新刊 佐藤雅浩『精神疾患言説の歴史社会学』
A5判上製520頁・定価5460円
発売日 13.3.28
ISBN 978-4-7885-1334-1
見本出来ました。3月28日配本です。4月1日ごろ書店に並びます。
序章
本書の目的
本書は、近代日本(一九世紀後半から二〇世紀後半)の精神疾患に関するマスメディア報道を主たる分析対象として、精神疾患に関する大衆的な言説の構成と変容の過程、およびその動因を社会学的に考察するものである。 本書の目的は、(一)こうした言説の変容過程を通時的に記述し、近代日本における大衆的な精神疾患言説の実態、およびその社会史的背景を考察すること、 (二)精神疾患に関する言説が、専門家間での議論を超えて、広く一般社会に広まる理由を、比較歴史社会学の視点から分析すること、以上二点にある。これら の研究課題を包摂する概念として、本書では、「精神疾患言説の歴史社会学」という用語を用いる。
後述するように、これまでも、社会学とその近接領域においては、さまざまな観点から精神疾患や精神医学に関する歴史を描こうとする試みがなされてきた。 近代日本のマスメディアに現われた精神疾患言説を分析するという本書の課題も、精神疾患の歴史を分析するという意味においては、これらの歴史研究と共通し た試みであるといえる。
しかし、これら先行研究と本書の立場は、対象を分析する際の目的、および視角の点において、その立場を大きく異にしている。あらかじめここで本書の視角 を明記しておくとすれば、本書は、精神疾患に関する医学史的、制度史的、疾病史的な「史実」の発掘を目指すものではなく、精神疾患をめぐって多様な属性の 人々が構成してきた言説の歴史を追うことで、そこに見いだされる近代日本の集合的な心性を描こうとするものである。言葉を換えれば、本書は、精神疾患とい う現象そのものについての歴史記述ではなく、精神疾患について人々が思考し、討議し、また暗黙のうちに共有してきた観念についての歴史研究と位置づけられ る。
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