新刊 熊谷高幸 『タテ書きはことばの景色をつくる』
熊谷高幸 著
四六判並製184頁・定価1995円
発売日 13.10.3
ISBN 978-4-7885-1357-0
見本出来ました。10月2日配本です。
10月4日ごろ書店に並びます。
はじめに
もう四〇年以上も前のことだ。ある高校文芸部の部室に一人の女子生徒が自作の詩をもち込んできて、こんなことを言った。初めてヨコ書きで詩を書いてみた のだけれど、おかしなものになってしまった。読み返してみると、一行一行はインパクトがあるのに、他の行が次々に消えていってしまい、自分の書いた詩の全 体が見えなくなってしまった。まるで重力で押しつぶされてしまったみたいだ、と。
そこにいた数人が、その詩をのぞきこみ、そういえばそんな気がする、とつぶやいた。そして、その生徒がいなくなると、あの子は理系志望だからあんなこと を言うのだと誰かが言った。そして、話はそれで終わってしまった。その女子生徒がどんな名で、どんな顔をしていたかも憶えていない。また、そのとき見た詩 の内容についても忘れてしまった。
その春、私は、その高校に入り、文芸部に入部した。新入部員は男三人で、一年上にかなり多くの女子部員がいて部室を出入りしていた。当の女子生徒はその 中の一人だったのだろう。その頃の私は文学好きで、詩やエッセイや小説らしきものを書き始めていた。もちろん、それらはすべてタテ書きだった。
しかし、その後、私の関心は徐々に文学から心理学へと移っていった。それと同時に、読むものも書くものも、だんだんタテ書きからヨコ書きへと移っていったのである。けれども、ヨコ書きの詩について語った女子高校生のことばだけは何度も心の中で反復されていた。
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