新刊 島村恭則『引揚者の戦後』
島村恭則 編
四六判400頁・定価3465円
発売日 13.8.15
ISBN 978-4-7885-1333-4
見本出来ました。8月16日配本です。
8月21日ごろ書店に並びます。
序章
近代日本は、台湾、朝鮮、満洲、関東州、サハリン(南樺太)、千島列島、南洋諸島といった地域に侵出し、現地の社会を支配した。これらの地域には日本の統 治・行政機関が置かれ、多数の日本人が日本列島から移住して移住者の社会を形成していた。しかしながら、一九四五年八月一五日の日本敗戦で、日本はこれら の地域での支配権を失い、現地に居住していた日本人は、日本列島に帰還することとなった。こうして帰還してきた人たちのことを「引揚者」という(1)。引 揚者の数は、厚生省(当時)によると、約660万で、これは約330万の陸海軍軍人・軍属と、ほぼ同数の民間人を合わせた数字である(2)(厚生省援護局 編 1978: 25)。
これまで、引揚者についての学術研究は、引揚げの制度的側面についての研究(若槻 1995)、引揚者による引揚げ体験の記憶、語りや引揚者文学についての研究(川村1990; 成田2003, 2006, 2010)、満洲国政府や満鉄の関係者などエリート層の引揚者が戦後の日本社会・経済の復興、発展に与えた影響についての研究(小林 2005)などが行なわれてきた。また近年は、社会学の領域でも「帝国崩壊と人の再移動」という観点から、「引揚げ」を「残留」や「送還」といった隣接す る現象とともに論じ、より理論的な展望を得ようとする試み(蘭編著 2011)もなされるようになっている。歴史学においては、引揚げ研究の現状や引揚げ関連史料の読みとき方などを論じたものとして、阿部安成と加藤聖文の 論考(阿部・加藤2004, 2005)がある。また、近代日本の帝国主義的膨張、植民地支配については、倉沢愛子ほか編『岩波講座 近代日本の植民地』全8巻(2005-06)が詳 しい。
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