書評 私市保彦・今井美恵『「赤ずきん」のフォークロア』
私市保彦・今井美恵 著
四六判上製256頁・定価:本体3200円+税
発売日 13.12.20
ISBN 978-4-7885-1362-4
の書評が、週刊読書人2014年3月21日号に掲載されました。評者は野上暁先生。
・・・・・・1953年、南仏のニースで、「がちょうおばさんのお話」という、ペローのお手書き原稿が発見され、これがペロー童話研究にとって画期的な事件となり、研究が大きく前進した。書かれたのは1695年。ルイ王朝の重鎮であったペローが、当時十九歳のルイ14世にささげたものだという。そこに付された彩色挿絵も意味深長で、この手稿をめぐっては様々な謎が浮上してくる。
本書の第一部「ペロー童話と伝承のはざま」では、手書き原稿を起点において「赤ずきん」の源流を探り、ペロー童話のその後の変容を挿絵なども参照して詳細に考察を進められ興味が尽きない。手書き原稿や、初版本の扉絵で、「がちょうおばさん」が糸をつむぎながら語るのを貴族の娘たちが聞いていることなどから、ペロー童話は「庶民の語りを貴族の子女向きに再話し、昔話の舞台を王朝文化の舞台に変容した」と私市は読み解く。・・・・・・
第二部「赤ずきんと胞衣」では〈赤ずきん〉という〈被りもの〉を巡る文化人類的な考察を、今井美恵が執筆している。「赤ずきん」はなぜ〈赤ずきん〉を被っているのか。レヴィ=ストロースからきっかけを与えられたというニコル・ベルモンの『誕生のシーニュ』に記された「胞衣に包まれた子ども」(アンフェン・コワッフェ)の歴史や胞衣にまつわる聖性や信仰を手掛かりに、〈被りもの〉の習俗と信仰を古代から検証する・・・・・・
ご書評くださいました先生、掲載紙ご担当者さまにはこころよりお礼申し上げます、。ありがとうございました
« フェアのお知らせ 実践学探訪@紀伊國屋書店新宿本店 | トップページ | 新刊 日本質的心理学会『質的心理学研究 第13号』 »
「書評」カテゴリの記事
- 書評 林英一著『残留兵士の群像』@下野新聞 23年3月4日付 (共同通信配信)(2023.03.08)
- 書評 烏谷昌幸 著『シンボル化の政治学』@毎日新聞 2023年2月18日付(2023.02.20)
- 書評 井上雅雄 著『戦後日本映画史』@読売新聞 2023年1月8日(2023.01.10)
- 書評 私市保彦著『賢治童話の魔術的地図』@週刊読書人 2022年11月18日付(2022.11.19)
- 書評『東京ヴァナキュラー』@歴史学研究2022年11月号(2022.11.21)
« フェアのお知らせ 実践学探訪@紀伊國屋書店新宿本店 | トップページ | 新刊 日本質的心理学会『質的心理学研究 第13号』 »
コメント