書評 J.テイラー著 われらはチンパンジーにあらず
――ヒト遺伝子の探求
四六判上製450頁・定価4410円
発売日 13.2.20
978-4-7885-1326-6
の書評が毎日新聞2013年4月7日付書評欄に掲載されました。
評者は中村桂子氏
「ヒトを特徴づけるものとは何か」
・・・・・・著者は、行動研究についても、チンパンジーだけに注目することによるバイアスを指摘する。イヌは、人間の目の動きで餌の場所を知るなど社会的認知能力が高い。カラスは筒のなかから餌をとり出すのに適した棒を他の棒で引き寄せるなどの作業でチンパンジーを凌ぐこともある。もちろん、イヌやカラスのほうがヒトに近いと言っているのではない。ヒトを知るには、さまざまな生物のさまざまな現象を比較する必要があるということだ。興味深いのは「自己家畜化したヒト」という章で、ヒトとチンパンジーの間の遺伝的差異の多くがこの4,5万年で起きており、たとえば、認知に関わるドーパミン受容体の多形化など社会が強力な淘汰圧をかけているらしいという指摘だ。まだ仮説の段階だが、ヒトへの進化にとって重要な視点である。・・・・・・
評者の先生、掲載紙ご担当者さまに心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
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