新刊 稲上 毅『ヴェブレンとその時代』
稲上 毅 著
A5判上製704頁・定価6720円
発売日 13.6.28
ISBN 978-4-7885-1340-2
見本出来ました。6月25日配本です。
6月27日ごろ書店に並びます。
あとがき
いま長いヴェブレン踏査を終えて、いくつかのことが脳裏に浮かぶ。
ヴェブレンはその生涯を通じて、いかなる環境のなかで、いかに生き、いかに思索したか。この本で明らかにしたいと考えたのはこれらのことである。そうすれば、きっとヴェブレン像もいままでよりもっとはっきりしたものになるだろう。
このうち、「いかに生きたか」に力点をおけば、本書はおのずから評伝という性格をもつ。ヴェブレン伝といえば、ドーフマンの古典がある。本書はその書き 直しをめざしたわけではないが、結果としてそうした性格をもっているかもしれない。ジョルゲンセン夫妻、バートレー夫妻などによる近年の新たなヴェブレン 生活史研究の成果に大いに助けられた。
そういえば、終始不思議でならないことがあった。ドーフマンはアンドリューから「直接ソースタインに会って聞いてみたらどうですか」といわれていたにも かかわらず、ついにヴェブレンに手紙一通出すことがなかった。もちろん、会ってもいない。この点、E・バラン(Esther Baran)が書いた母親ベッキーについての小さな伝記によれば、「ドーフマンは私(ヴェブレン)の仕事について本を書くだけの学問的力量に欠けている」 といっていたらしい。まだ三〇歳にもならない大学院生の「ヴェブレン伝」であってみれば、ヴェブレンのこの評価はあながち的外れなものではないだろう。 ヴェブレンもまたアンドリューと同じく、ドーフマンの原稿には多くの間違いがあるとみていた。あるいは、ヴェブレンもアンドリューの手許に届いたドーフマ ンの原稿に目を通していたのかもしれない。ヴェブレンは、例の「もうひとつの遺書」にもあるように、「自分についての伝記を書くような企てには、誰のもの であれ、手を貸そうとはしなかった」。
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