書評 金菱 清 編『悲愛』@読売新聞 2017/3/12付
「あふれる被災地の肉声」
金菱清〔ゼミナール)編・東北学院大学震災の記録プロジェクト 悲愛
の書評が、読売新聞 2017/3/12付書評欄 にて紹介されました。評者は土方正志氏(出版社「荒蝦夷」代表)。
評者の先生、掲載紙ご担当者様、ありがとうございます。心よりお礼申しあげます。
・・・・・・本書には「失われたもの」たちへの残されたものたちからの手紙、三十一通が収録されている。逝ってしまった家族への、消えてしまった住みなれた町への、流されてしまった愛犬への、そして特別な「あの人」への手紙である。書き手のひとりに、私の知る人もいた。逝ってしまった家族への、二人称の呼びかけが胸を抉る。訥々とした静かな筆致からなおさらに、絶叫が、絶唱が聞こえる。書き手の心が叫んでいる。なぜ、と。
宮城県仙台市の東北学院大学の金菱清教授(社会学)が学生たちと進める〈東北学院大学震災の記録プロジェクト〉の一冊である。昨年は、被災地で語られる「タクシー幽霊」のレポートが話題になった『呼び覚まされる霊性の震災学』が出ている。どれも被災地に暮らす私たちの肉声が溢れて、ざわめきを鎮められずにいるのが独りではないのを伝えてくれる。
さらに願わくは、本書を東北被災地の外に暮らす人たちにこそ手に取ってもらえれば、本書から東北の「いま」を生きる私たちの肉声を聞き取っていただければ。「復興」とやらの本質は、目に見えるモノにではなく、おそらくはそこに生きる人たちの内奥にこそあるのだから・・・・・・
・・・・・・
金菱清〔ゼミナール)編
東北学院大学震災の記録プロジェクト
四六判変形上製240頁
定価:本体2000円+税
発売日 17.3.11
ISBN 978-4-7885-1515-4
« 紹介 金菱 清 編『悲愛』@天声人語・朝日新聞 2017/3/12付 | トップページ | ◎新曜社<新刊の御案内>■メール版 第168号■ »
「書評」カテゴリの記事
- 「2024年回顧 動向収穫 社会学」@週刊読書人 2024年12月20日付(2024.12.19)
- 書評 ダーク・フォン・レーン 著『ハロルド・ガーフィンケル』 @図書新聞 2024年12月14日付(2024.12.10)
- 書評 内藤千珠子『「アイドルの国」の性暴力 増補版』@図書新聞 2024年11月23日号(2024.11.19)
- 書評 ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著『「それ」のあったところ』@毎日新聞 2024年11月9日付(2024.11.12)
- 書評 ジョルジュ・ディディ=ユベルマン 著『「それ」のあったところ』@朝日新聞 2024年11月2日付(2024.11.05)
「お知らせ」カテゴリの記事
- 私市保彦 著『賢治童話の魔術的地図:土俗と想像力』が、第5回 西川徹郎記念文學館賞受賞(2024.12.20)
- 受賞 清水亮著『「予科練」戦友会の社会学』が東京大学而立賞を受賞いたしました(2022.08.25)
- 受賞 山口誠・須永和博・鈴木涼太郎著『観光のレッスン——ツーリズム・リテラシー入門』(2022.08.02)
- 平川祐弘 編『森鷗外事典』の紹介が読売新聞 2019年1月21日付(2020.01.22)
- 掘り出し選書終了(2019.10.23)
« 紹介 金菱 清 編『悲愛』@天声人語・朝日新聞 2017/3/12付 | トップページ | ◎新曜社<新刊の御案内>■メール版 第168号■ »
コメント