新刊 井上信子『対話の調』
井上信子 著
A5判上製320頁
定価:本体2800円+税
発売日 14.5.29
ISBN 978-4-7885-1387-7
見本出来ました。5月28日配本です。
5月30日ごろ書店に並びます。
月一回ほどの頻度でスーパーヴィジョンに来ていた井上信子さんは、サバティカルの一年を使って、二〇〇〇年四月から二〇〇一年三月まで伊敷病院に国内留 学した。彼女の決心が定まったときボクたちは話し合って、井上さんの修学の成果を三分冊に纏め仕上げることを決めた。「守破離」のプロセスを想定してい た。一冊目は「守」すなわち井上さんがボクの技を身につけることが眼目でありその成果として『対話の技』(二〇〇一)を上梓した。次は「破」、型を破って 個性が伸びてゆく段階である。『対話の世界』(二〇〇四)がその纏めである。そして「離」としての本書が日の目を見る。プランは順調に進んだかに見える。 だが、内実は無茶苦茶であった。
まず、二人の活動野の違いがあった。ボクの世界は「病の治療」であり、技は治療の技である。井上さんは教育機関それも教育者を育成する職場の人である。 治療の技は心身のマイナスの現象を探り出し、その原因を同定してしばしば攻撃的に修正する志向を持っている。教育は心身総合体としての個体の特質を見定 め、その可能性に賭けるプラス志向の性質がある。もっとも、ボクの治療の技はプラス部分を想定して可能性に賭ける志向をも持っており、井上さんがボクを師 に選んだ理由なのだろうが、技の出自の違いは決定的であった。すでに教育者として実績を積んでいる井上さんの経験量が、ボクの技を丸呑みすることに逆らっ た。「守」を不可能にした。二人の文化背景の違いや人生体験の差異も同様に「守」を妨げた。そうした差異に由来する困難は井上さんを苦しめただろうが、ボ クの困惑はさほどでもなかった。指導者としての歴史のなかで似たような状況を体験していたからである。
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