新刊 アリス・ミラー『魂の殺人』新装版
アリス・ミラー 著
山下公子 訳
魂の殺人新装版
四六判上製400頁・定価2940円
発売日 13.1.20
ISBN 978-4-7885-1320-4 見本出来ました。1月15日配本です。1月18日ごろ書店に並びます。
新装版 訳者あとがき
『魂の殺人』を新装版にしたい、というメールを新曜社の小田さんからいただいたとき、「ああ、やはり、そうなのだな」と思いました。「そう」というのには、いろいろな意味があります。メールを受け取った日の何日前かに、たまたま立ち寄った、団地の書店の棚で一冊の『魂の殺人』を見つけ、少し驚いたということがありました。そこは、昔からある「普通の」本屋さんで。専門書をたくさんおいてある大型書店というわけではないお店でしたし。
繰り返し報道される、いじめが原因の自殺。学校や教育委員会がいじめの実態解明に熱心ではない、という指摘などを耳にするたび、「『魂の殺人』のころとちっとも変わっていない」と気落ちするような思いをしていました。自分で訳しておきながら、とても奇妙な言いぐさですが、もしもこの社会で、ミラーの著作を本当に必要としなくなるのなら、それは願ってもないことだと、翻訳をしている時から今に至るまで、変わらずに思っています。ただ、たいへん残念なことですが、日本の社会は、『魂の殺人』が初めて翻訳出版されたときから現在まで、それほど変わっていないように感じるのです。
なぜそうなのか、何が変わらないのか、その分析をするのは私の任ではありません。私は、何よりも私自身のために、そして私と同じように苦しんでいるかもしれない、一人一人の方のために、この本を訳しました。この本を必要として下さっている、一人でも多くの方に届けばよいがと願うばかりです。今から振り返ると、おそらくミラーも、自分自身のために、そして自分と同じように苦しんでいる人のために、著作をし続けたのではなかったかと思います。ミラーは2010年に亡くなりました。翻訳者として多少の経験を重ねた目で見れば、表記の点など、今なら違う書き方をするだろうという箇所もあります。けれど、『魂の殺人』はこの形で、小さな声を上げているのがよいと思うのです。 (2012年11月)
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