新刊 菅野 幸恵『あたりまえの親子関係に気づくエピソード65』
菅野 幸恵 著
あたりまえの親子関係に気づくエピソード65
四六判並製190頁・定価1995円
発売日 12.10.05
ISBN 978-4-7885-1303-7
見本出来ました。10月9日配本です。10月11日ごろ書店に並びます。
はじめに
私は短大で子どもの発達や保育について教えています。授業をしていると、学生たちのもっている子どもに対するイメージは、とても素朴でロマンティックなも のであると感じることがしばしばあります。「子どもは純粋無垢で、か弱い存在であり、だから大人はそれを慈しみ守らなければならない」というイメージで す。それはそのまま、親子関係(あるいは養育者)のイメージにもつながっています。だから虐待をする親に対してはとても手厳しく、子どもに対してひどい扱 いをする親の気持ちはとうてい理解できないし、したくもないと言います。
子どもたちが母親だけに見せる表情を垣間見たり、わが子の状態を的確に把握してテキパキと行動している母親の姿を見ると、親子の間には特別なつながりが あるように思えるのも当然です。ただそのようなつながりは、生物学的に母親になれば自然と身につくものではありません。日々子どもと過ごすなかで培われる ものです。そして子どもとの日常は、いつもいつも美しく語れるような、きれいごとばかりではありません。生まれたばかりの子どもは昼夜を問わず泣き、その たびに養育者は空腹を満たしてやったり、オムツを替えるなど環境を整えてやる必要があります。1歳代の後半になれば、子どもは自分のやりたいことを何がな んでも押し通そうとし、通らなければ泣き喚きます。養育者も一人の人間です。いつでもすぐに子どもの要求に応えられるわけではないし、子どもの要求のすべ てを受け入れられるものでもありません(なかには拒否しなければならないものもあります)。子どもに対してネガティブな感情を抱くことも、当然あるでしょ う。
そんな素朴な疑問を抱いたのは、修士論文に取り組もうとする大学院の学生のときでした。当時は子育てについての何の知識もない学生です。とにかく母親に 直接聞いてみようと思いたって、先輩を頼り、ある母親にインタビューをする機会を得ました。素朴な問いを立てたものの、それが母親たちの実態と符合するも のなのかどうか、半信半疑でした。おそるおそる、「子育てをしているとお子さんのことをかわいいと思うときと、イヤだと思うときと両方あると思うんですけ ど……」と問いかけると、その母親は笑顔で、「そりゃあ、イヤになるときのほうが多いくらいよ」と答えてくれました。
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