新刊 久米博『テクスト世界の解釈学』
久米博 著
A5判上製360頁・定価4725円
発売日 12.12.20
ISBN 978-4-7885-1322-8
見本出来ました。12月25日配本です。12月28日ごろ書店に並びます。
序言
本書の意図するところはささやかである。「テクスト世界の解釈学」という表題のもとに、ポール・リクールの哲学の根幹をなすテクスト解釈学を簡明に解き明かすこと、そしてそれにいたるまでの理論構築を具さに跡づけることである。リクールの広い領域にわたる哲学的研究のなかで、私がテクスト解釈学に焦点をしぼったのは、そこに彼の開拓した独自の領域があると確信するからである。すなわちアリストテレスの『詩学』を土台に、テクスト世界の構築とその読解行為を解明すること。それを通して彼がめざすのは、テクストから行動への展開である。
リクールは五年間ドイツ軍の捕虜収容所で生活を送り、一九四五年に復員してから本格的に著作活動を開始した。二〇〇五年に九二歳の生涯を閉じるまでに、ファンシナ神父による詳細な書誌によると、著書三八冊、フランス語論文七六八編を発表した。それは一貫した哲学的探求の歩みであった。哲学者リクールを評するには、いわゆるmaitre penseur(独創的思想家)というよりも、maitre a penser(思索の師)とするのがふさわしい。それはphilosophiaの原義に遡り、「ソクラテス的探求」の哲学者という意味である。ソクラテスは「事実の中の探求」から、「言葉の中の探求」に転じ、「それは何か」を問い、人々との問答を通して、その本質を定義した。リクール哲学において重要なのは、彼がさまざまな分野の人たちと対話しつつ、「人間とは何か」を探求し続けたことである。最後の大著『記憶・歴史・忘却』の結びの言葉は「未完」であった。彼の探求に終わりはなかった。
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