新刊 紅野謙介・高榮蘭ほか『検閲の帝国』
紅野謙介・高榮蘭ほか 編
A5判上製488頁
定価:本体5100円+税
発売日 14.8.8
ISBN 978-4-7885-1401-0
見本出来ました。8月7日配本です。
8月11日ごろ書店に並びます。
二〇一四年は甲午(きのえうま・こうご)の年である。以前の二度の甲午年は東アジアの地域秩序を決定付けた重要な年であった。一二〇年前の一八九四 年、日清戦争あるいは甲午戦争と呼び習わされる東北アジア戦争が勃発した。この戦争を経て中華帝国は解体され、日本という近代帝国が姿をあらわした。
興味深いことに、韓国近代小説の嚆矢である李人稙の『血の涙』(一九〇六年)は、この戦争の惨状から物語を始めている。しかし、その年に犠牲になった朝 鮮の東学農民軍や中国旅順の農民たちの声は、いまだ私たちには聞こえてこない。これらの人々には自分たちの声を伝えるいかなる媒体も、その人たちを代弁す るいかなる公的な議論の場も与えられなかった。
六〇年前である一九五四年は、停戦会談によって終結した朝鮮戦争の始末を付けるためにジェノヴァ会談が開かれた年であった。朝鮮戦争は朝鮮半島の分断を 強固なものとし、東アジアの冷戦を構造化した。ジェノヴァ会談は朝鮮半島と東北アジアに真の平和をもたらすことはできなかった。東アジアの冷戦体制は新し い方式の思想統制と検閲制度を定着させ、その権威に挑むあらゆる人々の声を沈黙させた。
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