新刊 岡田美智男・松本光太郎『ロボットの悲しみ』
岡田美智男・松本光太郎 編著
四六判並製224頁
定価:本体1900円+税
発売日 14.8.20
ISBN 978-4-7885-1404-1
見本出来ました。8月7日配本です。
8月11日ごろ書店に並びます。
それはある朝の公園での出来事だった。桜のシーズンということもあって、「花見でもしようか…」と朝早くに出かけたのだけれど、生憎、小雨模様でまだ 少し肌寒い。ただその公園の桜はちょうど満開であり、人出もまばらなこともあってか、静かに花見をするにはいい雰囲気であった。
公園の中をしばらく歩いていると、そこにポツンと立っている一人のおばあちゃんの姿が目に留まった。「花見をしているのかな…」と思いつつ、もう少し近 づいてみると、その胸の中には小さなぬいぐるみ型のロボット。おばあちゃんはその小さなロボットを抱っこしながら、一緒に花見をしていたのだ。「きれいだ ねぇ…」「ねぇ、きれい、きれい」とそのロボットに優しく語りかけながら…。
高齢者が小さな犬や猫を抱きかかえて、一緒に公園などを散歩する姿はよく目にすることだろう。それがここでは小さなロボットに置き換わっただけなのだ。 その意味で、「あぁ、そういう時代なのかなぁ」とそこを通り過ぎることもできたのかもしれない。ただ、この光景を目にして、なにか一言では表現しきれない ような、少し複雑な気持ちを抱いたのだった。
それは「えっ?これでいいのだろうか…」という漠然としたもの。それにくわえて、なにか痛々しさのようなもの、後ろめたさのようなもの、そして居たたまれなさのようなものをそこに感じたのである。
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