新刊 日本発達心理学会、田島信元・南徹弘『発達心理学と隣接領域の理論・方法論』
日本発達心理学会 編、田島信元・南徹弘 責任編集
発達心理学と隣接領域の理論・方法論
A5判上製400頁・定価4200円
発売日 13.03.20
ISBN 978-4-7885-1330-3
見本出来ました。3月21日配本です。3月25日ごろ書店に並びます。
序章(一部抜粋)
本章では,発達心理学がどこを起源として,どのように発展し,現在どこに向かおうとしているのか,を展望してみる。歴史的変遷は現在の動向に内包され, かつ,将来の方向性を占う重要な資源となっている。その意味で,本章によりわれわれ発達心理学徒の現在の研究上の立ち位置を明確にして,今後の目標とすべ き方向性を見極めるための資料としたい。
1 発達心理学とは
発達心理学は,主として人間の精神的(認知的),行動的側面を対象として,人が誕生してその一生を終えるまでの期間(個体発生)に見られる発達的変化に ついての法則(発達のメカニズム)や特徴(発達の様相)を明らかにする心理学の一分野として定義される(田島,2005)。
この分野はアメリカのホール(Hall, S.)が19世紀末に児童心理学として建設し,それまで無理解であった児童の権利を擁護しようという運動とあいまって発展した。しかし,発達を規定する要 因について,「遺伝か環境か」が議論され,現在まで両者の相互作用を重視する方向へと研究が進んできており,生物学的要因の吟味だけでなく,加齢にともな うさまざまな経験要因との関係を重視する傾向が強くなって,生涯発達の観点から発達を広範囲な視点で見直していく枠組みに変化してきている。
発達心理学は発生(発達)的接近法という方法論を採用する。これは,たとえば人間(大人)の認知能力を明らかにするとき,認知能力そのものが成立してい く変化過程のなかにその本質があるという前提で,乳幼児,児童,青年期に至る変化過程,および子どもや大人を対象とした短期の認知の変容過程を吟味するの である。認知能力というとき,単に「どういうことができるか」ということを知能検査や認知検査で調べるのではなく,できない段階からできるようになってい く段階への変化過程を追うことで,できないのはなぜか,できるということはどういう条件がそろう必要があるのか,などの情報を得ることが必要と考えるから である。
さらに,方法論としては,人間と動物の発達過程を比較する比較行動学(エソロジー)的接近法や,異文化間の発達過程の相違や共通点を検討する比較文化的 接近法など多様な広がりをみせ,後述するように,認知・行動の発生学的説明を試みる総合的な発達科学として成長しつつある。・・・・・・
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