書評 図書新聞 7月14日 2018年付 小杉亮子 著『東大闘争の語り』
図書新聞 7月14日 2018年付にて、
紹介されました。評者は皆川勤氏。評者の先生、書評誌ご担当さまにこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
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このように述べていく著者が提示する「予示」的なるものを、あえて収斂させた言い方をするならば「ひととひととの関係や共同体のあり方」を問うていくものであると理解していいのではないか、とわたしは思う。国家の有様を変革するためには、まず国家権力の奪取ありきというのはロシア革命以降のロシア・マルクス主義の誤謬でしかない。マクロなものとミクロなものはコインの裏表だと思う。ミクロなものが集積してマクロなものがかたちづくられると、わたしなら捉えたいから、「予示的政治」と「戦略的政治」に関して、留保したいことがある。それは、「政治」ではなく、「反政治」とすべきではないかということだ。あるいは、「行為」、「行動」といいかえてもいいかもしれない。かつて、わたしは、「行為の共同性」ということに拘泥していたから、そのようにいいたいわけではないが。
わたしが、全共闘という諸相に距離を置き、振り返ることを忌避し続けてきたのは、無党派、ノンセクトと括ることの安易さと、結局、党派によって主導され、安保決戦なる空疎な設定で全国全共闘を結成したことへの疑義があるからだ。しかし、本書には語り手それぞれの現在も述べられていて、そこではまぎれもなく、「人と人との関係や共同性のありかた」をいまだに問い続けていることが示されている。
著者に誘われて、わたしもまた、もう一度、全共闘の有様と行動(行為)に関して再考すべきだと喚起されたといっておきたい。
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