新刊 荻野 昌弘『戦後社会の変動と記憶』
荻野 昌弘 編
四六判上製320頁・定価3780円
発売日 13.2.25
ISBN 978-4-7885-1323-5
見本出来ました。2月27日配本です。3月1日ごろ書店に並びます。
叢書「戦争が生みだす社会」序文
ふたつの世界大戦に代表される二〇世紀の戦争は、大量破壊、大量殺戮をもたらした。しかも、今もなお、世界で大量破壊兵器を用いた紛争が絶えることはな く、また、新たに戦争が勃発する可能性も否定できない。戦争はまさに今日的な問題であり、この問題を抜きにして、二一世紀の未来を語ることはできないので ある。この意味で、戦争に関してさまざまな学問分野が、最新の方法を駆使して研究していくことの現代的意義は疑いえない。
戦争は単に破壊をもたらすだけではない。それは、その後の社会変動の契機ともなる。したがって、社会がいかに変容するかを捉えようとするとき、戦争がい かなる役割を果たしたのかを研究することは不可欠である。ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』が示したように、歴史学において、こうした観点から、「第二 次世界大戦後」を捉えようとする流れが、一九八〇年代に本格化する。ただそれは、戦争のようなできごとが、いかに社会の変化を基礎づけているかを包括的に 問うところまでには至っていない。本研究では、より包括的に、戦争というできごとと社会変動の関連性を分析するために、三つの概念を導入する。それは、空 間、移動、他者という三つの概念である。
ダワーの著作の冒頭には、地図上に、一九四二年における日本の版図が示されている。それは、日本軍がもっともその勢力を広げた時点のものであり、日本軍 は、アリューシャン列島から、現在のインドネシア、インドシナ半島、そして中国の一部に至るまで、広大な地域を支配している(実は、同様の地図は、高校の 日本史の教科書にも載っている。本書巻頭地図参照)。この支配領域の広がりはほんの一瞬のことであったが、支配下にあった地域を変化させる重要な契機と なったことは疑いない。
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