新刊 ジェレミー・テイラー『われらはチンパンジーにあらず』
ジェレミー・テイラー 著
鈴木光太郎 訳
四六判上製450頁・定価4410円
発売日 13.2.20
ISBN 978-4-7885-1326-6
見本出来ました。2月20日配本です。2月22日ごろ書店に並びます。
まえがき
多くの点で、本書は、テレビの科学番組を制作するなかで積もりに積もった欲求不満から生まれた。霊長類の比較認知研究、そしてヒトとその近縁の霊長類との類似性と差異についての考えはずっと私のまわりにあったが、それらを科学ドキュメンタリーとしてうまく料理できずにいた。動物の認知の比較と進化というテーマを四半世紀以上にわたって見続けてきたおかげで、いまやっと橋の下を流れる厖大な水の流れを見つめることができるようになった。流行は来ては去る。ヒトと類人猿の心の類似性あるいは差異の見方については、とくにそれが言える。
私は、アメリカ式手話を使って種の壁を越えて意思を伝えたチンパンジー、ワシューを撮った『ホライズン』の最初の科学ドキュメンタリーのことを思い出す。そしてその後、ボノボのカンジが単語を示す記号のキーボードを叩いた。彼らは、スー・サヴェージ=ランボーの言うように、「人間の心の片鱗」をのぞかせる類人猿だった。
1988年、BBCの科学番組『アンテナ』を制作していた頃、アンドリュー・ホワイトゥンとディック・バーンの著書『マキャヴェリ的知性』の見本刷りがオフィスのドアマットの上にドサッと届いた時のことは、はっきり覚えている。その時を境に、霊長類学はとても刺激的なものになった。ほんとうに、霊長類は、とりわけチンパンジーのような大型類人猿は、かの有名なフィレンツェの政治家のように、狡猾で、卑劣で、ずる賢く、そして相手を操るのに長けているのだろうか? 彼らは、相手の心の奥深くまで入り込んで、相手がなにを思い、なにを望んでいるかを知り、その情報を利用して相手をだましたりできるのだろうか?
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