新刊 日本質的心理学会『質的心理学研究 第12号』
日本質的心理学会 編
B5判並製224頁・定価2940円
発売日 13.3.20
ISBN 978-4-7885-1331-0
見本出来ました。3月25日配本です。3月27日ごろ書店に並びます。
巻頭言
”最前線”の声を聴く
『質的心理学研究』第12号が無事発刊の運びとなった。私の編集委員長としての任期も本号で終わることになるが、常に心がけてきたのは、いわば“最前線” の質的研究を読者の皆様にお届けすることであった。しばしば誤解されるのだが、“最前線”は必ずしも“最先端”ではない。私の理解で、“最先端”というこ とばはある研究領域の知が真理に向かって進んでいくという伝統的な科学観を引きずった表現である。それに対して”前線”は点(“先端”)ではなく、あくま で“線”であり、それも一直線に前に進んでいるというよりも、横に広がって異質なものと対峙する線である。したがって“最前線”の質的研究とは、必ずしも海外の研究動向を反映した研究のことではないし、単に目新しい知見を積み上げただけの研究でもない。生きて 動いている現場と向き合い、その張り詰めた緊張感のなかで問題をつかんで、乗り換えようと努力するところに“最前線”は生まれる。そこで対峙する相手は、 そうした努力を妨げる既成の知や思考の枠であったり、場合によってはそれを自明視する自分自身であったりするかもしれない。“最前線”は、私たちひとりひ とりの日常の世界にも、私たち自身のなかにも生まれる一つの状態を示すことばなのである。質的研究という分野それ自体、「質的研究」という言葉もまだ知ら れていなかった頃から、量的研究と対峙する“前線”において自らを形づくってきたことを思い出してもよい。
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