとって世界はどう見えているかということを描いてみました。
ミツバチは野原をあちこちに探索してから、どうやって一直線に巣に戻ってくるのでしょうか。それは、「経路積算」という能力に基づくものだということが分かってきました。しかもミツバチは、私たちに見えない偏光や地磁気を頼りにして内面に地図を描いているようなのです。
また、渡り鳥は、どうやって何千キロにも及ぶコースを間違えずに飛ぶことができるのでしょうか。これは頭の中に、生まれつき「どの方向に向かってどの時間だけ飛ぶか」ということがインプットされているのです。そして、鳥たちは、太陽コンパスに加えて、地磁気や低周波など私たちに分からない信号を利用して、間違えずに長距離の飛行をします。
魚たちの大群が群れごと一斉に旋回できるのははなぜなのか。植物はどうやって葉と根の間で連絡を取り合うのか。キノコはなぜ1日のうちに顔を出してくるのか。これらはすべて1つ1つの細胞が持つ、認識の力に基礎があります。
この本では、そうした生物界の様々な不思議を、感覚という視点から解き明かします。そして細胞レベルの「認識」が個体レベルで「感覚」となり、さらには私たちの持つ複雑な「意識」まで進化していく様子を、階層の発展として描きました。
私は農林水産省の行政官として仕事をする傍ら、発生生物学者・団まりな氏に師事して、団氏が提唱した階層生物学を20年近く学んできました。しかし、残念なことに、団まりな氏は、2014年に交通事故で他界されてしまいました。このため私がその志を継ぎたいと考え、5年がかりで本書を執筆したものです。
「意識」や「進化」ということに関心をお持ちの方には、面白いと保証します。そうでない方にとっても、自然界のさまざまな謎が目の前で解き明かされていき、やがてそれが1枚の大きな絵になっていく様は、面白い読み物と言えるのではないでしょうか。
専門用語は使わず、想像力を交えながら書いてみました。皆さん私と一緒に、生物たちの世界を楽しく探検しましょう。
(著者 實重重実)
生物に世界はどう見えるか
感覚と意識の階層進化
実重 重実 著
2019/12/01
ISBN 9784788516595
4-6・224ページ
定価 本体2,400円+税
« 服部徹也著『はじまりの漱石』@「図書新聞」19年下半期 読書アンケート | トップページ | 書評 松嶋秀明著『少年の「問題」/「問題」の少年』@図書新聞 2020年1月1日号 »
「書評」カテゴリの記事
- 書評 ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著『「それ」のあったところ』@朝日新聞 2024年11月2日付(2024.11.05)
- 書評 三浦耕吉郎著『自然死(老衰)で逝くということ』@毎日新聞24年11月2日付(2024.11.02)
- 書評 好井裕明著『原爆映画の社会学』の書評@図書新聞2024年11月2日付(2024.10.25)
- 書評 好井裕明著『原爆映画の社会学』 「週刊読書人」2024年9月13日付に掲載(2024.09.13)
- 紹介 柳原敏夫・小川晃弘 編『わたしたちは見ている』@東京新聞2024年7月27日付(2024.07.29)
« 服部徹也著『はじまりの漱石』@「図書新聞」19年下半期 読書アンケート | トップページ | 書評 松嶋秀明著『少年の「問題」/「問題」の少年』@図書新聞 2020年1月1日号 »
コメント