書評 山本武利著『日本のインテリジェンス工作』 @図書新聞 2017/1/1付
山本武利著『日本のインテリジェンス工作』の書評が、「図書新聞」2017年1月1日号に掲載されました。評者は川成洋氏。ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者様に、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
インテリジェンス工作は、「極秘」作戦である
……概して各枢軸国に駐在した外交官や武官たちの情報活動は著しい成果を挙げたことは否定しないが、残念ながら彼らの暗号は瞬時に解読され、日本に不利に作用したのは歴史の皮肉としか言いようがない。本書は、日中・太平洋初期における、日本軍のインテリジェンスの代表的な組織や機関、それに諜報員――陸軍中野学校、中国、満州におけるメディア戦術・戦略、対ソ・インテリジェンス機関としての731部隊、スウェーデン公使館附陸軍武官小野寺信大佐(後に少将)――の実態を。アメリカやオーストラリア情報機関の情報集積・分析の成果を加味して可能な限り詳らかにしている。
ところで、この分野の研究には、重大な桎梏となっているものがある。それは敗戦がはっきりした時点で、おそらくニュルンベルク軍事裁判の轍を踏むまいとしたためか、被告側の証拠になるような公的文書などをことごとく焼却したために、実態の把握はきわめて断片的な、あるいは関係者の個人的な回想に頼らさるを得ないのである。
本書の圧巻は、「北欧の日本陸軍武官の対ソ・インテリジェンス工作」である。……
日本のインテリジェンス工作
――陸軍中野学校・731部隊・小野寺信
四六判288頁上製
定価:本体2800円+税
発売日 16.11.1
ISBN 978-4-7885-1499-7
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