新刊 C・ダニエル・バトソン『利他性の人間学』
C・ダニエル・バトソン 著 / 菊池章夫・二宮克美 共訳
利他性の人間学
A5判上製450頁・定価4830円
発売日 12.11.20
ISBN 978-4-7885-1312-9
見本出来ました。11月19日配本です。11月22日ごろ書店に並びます。
はじめに
人間の生活における利他性の役割は何だろうか。この疑問に答えるには、利他性─自分自身よりも他の誰かのために役立とうとする欲求─が、はたして人間に存 在するのかどうかをまず知らねばならない。利他性の存在については、何世紀にもわたって、しばしばホットな議論がされてきた。熱心に議論された理由の第1 は、もし利他性が存在するならば、それはたいへん重要な意味をもっているからである。その存在はわれわれに、自分のエネルギーをどう方向づけるべきかを教 えてくれるだけでなく、人間のすることのすべては、たとえそれが高貴で無私無欲のように見えるものであっても、実際には自分の利益に向けられているのでは ないかという、人間性についての根本的な疑問にも答えてくれる。
人間の条件について考察する人は、しばしば、われわれの行動すべての根底には自己利益があると結論する。博学でウイットにも富んでいたラ・ロシュフコー 公爵は、「まったく私欲のない愛といえども、結局のところ一種の取引であり、何とかして、自分自身への愛が勝利者となることがもくろまれている」(『箴言 集』82, 1691)といっている。彼以前にも以後にも、多くの哲学者と科学者がこれと同じ結論に達してきた。もし彼らが正しいとするならば、われわれは人間性につ いてのこの事実を認識することが大切である。そうすれば、利他性というとりとめもない夢によって、非生産的な感傷と社会的改革への無意味な努力に引き込ま れるのを避けることができる。
しかし、彼らが正しくないと考える理由がある。私は、人間には利他性が存在するということを示したい。こう主張することには、利他的な動機づけの理論を 概観し、この理論の中心的な見解を直接に検証した証拠を検討し、これに関係する問題にかかわる証拠を見直し、概念的レベル、実際的レベルの双方でこの理論 のもつ意味を考察することが含まれている。
・・・・・・
« 新刊 苧阪直行『道徳の神経哲学』 | トップページ | 新刊 相沢直樹『甦る「ゴンドラの唄」』 »
「新刊」カテゴリの記事
- 書評 井上雅雄 著『戦後日本映画史』@図書新聞 2023年1月14日号 付(2023.01.11)
- 新刊 いのちに寄り添う自宅介護マニュアル(2021.06.21)
- 新刊 山 祐嗣 著 『「生きにくさ」はどこからくるのか』(2019.06.26)
- 新刊 中田基昭 編著 『保育のまなざし』(2019.06.13)
- 新刊 飯長喜一郎・園田雅代 編著『私とパーソンセンタード・アプローチ』(2019.06.11)
コメント