新刊 杉本 章吾『岡崎京子論』
杉本 章吾 著
岡崎京子論
四六判上製384頁・定価3570円
発売日 12.10.24
ISBN 978-4-7885-1306-8
見本出来ました。10月23日配本です。10月26日ごろ書店に並びます。
あとがき
本書は、一九八〇年代から九〇年代にかけて執筆された岡崎京子のマンガを、当時の社会的機制や文化的言説、〈少女マンガ〉というジャンル、少女・女性なら びに作家の主体性の交差・節合・衝突する「場」として読み解き、そこに見出される少女・女性表象の特性と変遷を明らかにすることを目的としている。こうし た目的を完遂するため、本書では、マンガ研究の蓄積を土台としつつ、カルチュラル・スタディーズ、ジェンダー論、文学理論、都市論、メディア論など、関連 する文化・社会研究に接続される領域横断的な方法論を模索する必要があった。今となって振り返れば、こうした方法論上の模索は、右往左往を繰り返した自分 のこれまでの歩みと切り離せないのかもしれない。
岡崎京子先生のマンガと初めて出会ったのは、大学生の頃、インフルエンザで寝込んでいたときに、友人がヨーグルトと一緒に持ってきてくれた『リバーズ・ エッジ』がきっかけだった。ページをめくると目に入ってくる、いじめ、死体、ドラッグ、放火、自殺などの陰惨な出来事の数々に、「何もインフルエンザで心 細くなっているときにこんなヘビーなマンガを持ってきてくれなくても」と思いながらも、そのマンガから目を離すことができなかった。そこには、これまで読 んできたどのマンガとも違う「何か」があるように感じた。その「何か」の正体を知りたくて、友人に返却後も、岡崎先生の作品を自分で買いそろえていった。 ただし、昼に夜にマンガを読み漁ってはいたものの、卒業論文は遠藤周作というこてこての文学青年でもあった自分は、マンガをあくまで好きな趣味の範疇にと どめていた。
しかし、修士課程だけと思って入学した大学院では、これがアカデミックな世界との最後の関わりということもあり、好きなマンガについて論文を書いてみた いという思いが次第に募っていった。題材はもちろん、ずっと気になっていた岡崎先生のマンガだ。その当時、熱中して読んだ『シミュレーショニズム』や『日 本・現代・美術』の著者である椹木野衣氏が岡崎先生に関して評論を出版していたのも大きかった。結果、椹木氏の強い影響のもと、「引用」や「サンプリン グ」「ポストモダニズム」といった観点から岡崎先生のマンガに関して修士論文を書きあげるにいたった。
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