書評 津田大介・小嶋裕一編『[決定版]原発の教科書』
「通販生活」2018年春号にて
津田大介・小嶋裕一 編[決定版]原発の教科書
が取りあげられました。評者は芳地隆之氏、ありがとうございました。芳地先生、掲載誌ご担当者さま、心よりお礼申し上げます。
日本の抱える問題が凝縮
そこに切り込む格好の教材原子力発電はCO2削減のためにはやむをえないエネルギー源なのか? と自問する時期が私にはあった。……
原発はコスト安という言説も、東芝の経営悪化の大きな要因が米国の原子力会社ウェスチングハウス買収だったことで崩れ、「原子力ルネサンスは幻におわった」ことは明白になった。……以上は「第2章 原発を考えるための4つのポイント」のうち、「環境性」「経済性」が指摘するところである。それ以外にもエネルギー基本計画、日米原子力協定、地方交付金など多様なテーマ設定によって本書は原発が抱える闇に光を与える。
……最後の鼎談で東浩紀氏は「2011年の事故直後に存在していた『この国が変わらなきゃ』っていう空気そのものが、いまや完全に消えている。『どうせ変わんないよね』と無気力感だけが残っている。原発はその象徴ですね」と語っている。その「象徴」にどう切り込んていくか。本書はそのための格好の教材である。
津田大介・小嶋裕一 編
A5変判並製360頁
定価:本体2400円+税
発売日 17.9.5
ISBN 978-4-7885-1536-9
« 村上克尚著『動物の声、他者の声』 読書委員が選ぶ 2017年の3冊 @読売新聞 | トップページ | 新刊 友田明美・藤澤玲子『虐待が脳を変える』 »
「書評」カテゴリの記事
- 「2024年回顧 動向収穫 社会学」@週刊読書人 2024年12月20日付(2024.12.19)
- 書評 ダーク・フォン・レーン 著『ハロルド・ガーフィンケル』 @図書新聞 2024年12月14日付(2024.12.10)
- 書評 内藤千珠子『「アイドルの国」の性暴力 増補版』@図書新聞 2024年11月23日号(2024.11.19)
- 書評 ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著『「それ」のあったところ』@毎日新聞 2024年11月9日付(2024.11.12)
- 書評 ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著『「それ」のあったところ』@朝日新聞 2024年11月2日付(2024.11.05)
« 村上克尚著『動物の声、他者の声』 読書委員が選ぶ 2017年の3冊 @読売新聞 | トップページ | 新刊 友田明美・藤澤玲子『虐待が脳を変える』 »
コメント