新刊 河本英夫『損傷したシステムはいかに創発・再生するか』
河本英夫 著
四六判上製424頁
定価:本体4200円+税
発売日 14.3.3
ISBN 978-4-7885-1370-9
見本出来ました。3月6日配本です。
3月10日ごろ書店に並びます。
あとがき
日々の生活のなかでも、どこか自明なことに思えて、ほとんど気にもかけずにいることがらは多い。そのなかにも、決定的に個々の経験にかかわってしまって いるものがある。たとえば発達は、定常発達したものにとっては、ふだんはまったく感じ取ることもできない。それでも時として「老い」が急に加速したとき、 はじめてそれとして自分自身に感じられるようになる。老いを成熟や熟練と言い換えても、本当のところあまり差はない。自分自身にとってかつてのような経験 の速度感がなく、自在な躍動も感じられない。だがなにかのっそりという感じで経験は動き続けている。こうした場面で、発達の否応のなさ、紛れもなさを感じ 取ることがある。こうしたことがらは、通常は制御の仕方がわからないために疑似自然的なものに見える。そこには感触としてしか感じ取れないが、決定的に経 験に関与しているような特質があるに違いない。ここ数年、私自身は二度の大きな手術を経ているが、こうした主題は手術前後から一貫して考えてきたものであ る。
本書は、そうした特質を組み込んだ経験を考察するために、触覚性感覚、発達、記憶、動作、さらには能力の形成を取り上げている。いずれも生にとって最も 重要なことでありながら、それとして単独で取り出すことができないために、難題中の難題となっている。
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