書評 西迫大祐 著『感染症と法の社会史』@「図書新聞」2019年2月2日号
評者は松村博史氏。評者の先生、掲載誌ご担当者さまにはお礼申し上げます。ありがとうございました。
「現代人にも通じる感染症をめぐる思考法の淵源を探ろうとする試み
感染症思考する基盤となる世界観の展開と、法や制度整備の過程......
......
西迫氏は感染症にまつわる思考の痕跡を、一八世紀から一九世紀のフランスを中心に出されたさまざまな法や規則の中に見出そうとしている。とは言え、それらの法制度をただ順に見ていくのではなく、当時の人々にとって感染症がいかなる体験だったのかを再現し、著者自身の言葉によれば、「感染症を、医学的知識から人間の感情までをも含む一つの「世界観」として」扱おうとするのである。こうした試みは、近年の歴史学の方向性からすれば、至極正当なものであり、感染症を思考する基盤となる世界観が時代を追って展開し、それに伴って法や制度が整えられていく過程も、本書の明快な分析によって興味深くたどることができる。......本書は、感染症についての人々の社会的なイメージが、医学的な言説にまで影響を及ぼし、それが法や制度にも反映されてきたことを教えてくれる。こうした問題提起のアクチュアリティは、グローバル化により世界全体が結びつき、地球規模で感染症や公衆衛生の問題を考えなければならなくなった今日において、ますます大きな意味を持ちつつあると言えるだろう。感染症への恐怖がもたらす偏見や弱者・少数者への差別を回避するためにも、数世紀にわたって人類が感染症と格闘してきた過去を振り返ってみることが必要なのである
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