書評 森 正人著『展示される大和魂――〈国民精神〉の系譜』@図書新聞2017年10月7日号
森 正人著『展示される大和魂――〈国民精神〉の系譜』の
書評が、2017年10月7日号「図書新聞」に掲載されました。評者は小野正章氏。
掲載誌ご担当者様、ご書評くださいました先生にこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
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書評が、2017年10月7日号「図書新聞」に掲載されました。評者は小野正章氏。
掲載誌ご担当者様、ご書評くださいました先生にこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
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……本書は、「国民精神」のひとつの典型とされる「大和魂」が明治維新以降、意図的に変容させられ、結果的には男らしさ、力強さとなるプロセス、その近代日本で創出された「国民精神」が言語化、具体化、可視化、そして商品化されながら浸透していくプロセスを多くの先行研究をもとにしながら、複合、かつ多角的に検討しながら論証しており、「国民精神」なるものの浸透の「仕掛け」が一筋縄では理解できないものであったことを論証している。ひとつの事象の分析に複合的領域から検討することの「面白さ」が本書によって示されている。
……一方で、不満に感じた点もある。ひとつは、戦前の「国民精神」のなるものの内実に変化がったのか否かについての論究がないことである。少なくとも、明治憲法・教育勅語が発布された十九世紀後半と二十世紀半ばにおける日本の状況や「国民精神」のよりどころとなった天皇観にも変容がみられる。こうしたことからくる「国民精神」の実質あるいは内容に変化が見られたのか否か、さらにそうし転機はいつと判断できるのか、などの論究が加われば、歴史研究としての重みが増すように思える。さらに、戦後の状況であるが、本書の指摘は本当なのでだろうか……
……一方で、不満に感じた点もある。ひとつは、戦前の「国民精神」のなるものの内実に変化がったのか否かについての論究がないことである。少なくとも、明治憲法・教育勅語が発布された十九世紀後半と二十世紀半ばにおける日本の状況や「国民精神」のよりどころとなった天皇観にも変容がみられる。こうしたことからくる「国民精神」の実質あるいは内容に変化が見られたのか否か、さらにそうし転機はいつと判断できるのか、などの論究が加われば、歴史研究としての重みが増すように思える。さらに、戦後の状況であるが、本書の指摘は本当なのでだろうか……
森正人 著
四六判並製282頁
定価:本体2600円+税
発売日 17.3.31
ISBN 978-4-7885-1519-2
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