新刊 日本記号学会『ゲーム化する世界』
日本記号学会 編
A5判並製248頁・定価2940円
発売日 13.5.15
ISBN 978-4-7885-1339-6
見本出来ました。5月15日配本です。
5月17日ごろ書店に並びます。
あとがき
ロラン・バルトの見解に依拠するならば、写真とは現実をあるがままに反映する透明な表象、あるいは自己の他者としての現前を実現する媒介物というこ とになるのだろう。これと比較するならば、デジタル・イメージによって織りなされたコンピュータゲームの場合、そこからは写真とは異質な組成のリアリティ やアイデンティティが派生しつつある、そう考えることができるのではないだろうか。
とくに「私」と、私をとりまく「現実」がイメージの水準で揺らぐ場という観点から、本書がゲームを題材に展開してきた議論を簡単にふりかえっておこう。第 一部の「マイコンゲーム創世記」では、草創期のゲーム作品をめぐる(プレイヤー=プログラマーによる)想像力とリアリティとの組合わせが現在のそれとは大 きく異なることが明らかにされた。三遊亭あほまろ氏が『スタートレック』をとりあげながら言及されているように、そこでは「完全に頭の中で組み立てて、頭 の中で映像化して想像するしかない」、あるいは「一緒にゲームしていても、隣の人間と自分とは考えてることが違う、考えてる世界が違うことがある」という 事態が発生しえたのである。その後、前川修氏が第二部のまとめで総括するように、一九八〇年代以降になると「インターフェースの向こう側が不可視にな り」、そこで、「ある意味で透明化したかに見える「スクリーン空間」の重層性や不透明性」が前景化されることになる。そして二〇一三年現在、(おもに第三 部で論及された題材であるが)オンラインゲームによって媒介される共同性の次元、あるいはコミュニティの次元は、この混濁した重層的空間において一定の拡 がりを獲得しつある。
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