書評 佐藤雅浩 著 『精神疾患言説の歴史社会学』 週刊読書人 2013年7月12日号
A5判上製520頁・定価5460円
発売日 13.3.28
ISBN 978-4-7885-1334-1
の書評が、週刊読書人 2013年7月12日号に掲載されました。
評者は江口重幸氏
……本書は日本近代以降の精神疾患をめぐる言説の盛衰史であり、その副題にあるように、特定の障害や疾患がなぜ一時期流行して人口に膾炙し、いずれかの後に消えていくのかを論じた力作である。
ここで取り上げられるのは、狐憑きや巫女の時代から近代に移行し、明治期に入って以降今日までの間に「心の病」として流行したもの――神経衰弱(外傷性神経症を含む)、ノイローゼ、ヒステリー、うつ病――である。こうした「精神疾患」はどのようにして「流行病」となったのか。
これらをめぐる言説の生成と変容を、著者の佐藤は、『朝日新聞』と『讀賣新聞』の記事や読者投稿欄、時には広告欄まで徹底して読み込むことで丹念に洗い出していく。
ある時は医学的学説の講義録的な紹介として、またある時は精神病院(医療)批判として、さまざまな変容を遂げながら今日にいたる経過を、統計的な数値を加えながら追跡している。
……
メディアと膚接して流行し衰退する「心の病」という切り口は単に過去に向けられたものではない。
今後のネット社会ではさらに複雑な流行現象として姿を現すことになる。
著者はその「歴史社会学」という言葉に凝縮し、圧倒的な事実を丹念に提示した後で、こうした要素の将来に向けた重要性を静かに指し示しているように思われる。
評者の先生、掲載紙ご担当者に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
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